お祝いの席
さて、ラーダ村に住まわせてもらえることになり。その夜は、村をあげての宴会となった。
新しい住人を祝して、ということらしい。
「いや、別にそこまでしてもらわなくても……」
「気にしないでください。みんな、なんだかんだ理由をつけて、飲み食いしたいだけなんですから」
俺が遠慮していると、エフィは笑いながら俺に気にすることはないと、告げる。
理由をつけて、か……なんだか、故郷のことを思い出すな。あそこも、『スキル』を授かった日には、村人全員で祝ったりしてたっけ。
今度は村人の全員が、集まった。小さな村であるが、人の数は多い。それでも、若者は全体的には少なかった。
「では、新たな住人を迎えたことを祝して、乾杯……といく前に、音頭を取ってもらおうかの。アーロから一言」
「え、お、俺? あー、えっと……こ、これから、よろしくお願いいたします! 乾杯!」
「乾杯!」
俺の乾杯の挨拶を合図に、村をあげての大騒ぎが始まる。まるで、お祭りだ。
料理、飲み物、デザート……てんこ盛りに机に盛られ、各々が騒ぎ好きに食べ物を食べる。
周囲に人里がないからこそこんなに騒げる……ってのは、考えすぎかもしれないが。村人以外には、迷惑は掛からない。
「ほらほらアーロ、お前も飲め飲め!」
「ちょっとヨッちゃん、あんまり勧め過ぎたらダメだよ!」
「なに言ってやがる、そもそもこいつが主役だろうが! もっと飲めよほら!」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」
「お、いい飲みっぷりじゃねえか! ほれもう一杯!」
「ちょっとヨッちゃん、もしかして酔ってる? ……あぁ、おじちゃんもいつの間にかアーロさんのグラスに注いでるし!」
賑やかな雰囲気が、あっという間に周囲を包み込んでいく。酒を浴びるように飲み、酔っぱらっていく人も少なくない。
俺は、ファルマー王国に居た頃に宴の席に呼ばれたことは何度かあった。だから、こういったことには慣れているし、自分がどれほどで酔っぱらうかもある程度わかっている。
ヨルガ始め、たくさんの村人に絡まれるが、これくらいゲルドや意外と酒癖の悪かったドーマスさんに比べれば……
「んっ……ぷはっ」
「おlこ、いい飲みっぷりじゃねえか兄ちゃん!」
「あ、アーロさん、大丈夫なんですか?」
「まあ、これくらいならね」
「まあ、お酒強い男に人って素敵! ささ、どうぞ!」
お年寄りが多く、彼らは彼らで飲んでいる中で、若者は特に物珍しいよそ者のところに寄ってくる。
中には、なかなかに色っぽいお姉さんなんかもいたりして。
「うーん、この肉美味しいですね」
「あ、わかる? それ、ウチで育ててる家畜から取ったものなんだよ」
「け、ケエラさんくっつきすぎです!」
「かたいこと言いいなさんなエフィちゃん。そんなんだからまだ男も知らないおこちゃまなのよ」
「なっ、か、関係ないでしょうが!」
村人同士も、実に仲が良いようだ。こうやって、笑い合って、冗談を言い合って、肩を組み合って。
俺の故郷とは違い、このラーダ村ではよそから来た人も多いのだという。だというのに、こうもみんな仲が良いのは、やっぱ人の優しさがあるからだろうな。
やっぱ、いいなこういうの。前世じゃ、大きく関わり合ったのなんて故郷の人間を除けば、勇者パーティーのメンバーだけだったもんな。
……もしも、俺が命を狙われることにならなければ。みんなで、旅の終わりを祝して乾杯でもしていたんだろうな。
「おう、どうしたよ兄弟。こいつもうまいぞ」
「は、はい」
もはや、誰が誰に話しかけているかもわかっていないほど、場はとんでもなく盛り上がっている。
そして、俺も……久しぶりに触れた人肌のせいか、少し羽目を外し過ぎていたのかもしれない。
「ごくっ……ぷはぁ!」
「いい飲みっぷりだなあんちゃん、どうよ、飲み比べの勝負しないかい」
「いいですよ」
「アーロさぁん!」
どやどやどんちゃんわはは……喧騒は、夜通し続いた。
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