この先の暮らし
「というわけで! 私はケエラ、よろしくねアーロくん!」
「ど、どうも」
あのあと、混乱は一段落し、エフィがケエラさんの家から服を持ってきて、着替え……悪びれもなく、笑みを浮かべている一人の女性の姿があった。
ケエラさんは改めて自己紹介をしたあとに、俺の手を取った。
「いやー、ごめんねなんか勘違いさせちゃったみたいでさ! あはははは!」
「い、いえ、俺の方こそ、ご迷惑を……」
確かに寝起きには刺激の強すぎる出来事であったとはいえ、元はと言えば俺が昨晩、記憶もなくすほどに酔っ払ってしまったせいだ。
まったく、酔わない自信があったのにな。
「とにかく、なにもなくてよかったです」
「そんな慌てなくても、まったくエフィちゃんってばかわいいんだから!」
「別に、慌ててるわけじゃ……」
「ほほほ、賑やかじゃのぅ」
現在俺は、エフィとヤタラさんの家で朝食をごちそうになっている。なぜかケエラさんも一緒だ。
昨晩食べすぎた、とはいえ、一晩も寝れば腹は減るもので。目の前の野菜を中心とした、料理を食べていく。
「うーん、やっぱり村長のとこの野菜はおいしいねぇ!」
「やれやれ、お世辞を言ったからってなにも出んぞ。この野菜も食べなさい」
「お世辞じゃないけど、チョロいよね村長って。いただきまーす」
なんとも、賑やかな食卓だ。さすがに昨夜のものと比べると規模が違うが、あれは食事というよりも祭りに近かったからな。
ここ最近、落ち着いて食事をしたことは、あまりなかったかもな。ファルマー王国を出てから、このラーダ村に来るまでの間は、人里でお世話になる以外は基本野宿。神経を張っていた。
人里での食事ったって、基本は客としてだ。人とのふれあいはあまりない。
それ以前だって、魔王を討つ旅の中だ。あまり、落ち着いて食事とかはできなかった。
こうして、のんびりと落ち着いて食べられるのは、いつぶりだろうか。
「確かに、おいしいです」
「そのお野菜は、ウチで育てているものなんですよ」
「へぇ」
ケエラさんのところは、確かお肉って言ってたか。村人がそれぞれ、育てたものを分け与える。素晴らしい助け合いの精神だ。
朝食をごちそうになり、腹も膨れたところで……
「で、さ。アーロくんは、これからどうするの? よかったらウチで働かない?」
と、ケエラさんからありがたい申し出をいただいた。
「いいんですか?」
「もち。男手が増えるに越したことは……あー、でもそれなら、エフィと村長の手伝いしてもらったほうがいいのかな」
ケエラさんは、自分の中で結論を変える。忙しい人だな。
こっちのほうが、男手が足りないってことなのか。
「まあ、ウチはわしとエフィだけで切り盛りしとるからの。そりゃ、男手がありゃ大助かりじゃが……」
「俺で良ければ、手伝いますよ」
この家は、エフィとヤタラさんの二人暮らし……エフィの両親は、今のところ姿を見ていない。
祖父と孫が一緒に暮らしているのに、両親だけ別に暮らしてるってことは考えにくい。同じ理由で、村から出たってことも。
だとしたら、エフィの両親は……
「えっと、いいんですか?」
「あぁ。二人には、お世話になってるし」
とはいえ、野暮なことは聞かない。いずれ、タイミングがあれば触れてみる、といった程度でいいだろう。
村長には俺を受け入れてもらえた恩があるし、エフィにだって助けられている。二人に恩を返せるならば、喜んで力になろうではないか。
「ぜひ、俺に手伝わせてください」
「なら、よろしく頼むわい。近頃腰が悪くてな、誰か雇おうかと思っとったところじゃ」
「よかったじゃんかエフィちゃん、貴重な戦力だ。こき使ってやんなよ」
「それ、ケエラさんが言うことじゃないですよ」
こうして俺は、エフィと村長の手伝いとして、働くことになった。
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