ついにたどり着く先は
「……わぁ」
「す、すごいですね。ここまでやるなんて……」
「ふぅ」
背後から、驚きに満ちた声が聞こえる。振り返ると、シャリーディアとミランシェ、その後ろに隠れるようにして、リリーが立っていた。
戦闘が終わり、安全となったために出てきたのだ。
「残る二体の魔族も、あっという間に……あななたち、本当に人間?」
「あははー、ミランシェは手厳しいな……」
残った二体の魔族……それらは、俺たちの敵ではなかった。
魔族にも徒党を組まれれば厄介だったが、三体の仲間が一気に減ったことで奴らは、混乱していた。その隙を突けば、簡単に倒すことが出来た。
一体一体は強力でも、やはり、このメンバーならばそこまで苦労は必要とせずに倒せる。
「にしても、あれだけ魔族が出てきたってことは、そろそろ本命も近いんじゃねえか?」
ゲルドも、どうやら同じことを感じていたようだ。ここに来るまでに、早くも数か月……長いようで、あっという間だったな。
本命は、すぐそこ。だが、今日はそこまで進まなくてもいいだろう。今日は出発して今までより時間は経ってないとはいえ、今までよりも力を使い過ぎた。
特に、リリーだ。『スキル』の力を使えなくなるほどに、消耗してしまった。
「まずは、リリーちゃんを休ませた方がいいですよ。私の【癒やしの力】はあくまで傷を治すだけ……集中力を疲弊し削れた精神力までは治せませんから」
「わ、私なら大丈夫だよ」
「いや、あまり無理はしない方がいい。それに私たちも、こう見えて疲れているからな」
そう言って、ドーマスさんはどっかりと腰を下ろす。確かに、目に見えて疲れているわけではなくても、実際に疲労は溜まっている。
なんせ、あれだけの魔物の大群と戦い、続けて魔族ともやり合ったのだから。
「けっ、俺ァまだまだ余裕だけどな」
そう言うゲルドも、腰を下ろす。ああは言っても、この中で一番疲れているのはリリーを除けばゲルドだろう。
俺やドーマスさんは、『スキル』の力で身体能力は向上している。それは、体力の上昇も含まれる。
だが、ゲルドは素だ。あれだけ動いて、疲れないはずがない。
「そうね、少し休憩しましょう」
「はい」
ミランシェ、シャリーディアも続けて座る。みんな、リリーを気遣っているのもあるが、実際に疲れているのも事実。
それを見て、リリーもゆっくりと座る。
「やれやれ、ひと段落だな。今日はこのまま寝れそう」
「おいおい、なにを抜けたこと言ってんだロア」
「冗談だよ」
このまま寝転がれば、さぞ気持ちいいことだろう。だが、そんなことをしている余裕はない。
休憩はするが、少ししたらここを離れた方がいいだろう。考えたくはないが、また魔物の大群が押し寄せてくる可能性もなくはないのだ。
「ま、気を抜いていられないも事実だな。あれだけの魔物の大群、そして魔族を倒したとなれば、奴らも本腰を入れるだろう」
「魔物を消したのは魔族だけどな」
おそらく、魔族でも魔物を完璧に支配できているわけではない。そりゃ魔族の方が上位存在だし、多少は命令を下したりはできるだろうが……
しょせんは、知能のない獣だ。魔物は、ほぼ好き勝手に暴れているだけ。
両者の間に意思の疎通が取れてなかったのも、今回の襲撃を乗り切れた一端だ。
「他の魔族も、さっきの奴みたいにバカならいいんだがな!」
「それはあまり期待しない方向でいきましょう」
そうして、今後の方針を固め数十分。魔物や魔族の襲撃はなく、精神的にだいぶ回復できた俺たちは、進む。
その先は、魔物の大群が襲ってきた方向だ。魔物の大群は、一方向からやってきた……ならば、奴らがやってきた方向には、奴らの根城があるということだ。
実にわかりやすくて、よろしいことだ。
「……見えた」
「あれが……」
それから、数日。魔物の襲撃、魔族の出現などあったが、それらは難なく乗り越えることが出来た。
そして、ついに見えた。眼前に見えるあの、大きな城が……魔王城だ。
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