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男同士の話



「いや、別にお店とかは……」


「お前、女の経験ないだろ。わかるんだぜー、そういうの。初めては緊張するだろうが、それも慣れだ慣れ」



 こういう話は、苦手だ。まず、ゲルドの言うとおり俺には経験がない……対して、ゲルドはそれこそ百戦錬磨、と言ってもいいだろう。


 それでは話が合わない、というか一方的になるばかりだ。ゲルドとしては、経験のない俺をバカにする意図はなく、親切心からいろいろ言ってくれてはいるのだが。



「それともお前、好きになった相手としかしない、ってパターンか?」


「…………」


「ははは、図星か。なるほどねぇ、そういうのも全然アリだと思うぜ。だが……別にこだわる必要はないと思うがねぇ。男は経験を積んでナンボだ。第一、お前今好きなやついんのかよ」


「……いない」



 悲しいことにと言うべきか、ゲルドの言葉はどれも的確だ。俺の心の内まで、さらけ出されてしまうかのよう。


 そんな俺を見て、またもゲルドは笑う。



「なんだよ、いねぇのか。王都にはいい女がたくさんいるぜ? 見て回らねぇのかよ」


「あんまり気にしたことは……確かに、美人揃いだとは思うけど」


「だろ! 三年も居りゃ気になる女の一人や二人できて当たり前! 好きかどうかなんて二の次だ、欲望に忠実になりゃいいのさ」



 ゲルドのような生き方も、まあありなのかなとも思う。間違いとは思わないし、そもそも生き方に間違いなんてあるのか、とも思う。


 そりゃ、人を殺すとか取り返しのつかないことならともかく……ゲルドの生き方は、とりあえずゲルドも相手の女性も納得している。多分。


 納得しているなら、他が口を出すべきじゃない。



「店じゃなくても、何人かお前好みの女集めてやろうか? 好みのタイプくらいあるだろ?」



 どうしてゲルドは、こうも俺にばかりこういった話をしてくるのだろうか。


 ……まあ、女性陣はそもそも性別の違いから、無理だ。同性のドーマスさんは、妻子持ち……つまり、(おの)ずと俺になるわけか。



「タイプ、か……」


「そうそう」



 どうにも、こういう話をするときゲルドは楽しそうだ。あんまりこういう話をする相手はいなかったのだろうか。


 ゲルドの交友関係の広さはよくわからないが、集めるという以上本当に集められるのだろう。


 だが、ゲルドに集められた女性、か……それってつまり、全員ゲルドと関係を持った相手、ってことだよな。



「なんだかなぁ」


「あん?」


「あ、いや、なんでもない。そういうのは、やっぱりいいかな」


「なんだ釣れねぇな。ま、そういう気分になったらいつでも言えや。っても、もうすぐ旅に出んだからそこは早めにな」



 なんだかんだ、ゲルドは本当に強引に勧めてきはしない。(かたく)なに遠慮すれば、引き下がる。


 それがまた、悪いやつじゃないのだという気持ちにさせられる。あくまで、自分本意じゃないというか。



「そういやよ、お前に聞きたいことがあるんだよ」


「なに?」


「俺の『スキル』、どう思う?」



 唐突に、ゲルドはこう聞いてきた。どうしたんだいきなり関係ない話をして。



「どうって……すごい『スキル』だと、思うけど」


「だろぉ? 戦闘面でこんなに心強いものはねぇ……だが、俺気付いたことがあるんだよ。俺の『スキル』、相手の『スキル』や弱所を見る能力ってだけだと思ってたんだ」


「思ってたって、そうなんだろ?」


「あぁ。正確には他にも能力があるんだよ。俺の『スキル』【鑑定眼】、見えるのは相手の『スキル』や弱所……その弱所ってのが、どうやら女の……」


「ゲルド! そろそろお話はそのへんで!」



 ここからが話の盛り上がり……というところで、割り込む声があった。それは、ミランシェのものだ。


 最初から聞いていたのか……いや、それならもっと早く止めるな。おそらく、通りがかったら下世話な会話が聞こえたので、止めに入ったのだろう。



「あまりロアさんに変なことを吹き込まないように!」


「へいへい」



 怒るミランシェは、俺たちを先導するように歩いていく。その後ろを歩きながら、ゲルドはこっそりと、俺に耳打ちした。



「あの堅物だったミランシェさえ、俺の腕の中じゃトロトロよ。久々に滾っちまったぜ」



 別に聞きたくもない情報を、くれた。それも、前世とまったく同じ言葉を。


 それはつまり、ミランシェは、ゲルドの【鑑定眼】の餌食になったのだろう……それだけは、わかってしまった。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
欲しい!戦闘以外にも有能だな しかし最近気づいたということは、 それを使ってモテモテになったというわけではないのか あるいは、無意識に使ってたのかもしれないが
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