死に戻りしたその先で
……俺は、過去に戻った。その確信を早い段階から得つつも、それと実感したのは、実はまだ少し先になる。
なんせ、今の俺は赤ん坊……あれこれを確認しようにも、自分で動くことのできる範囲が限られている。毎日、ベッドの中か両親に抱かれての移動しかできない。意識ははっきりしているのに、思ったように体を動かせないのは、なんとももどかしい。
今の俺が確認できる方法と言えば、自分の姿と若々しい両親の姿のみ。それと、家の中……家の中を確認するに、ここが俺の生まれ育った場所というのは、どうやら間違いなさそうだ。
「あぅあぅ……」
相変わらず言葉は喋れないから、誰とも意思疎通は取れない。まあ相手も、両親しかいないわけだが。
一日の行動範囲は狭い。とはいえ、窓の外から村の景色を見ることは出来た。自由に見れるようになったのは、なんとか首が動かせるようになってから、ではあるが。
そこから見える景色、人の姿は、どれも見覚えのあるものばかりで……両親以外にも、向かいのおばちゃんや気難しいじいさんの若い姿を見ると、嫌でもこれが過去なのではと思い知らされる。
それでもまだ過去に戻った、と実感に至らないのは、これがかなり濃密な夢だ、という可能性を捨てきれていないからだ。これが夢ではないと断ずるには、あまりに材料が少ない。
そりゃ、赤ん坊の姿でもう何日と過ぎたが……俺は、死んだのだ。その際の、走馬灯ってやつ。死の間際に過去の記憶が夢となって表れている可能性だって……
「……そう、思ってたりもしたんだけどな」
そんなことを思いつつも、気づけば、三年の月日が経っていた。自分で体を自由に動かせるようになってからは、頬を叩いたり派手に転んだり、頭を打ち付けてみたりした。痛かった。
つまり、これは……現実だ。夢なら覚めるはず。だから、過去へと、時間が巻き戻った……と、言わざるを得ない。信じられないが、間違いない。それは、この数年の時間で痛いほど思い知った。
俺はあの時死んだ……なのに、そこで人生が終わらず、こうして過去に戻っている。これは、いったいどういうことなのか。死んだらどうなるか、なんて誰にもわからないが、過去に戻るなんてことは、ないはずだ。
俺の『スキル』が原因なのか……? いや、死んだら過去に戻るなんて、そんな能力はなかったはずだ。ならば、もしかして神様のいたずらかなにかか?
……なーんてな。
「……」
どうして、過去に戻ったのかわからない。それが誰かによる作為的なものなのか、それとも……
……ともかく、俺は死んで過去に戻った。死んで、戻る……いわば、『死に戻り』をしてしまった。それを、この数年で痛いほど実感させられた。
もう一度死んだら、また赤ん坊の時間に戻るのだろうか……気にはなったが、実行する勇気なんてない。
「きゃー、こっちこっちー!」
外で体を動かせるようになってからは、他の子供たちとよく遊ぶようになった。年が近い者が集まり、元気に体を動かして遊ぶ……実に、健康的でいいことだ。
一つ、確かめたいことがあった。過去に戻ったというのなら、今から辿るのは、あの時へと至る道なのか……つまり、過去へ戻る前を『前世』として、前世と同じような展開が流れるのか、ということだ。
子供の頃、どう過ごしていたかなんて覚えていない。だが、こうして俺に前世の記憶がある以上、前世とは俺の行動パターンも変わるだろう。まあ、それは俺の行動が変わるだけで、大きな影響はないのかもしれない。
気になるのは、俺以外の流れだ。この村でこれから起こることは、前世で起こる展開をなぞった形になるのか。
「うーん……」
例えば、前世ではこの村に二年後、隣村との大きな交流が始まる。例えば、前世では五年後、この村はモンスターの群れに襲われる……といった、俺の意思が介入しない展開も、同じように流れるのか。
それを確かめる。とはいえ、そういったことは俺からどうしようもない。いわば自然現象だからな。ならば、俺が前世とは別の動きをしたことで、なにか展開が変わるのか。
ひとまずは、覚えている限りは前世の展開をなぞってみようとも思う。下手なことをして、前世仲良くなった人たちと会えなくなる、とかなったら嫌だもんな。
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