本当の第二の人生
この国に留まったままでは、俺は命を狙われ続ける。かといって、故郷にも戻れない。もしも俺が生きてそこに戻れば、村の人たちに迷惑が掛かる。
だから……
「国を、出る……」
後ろ髪を引かれる気持ちはある。だが俺は、決断した。決断の後押しをしてくれた女の子のためにも、俺は……!
国を出るには、出入り口の大門をくぐらないといけない。だが、それでは当然門番に見つかってしまう。人の目にも止まる。
なので……
「よっ、ほっ」
誰も見ていないのを確認し、俺は壁を登る。あまり足の支えはないが、それでもこの身体能力なら、いける!
まさか、壁を登って外に出る者がいるとは思うまい。そもそも、こんなこと出来る奴なんて限られる。
誰にも見つからず、壁を登り……そして、外に降りる。
「ふぅ。……じゃあな」
地面に着地し、最後にファルマー王国の姿を見治める。
三年間、お世話になった国だ。前世をふくめればその倍だ。まさか、こんな形で別れを告げることになるとは、思わなかった。
「……っ」
俺は、走る。行くあてなんてない……ただ、走る。
一人とはいえ、旅の経験から野宿は慣れたものだった。途中襲ってくるモンスターもいたが、平和的にお帰り願った。
度々、村や国に寄った。さすがにずっと野宿というわけにもいかず、食料調達や寝床確保だ。金は、モンスターを討伐するなどして稼いだ。
「……さすがに、手配書とかはないか」
気にしていたことがある。ゲルドか王子が、俺の手配書を隣国などに手配していないかということだ。だが、その心配は今のところなかった。
別にこの世界の人間全員が、俺を勇者だと知っているわけではない。それでも、少なくともファルマー王国では、俺の手配書など出そうものなら混乱が起こるだろう。
俺のことは、秘密裏に始末したいだろうからな。
「…………もう、かなり遠くまで来たな」
もう、国を出てからどれほどの日数が経ったか、数えるのも面倒になった。人の足とはいえ、【勇者】の『スキル』のおかげでかなり遠くにまで来れた。
身体能力強化に、体力だって人並み以上にある。そのおかげで、遠くまで。だが、もしかしたら世界の果てまで来てしまったのではないかと思うほどに、人里を見かけなくなった。
「かなり辺境の地だな……そろそろ、腰を落ち着けてもいいかもな」
ここまで来れば、追ってくる者もいないはずだ。そう思って、それから数日は人里の発見に注意を注いだ。
そして……ついに、見つけた。
「……あった」
丘の下に見える、村……小さな村だ。だが、それだけに都合も良かった。
あまり大きな所だと、俺の情報が流れてくる可能性も上がるからな。
「あそこなら……」
まだ、住めると決まったわけではない。よそ者だからと断られるかもしれない……だが、そんなことは百も承知だ。
ここに来るまでに、いろんなことがあった。そのためなら、なんだってやってやるさ!
「そうさ。俺は、この、辺境の地で……」
ここから、俺の新しい人生を……本当の、第二の人生を、始めるんだ。
俺は勇者としての生活を捨て、ここで暮らしていくことを決めた。
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