ディアとの出会い
さて、俺が死に戻り……いや、生まれてから五年の月日が経った。日々遊びつつも、体を鍛えていた。
この村には、度々隣村から遊びに来る男の子がいた。正確には、隣村から交流をするために何人かの大人がやって来るのだが、それに着いてくる子供だ。
前世の俺は、村以外での同年代の子供が珍しくて、積極的に話しかけに行ったものだ。そして……
「キミ、名前は?」
「あ、えっと………………ディア……」
今回も、もちろん同じ道をたどる。このイベントは、幼いながら色濃く残っているため、忘れようもない。……それとも、死に戻りして当時の体になったことで、当時の記憶が呼び覚まされているのか。
俺とは同い年の男の子、名をディアという。男の子ではあるが人見知りな性格で、どこか守ってあげたくなる感じ。大抵は村の大人の後ろに隠れている。
クリーム色の髪は、食べてみたら美味しそうだなと思ったことはなくもない。食べないけど。この村には俺のような茶髪や、赤毛といった髪色を持つ人は多いが、彼の髪は珍しい色だった。
どうやら、彼のいる隣村では、ディア以外にあまり子供がいないらしい。遊び相手がおらず、退屈そうにしているのを見かねた両親が、他の大人に着いていくようにと背中を押したらしい。
「このむらは、遊ぶあいてが、いっぱいだぁ……!」
村に来た当初、そんなことを言ってディアは目を輝かせていた。遊び相手に飢えている、というやつだろう。
人見知りではあったが、一度仲良くなってしまえば徐々に明るい笑顔も見せてくれた。村の子供たちに混じって遊ぶ姿は、見ていて微笑ましかった。
中でもディアは、俺になついていた。俺が一番最初に話しかけたからだろうか、よく俺の後ろをちょこちょこ着いてくるのだ。同い年なのに、弟ができた気分。ディアの俺に対する好感度は今後影響するかわからないが、なるべく忠実に、前世の展開を辿ろう。
……基本的に、村同士の交流は月に一度。だが、ディアはそんな期間は待てないのか、よく遊びに来ていた。もちろん、大人の付き添いはあったが。
「あはははは!」
そう……隣村との交流、ディアの訪問、これらも前世と同じ流れだ。そして、順調に過ごせば……ある事件が、起こる。避けようと思えば避けられる問題だ、だがそうもいかない。
ディアと出会って、三年後。俺が七歳になった年のこと。……俺たちにとって、恐怖を味わうことになる日が、訪れる。
「い、いいのかな……」
「へいきへいき!」
俺とディアは、二人だけで森に入った。普段、子供だけでは入ってはいけないと言われていた森だ。モンスターが生息しているから、子供だけでは危険だと。
しかしその忠告を破り、愚かにも子供二人は森に入った。正確には俺からディアを誘ったんだったか……多分、モンスターといっても大人たちが簡単に倒しているのを見て、自分なら大丈夫だと思ったのだ。なんの根拠もない。
そして、森に入って……モンスターに、襲われるのだ。
「グルルル……ウォオオオオ!」
「うわぁあああああん!」
目の前に現れたのは、四足歩行の獣だ。当時はモンスターの種類などわからなかったが、今ならわかる。あれは、コアウルフと呼ばれる凶暴なモンスターだ。
ディアは怯えて、その場から動けなくなり……無謀にも俺は、落ちていた棒きれ一本で彼を守ろうとモンスターに立ち向かう。この時ディアを置いて逃げなかったのだけは、評価してやりたい。結局ディアを怖がらせてしまったんだがな。
勇敢な子供……だが、それだけで勝てるほど、現実は甘くはない。戦闘経験のない子供が、そんなもので凶暴なモンスターに敵うはずもなく。
叩きつけようとした棒きれは簡単に払われ、木に叩きつけられ、初めての強烈な痛みに己の愚かしさを後悔した。……それが、前世での行動。
「お、りゃあ!」
しかし今回俺は、少し前世とは違った動きを取ることにした。あの時はただ震えるだけだったが、今回は違う。体も鍛え、自分の力を試すように、モンスターへと向かっていった。
モンスターに立ち向かうという点では前世と同じだが、その中身はまったく違う。ただがむしゃらに棒きれを振り回すだけでなく、この体格なりの構えを取る。軽く深呼吸をして、いざ……!
「ぐ、はぁ!」
結果は、もちろん完敗。簡単に吹っ飛ばされてしまった。死なないために、なんとか受け身は取ったが。
小さなこの体では、前世の戦いに慣れた俺にとっては扱いにくいことこの上ない。小回りが利くことだけは利点だが、せっかく相手の懐に潜り込めても、力がなければダメージなんて与えられない。今まで一人で体を作っていたが、実戦は初めてなのだ。
そんな俺の分析を無視し、モンスターは迫る。凶悪な牙を、見せつけて笑っている。
殺される……そんな場面で、俺の心は穏やかだった。なぜなら……
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