それはとても貴重なんです
そこにあったのは、コアウルフのフン。なぜこんなものが、木箱に入れられているのか。
それも、他の商品と一緒に。
「そんなビビんなって。ほれ触ってみ」
「え、遠慮します」
そう言って、ダガさんはフンを手に持つ。あれをフンだと言われて、すぐに気持ちを切り替えて触る気にはさすがになれない。
……それにしても、フンにしては見た目だけではない。手で握って、持ち上げても形が崩れないなんて。
「そ、それで、これがお店に必要って?」
「あ、はい。モンスターのフンは、畑を耕す肥料としてちょうどいいんです。それも、コアウルフのフンはそれはもう、ベストで!」
「ふ、ふーん……」
果たして、モンスターのフンの話題でこれだけ嬉しそうに、語れる女の子はいるだろうか。
まあ。それはそれとして、だ。モンスターのフンが肥料になるか……初めて知った。
思えば、故郷でも野菜を育てたりはしていたが、子供ながらになにを使っているのか気にしたことはなかった。気になる年の頃には、もう故郷を出て勇者として訓練三昧だ。
二周目は、やはり今後のことで頭がいっぱいだったし。
「なんだよお前、その年でそんなことも知らないのか?」
「ぬぐ……」
得意げなヨルガの顔が、妙に腹立つ……!
だが、言い訳出来ない。実は勇者として訓練づけだったので一般常識に疎いんだよー……とは言えないしな。
「もうヨッちゃん。あんまりアーロさんをいじめないの」
「へいへい」
い、いじめられているのか……? この俺が……?
なんだろう、軽くショック。
「ま、そういうわけさ。モンスターのフンは、肥料にいい。加えて、エフィちゃんのお店の土は、コアウルフのフンと相性がいいみたいなんだよ」
「コアウルフは凶暴で、いろんなもんを食べてる。あまり想像したくはねえが、それこそ他のモンスターや同族なんかもな」
「だからこそ、お腹の中でなんか、いろんなものがいい感じに混ざり合って、高質なフンが出るのでは、と一部では言われているんです」
「そうなんだ……なんか、すごいな」
なんだよ、高質なフンって。
でも……まったく、知らなかったな。俺は今まで、モンスターと会っても殺すまではしなくても、ただ追い払うだけだった。
その生態とか、気にしたことはなかった。
「その、コアウルフのフンは、珍しいのか?」
「そりゃもう。基本的にフンが残っていること自体貴重なんだ。雨に流れたり、他のモンスターに食べられたり。おまけに、コアウルフはあまり道端でフンは出さないらしい」
「へぇ?」
「それが、こんな形で残っているのは、もう珍しいなんてもんじゃないさ」
俺は、ここにコアウルフのフンについての熱弁を受けるために来たのだろうか。いや、必要な知識だとわかってはいるんだが。
まあなんだ。とにかく、そんな貴重なものをくれるというのだ。ありがたい話じゃないか。
「でも、いいんですか? そんな貴重なものを、いくら親しいからって他の村の人間に……」
「いいのさいいのさ。エフィちゃんももちろんだけど、ヤタラさんやエフィちゃんの両親には、ずいぶんよくしてもらったんだから」
「あぁ。あの人達がいなけりゃ、今頃は店をたたんで路頭に迷ってたかもなぁ」
ダガさんとサーさんが言うに、ヤタラさんやエフィの両親には、ずいぶんと音があるようだ。その、恩返しという意味も込められているのだろう。
もちろん、もらってばかりではなく、こうしてエフィからもものを渡したりしているわけだが。お互いがお互いに、いい関係を築けている。
「兄ちゃんも、しっかりと二人を支えてってくれよ?」
「はい、もちろんです」
村の中だけではなく、村の外の人からも慕われている……本当に俺は、いい人に出会った。一番最初に会ったのが、この子で良かったな。
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