ボディガードの人
「今日は、隣町へ行きましょう」
ラーダ村に来てから数日が経ち、店の手伝いにも慣れてきた頃、エフィが突然に言った。
ニコニコと笑顔を浮かべたままだ。ここ数日でわかったが、エフィの笑顔はなんというか、人を和やかにする力がある。
「隣町?」
「はい。たまに、仕入れなどに隣町へ行くんです。そろそろその周期なので、アーロさんにも行ってもらおうかと」
「なるほど」
エフィは、たまに隣町へ仕入れなどに行っているという。
そういうのはチマにでも任せればいいのではと思ったが……考えてみれば、あいつは商人だからこそ、村にいないことも多い。それに、花や野菜の知識はエフィほどではないだろう。
「いつも、一人で行ってるのか? それともヤタラさんと? どっちにしろ危ないだろう」
いくら、移動用にモンスターに乗るとはいえ、一人旅もしくは二人旅なんて危ない。モンスターだけでなく、野盗の危険性だってあるし。
そんな俺の懸念に、エフィは首を振る。
「いえ。店から行くのは私一人ですが、ちゃんとボディガードがいますよ」
「ボディガード?」
「はい、そろそろ……あ、来た」
エフィが、店の外に顔を向ける。俺が振り向くのと同時に、扉が開く。
店内に、入ってきたのは……
「ヨルガ?」
「よぉ」
一人の青年、ヨルガであった。
「ん? ……おい、まさかそいつも連れて行くのか?」
「そうだよ? いいでしょ?」
「ちっ。足手まといなだけだっての」
俺の『スキル』……というか正体を知らないだけあって、その反応はまあ正しいと言える。
というか、わかりやすく舌打ちをするなよ。悪かったね、エフィと二人だけの時間を邪魔して。
「……ってことは、ヨルガがボディガードなのか?」
「うん。ヨッちゃん、強いんだ」
「ふんっ」
ヨルガ一人が、ボディガードか……決して弱いわけではないだろうが、秀でて強いわけでもない。
まあ、比較対象がゲルドやドーマスさんな時点で、大抵の人間は俺にとっては弱い人間となるわけだが。
「ま、エフィが言うなら仕方ねぇ。おいアーロ、俺が守ってやるとはいえ、あんまふらふらするんじゃねぇぞ」
「はーい」
守ってやる、か……まさかそんな言葉を、言われることになるとは思わなかったな。
俺、エフィ、そしてヨルガの三人は、ポニーに乗り村を出る。店番はヤタラさんに任せてある。
この辺りは、モンスターがいるとはいえおとなしめなものばかりだ。こちらから手を出さないか、よほど気が立っていなければ……
「グルルル……!」
「考えたそばからこれかよ」
村を出てしばらく、前方に三体のウルフ。俺たちを睨みつけ、道を塞いでいる。
いきなりこんなことになるとは、な。
「よしアーロ、ここで俺の力を見せておいてやる」
そう言って、ヨルガはポニーから降りる。その身には、武器はなにも持っていない。丸腰だ。
まさか、素手で戦うつもりなのか? そういう人間はいるが、いくらなんでもモンスター三体に一村人が素手で挑むなど……
「へへ、こいつだな」
ヨルガは、その辺に落ちていた石を拾う。おいおい、まさか投石、ってわけじゃないだろうな。
直後、不思議なことが起こった。ただの、手のひらサイズの石……それが、形を変えていくのだ。
長く、棒状のものへと変化して……
「木刀……いや、石刀?」
「見たか、こいつが俺の『スキル』! その名も【形状変化】だ!」
ただの石は、刀の形をした細長い棒へと姿を変えた。それは、材質が違えば木刀とも呼べるものだ。
そうか、ヨルガの自信満々な理由は……『スキル』に、あったのか。【形状変化】という名の『スキル』。
石を、刀の形に変化させる。材質は、おそらく石のままだ。ということは……つまりその名のとおり、材質はそのままに、形だけを変えることのできる『スキル』ってことか?
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