お別れの朝
「昨日は、お世話になりました!」
「あぁ、またいつでもいらっしゃい!」
翌日、朝食までいただいた俺たちは、セント町を出ることに。この時間帯だと店も開けていないため、他の客もいない。
見送りは、ダガさんとサーさん。それと……
「しかし珍しいなラニー。お前が見送りなんて」
「……たまたまだよ」
ダガさんが驚く理由。見送りのメンバーに、ラニーさんが含まれていることだった。
俺は初めてなので当然知らないが、ダガさんかそう言うってことは珍しいことなのだろう。
サーさんやエフィ、ヨルガも、少し驚いたような顔だ。
「な、なにさ」
「いやー、今日は雪でも降るのかねって思って」
「帰る」
「冗談だよ冗談」
普段見送りに来ないラニーさんが見送りに来るとは、どういった心境の変化だろうか。
そんなことを思っていると、視線を感じた。エフィとヨルガだ。
「ラニーさんもお見送りしたくなるほど、アーロさんとの昨日のお出かけが楽しかったんじゃないですか?」
「なっ……ま、まあ、否定はしないけど」
「けど、寝間着のままなのはやっぱりラニーって感じだよな」
「うるさいクソガキ」
どうやらエフィとヨルガが、ラニーさんが見送りに出てきた理由は俺にある、と思っているらしい。そう、なのだろうか。
ラニーさん自身、楽しかったことを否定してはいないし、そうなのだろうかな。
まあ、楽しかったことを否定したら、昨日踊り子リーズレッテに会ったあのときの気持ちをも否定してしまうことになる。
そんなことはしないか。
「……それに、エフィちゃんともだよ」
「え、私?」
「踊り子様の話ができて、楽しかった」
「! はい、私もです!」
同じ好きな人の話で、共通に笑い合えた……そのため、エフィとラニーさんの距離も、少しは縮んだらしい。
ヨルガとラニーさんは、相変わらずみたいだけど。
「……今度からは、キミも来るんだよね?」
「へ? まあ……多分?」
「……そっか」
ラニーさんにいきなり聞かれて、少し考える。そりゃ、今後のためにと連れてこられたわけだから、多分この先もちょくちょくこの町には来ることになると思う。
それに、仕事とは関係なく、来てもいいと思えている。
「それじゃまぁ、そのときはまた町を案内してあげようじゃないか」
「お、それはありがたい」
別れ際、互いに握手を交わす。気だるげな人ではあったが、なかなかおもしろい人だったな。また、俺の周りにはいなかったタイプの人間だ。
ラニーさん、ダガさん、サーさんと別れを告げ、俺たちはセント町を出る。なかなかに有意義な時間を、過ごせた。
「どうでしたかアーロさん、いい経験になりました?」
「あぁ、もちろん」
道中、こう聞いてくるエフィに俺は言葉を返すが……考えてみれば、仕事関係のことはほとんどエフィがやっていたな。まあ俺は見て覚えてくれればいいと言われてはいたが。
商売関係のエフィ、ボディガードのヨルガ……か。しかし、もしかして俺がヨルガくらいボディガードとして使えると思われれば、俺にもそういう役回りが……
……いや、それはヨルガがかわいそうだからやめておこう。となると……
「あれ、もしかしていずれ俺とヨルガでセント町行くことにならない?」
もしも俺が、エフィの役割を覚え、担えるとしたら。エフィはラーダ村に残って商売に専念。俺のボディガードとしてヨルガが同行することになるのか。
……なんかあんまり……
「え、なにそれ嫌なんだが?」
なによりも先に、ヨルガが難色を示した。俺だって嫌だよ。
まあ、エフィは俺の過去を知ってるし、いざとなれば俺だけで行くこともできるか。俺にボディガードは必要ないわけだし。
そんなことを考えつつ、ポニーを走らせ……途中休憩をはさみながらも、しばらくすると。ラーダ村が、見えてきた。
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