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コアウルフ出現、異変の前兆



「グルルルァアア!」


「うわぁああああん!」



 襲い来るモンスター、泣き叫ぶディア。俺は木に叩きつけられてしまったせいで動けない。いくら受け身を取ったといっても、子供の体では限界がある。


 前世ではもっとひどい状態だった。頭から血を流して、倒れてしまったからだ。気絶こそしなかったが、あのときは、本気で死を覚悟したはずだ。……だが、今回は違う。

 

 なぜなら、もうだめかと諦めた時……



「うぉおおお!」


「グゥ!?」



 ……そこへ、村の大人が助けに入ってくれるからだ。


 ここで、俺は死なない。もちろん完璧にそうとは言えないが……モンスターに出会うことも、モンスターの種類も、前世の展開をなぞっている。俺以外のものも、前世通りの動きを見せている。


 それがわかっていたからこそ、大人が助けに来てくれるまで……時間稼ぎさえできればよかったのだ。できていたかは疑問が残るが。


 その後、大人数人がかりでやっと、結果的にモンスターは討伐される。……モンスターが討伐されることに変わりはない、なので、俺がモンスターを倒しても問題ないのではないかと思ったが……まあ、無理だったわけだ。



「バカモン! 森に入っちゃいかんと言っていただろう!」


「ふぇえええん……」



 モンスターは無事討伐され、俺たちは助かるが……問題は、その後だ。


 そう、とんでもなく怒られるのだ。それはもう鬼のように怒っていたわけで。今思えば当然のことだが、当時は恐怖と理不尽とで感情がよくわからなくなっていた。


 ディアなんか顔がぐちゃぐちゃになって、俺も半べそだったものだ。それ以来、勝手に森に入るなどはしなくなったため、子供にはお叱りが一番の薬だったというわけだ。



「しかし、バンさん、コアウルフってのは……」


「あぁ、妙な話だ」



 ……だが、今回の件は同時に、村に異変が起こりつつあることを教えてくれた。俺たちが遭遇したのは、この辺りには出現しないはずの凶暴なモンスターだったからだ。


 この辺に現れるモンスターは、大抵がハイウルフ……灰色の毛並みを持つ、狼だ。しかしハイウルフは基本的にはおとなしく、こちらから手を出さない限りは襲ってこない。


 それが、今回現れたのは……コアウルフという種類の狼。ハイウルフよりも小さいが俊敏で、その上力も強い。なにより凶暴だ。


 大人たちも、それを知っているからこそコアウルフの存在に首を傾げている。



「念の為、大勢で来て正解だった」


「ロアが森に入ってくのを見たって聞いたときは、冷や汗が流れましたよ」



 ハイウルフならば腕に覚えある大人なら三人いれば倒せる。だが、コアウルフは大人十人でやっとというほど。それを知った俺は、当時の俺の愚かさを呪ったものだ。


 そんな凶悪なモンスターが現れた理由……それは、一年後にわかることになる。俺が八歳となる時間軸……モンスターの群れに、この村が襲われるのだ。


 とはいえ、この段階でそのようなこと、俺以外にわかるはずもない。だから……



「こあうるふって、この辺には出ないモンスターなんでしょ? なんだか、変な予兆なんじゃない?」


「お前よくそんな言葉知ってるな。……予兆、か」



 俺はそれとなく、言葉を送る。


 この周辺に、コアウルフが現れた理由……いや、理由というより前兆か。普段現れるはずのないモンスターが現れたことで、なにかがおかしくなっていたのだ。


 結果として、コアウルフの出現はモンスターの群れの襲撃という悲劇を生む。それにより村はめちゃくちゃになり、負傷者重傷者が多数出るのだ。


 死人は、いない。だが死人が出ていないだけで、日常生活を送ることすら不自由になった者も、いた。



「ネイス、念の為、近くを見て回ってみよう」


「はい」



 モンスター襲撃を直接伝えることは、難しい。ならば、それとなく警戒を促す……これくらいなら、俺でも可能なはずだ。


 モンスターの危険性は、村の大人たちもよくわかっている。それに、俺がただ警戒するように言うよりも、現にコアウルフを見たからこそ、その警戒も身にしみてわかるはずだ。


 ……前世では、コアウルフの出現を不審に思いながらも、たいした警戒はしていなかった。だが、初めから警戒していれば、被害も違うはずだ。


 いくら前世と同じ道を辿るとはいえ……村の壊滅なんて、見過ごせるものじゃないからな。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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