モンスターの群れ……そして原点の日
「な、なんだこれは!?」
……俺が生まれてから八年後。ディアの八歳の誕生日……事件は、なんの前触れもなく起きた。
異常を鳴らす鐘の音は村全体へと響き渡り、怒号にも似た声が危険を知らせる。それにより、村の大人は次々家の外へ。
俺たちは、家の中に避難するように言われたが……
「な、なにか飛んでるよ!?」
窓の外に見えるものに、みんな釘付けになった。
村を囲う塀は村を守るものだが、逆に言えば外を見渡せるのは高台からだけだ。だから、一見ではモンスターが襲撃してきたことなどわかるはずもないが……空を見上げれば、そこに、答えがあった。
翼の生えた、凶悪な面をしたモンスター。何匹も、自在に空を飛び回っている。
……まずいな、空を飛べるモンスターには塀の強化なんて無意味。忘れていたわけじゃないけど、仮に忠告していても回避する手立てなんてなかっただろう。
「グォオオオオ!」
「ブァァァアァ!」
「ガルルルルァアア!」
モンスターの群れが、村を襲ってきた……その事実は、塀の向こう側から聞こえる唸り声が教えてくれる。
普段、カルボ村周辺に現れるモンスターには温厚なものが多い。また、凶暴なものがいることもあるが、村の大人に対処できるものばかりだ。
村の大人たちは、普段から鍛えているからな。それに、村ではモンスターが寄り付きにくいという特殊な植物を育てている。これは俺が村の防衛を強化するよう進言する前からあったものだ。
つまり、前世でも俺が生まれる前から、カルボ村の人たちはモンスターとうまく付き合ってきたのだ。
「……っ」
にも関わらず、モンスターが……それも、群れで襲ってくるのは、異常だった。
モンスターは、基本的には同種族で群れを作る。様々な種類のモンスターが、まるで一つの目的のために協力する、という事態は、どう考えてもおかしい。
「子供たちやお年寄りを、家の中へ!」
大人たちの判断は的確だ。戦えない者を、ひとまず安全な家の中へ。直後、門からモンスターが入ってくる。空からもだ。
モンスター襲撃を知っていた俺は、歯がゆい気持ちを抱きながらも、他の子供と一緒に家の中へと押しやられた。隣には、ディアもいる。
いくら鍛えていたといっても、やはりあんなモンスターの大群に太刀打ちできるはずもない。「怖いよぉ」と震える彼、そして年下の子供たちを、なんとか落ち着かせる。
前世では、俺も戦おうとした。だが、無茶な子供の戯言だ。受け入れられるはずもなく……お前は、ここでみんなを守れ、と言われた。今思えば、うまく言いくるめられたなと思う。
「くっ……」
そして、前世と違い子供たちに身を守る術を教えた今でも、俺はこうして子供たちの側を離れられないでいる。
いくら身を守る術を教えたとはいえ、やはりまだ子供。前世の記憶がある俺とは違うのだ。中には遊び半分だった子もいただろう、そんな彼らを置いて俺だけ戦おうとするのも、無理な話だった。
それは、自分がよくわかっている。がむしゃらに鍛えてはきたが、結局……ただここで、固まっていることしかできない。
「もし……」
もしも今の俺に、『スキル』があれば。あんなモンスターたちくらい、倒せてしまうのに。
だが、モンスターの大群の中にはコアウルフもいる。ハイウルフとは違う……ただでさえモンスターが多い中で、『スキル』も発現していない俺に、太刀打ちできる相手ではない。
今まで鍛えてきたことが、無駄とは思わない。全ては、『スキル』が発現したときのためなのだから。
それでも……この場でなにもできないのは、歯がゆい。
「うぉおおお!」
「ここは通さんぞ!」
家の中にいるため、外の様子はよくわからない。ただ、聞こえる声が、大人たちが必死に戦っていることは教えてくれた。地上のモンスターには剣を、空のモンスターには弓矢を持って応戦する。
そうだ……思えば、始まりはこのときだったのかもしれない。俺が、魔王討伐の勇者として歩むのを決めたのには……この日のことが、原点になっている。
放っておけば、魔族は罪もない人々を襲うという。……村を襲う、国を襲う。そんな理不尽は嫌だから……そんな理不尽を止めるために、俺はあの日、迎えに来た兵士に、勇者として着いていくと言ったんだ。
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