踊り子様と勇者様
リーズレッテとの再会を経て、彼女と別れた俺とラニーさんは、宿へと帰宅することに。
道中、話題になるのはやはり先ほどの踊り子様のこと……
「いやー、あんな近くで踊り子様を見ることが出来るなんて! 今日外に出てよかった!」
「……ラニーさんそんなキャラでしたっけ?」
「好きな人の前では、人間なんて多様な面を持ってる生き物だよ」
そんなものだろうか……そんなものかもしれない。
リーズレッテを出会って……というか見てから、ラニーさんのテンションがおかしい。気だる気な感じだったのに、いったいどこにいってしまったのか。
まあ、それだけ好きだ、ということでもあるんだろうが。
「それにそれに、アーロが踊り子様と知り合いだっただなんて、驚きだよ。もちろん、キミの正体にもだけどさ」
「あはは……俺も、彼女とここで会うことになるとは、思わなかったさ」
リーズレッテと出会い、結果的にラニーさんにも俺の正体がバレてしまったが……多分、問題はないだろう。
ラニーさんは、人の秘密をペラペラしゃべるような人じゃないし。多分。
「踊り子様と勇者様、一日にこんな大物と出会えるなんて。今日は興奮して眠れないかも」
「光栄ですよ」
……大丈夫だよな?
「けど、そんな大切な事情をずっと秘密にしておくって、なにげにつらくない?」
「全部抱え込んでたら、どうだったかわからないけど……一応、エフィと村長のヤタラさんには、事情を知ってもらってるよ」
あの二人ならば、俺の秘密もちゃんと秘密にしておいてくれる。現に、今日まで誰にも漏らしていないし。
二人も、事情を知った上で、俺を置いてくれているしな。
「ふーん。確かにエフィちゃん、口軽そうで言わないことは絶対に言わないからね」
「……それ、褒めてます?」
「もちよもち」
褒めているのか……まあ、それならいいんだが。
ラニーさんとエフィも、親しいわけではないがそれなりに交流はあるらしい。年頃は同じくらいだろうし、隣り同士ならもっと交流もあるかと思ったが。
「あの子、ちょっと眩し過ぎて直視できない」
「……はぁ」
ラニーさんが、どうにも苦手としているらしい。
言わんとすることは、わからないでもない。あの笑顔は、全部包み込んでくれそうだもんな。
あの笑顔は、もっと見たいと思ってしまうけどな俺は。
「エフィも、リーズレッテのことは好きなのかな?」
「むしろ嫌いな人がいるのかな?」
「……確かにな」
リーズレッテの踊り、あれを嫌いと言える人間はいないだろう。
なんせ、大勢のチンピラが争っている現場でさえ、彼女の踊りの前にはただただ見入るばかりだった。さっきまで殴り合いをしていた連中が、肩を組んで泣いていたのだ。
あれは、ちょっとしたホラーだった。
「なら、エフィも喜んでくれるといいんだけどな」
「おやおや、エフィちゃんの笑顔が見たいと」
「……変な勘繰りは止めてください」
この人、あんなだらしない感じなのに、人のこととなるとどうしてこうもテンションが上がるんだろうか。
……いるよな、そういう人間は。この人典型的だが。
「だって、ひとつ屋根の下で住んでるんでしょう? だったらそういう関係なのかなって……」
「そんなこと言った覚えないけど!?」
「あれま、そうだっけ」
この人は人の話をどこからどこまでどういった風に聞いていたんだ。隣の家にしか住んでねえよ。
なぜか残念そうなラニーさん。悪いが、あなたを喜ばせるためだけにエフィとひとつ屋根の下には住めないんだ。
「それに、エフィは……」
「あー、あの男の子が気があるっぽいよねぇ。なんて言ったっけ……ヨッチャンくん?」
「ヨルガです。ヨッちゃんはあだ名です」
この人だいぶ適当に人の名前覚えてるな。あだ名と名前の違いくらいわかろうぜ。
ていうか、エフィとすらあまり絡んでいないラニーさんにすら気持ち見抜かれているのか……わかりやすいなんてもんじゃないぞ、ヨルガ。
その上、当のエフィ本人にはなんとも思われてないってのがまた……虚しい。
「あ、ついたよー」
そんな会話を繰り返しているうちに、宿にまでたどり着いた。
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