死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい
今話で、完結です!
……俺がラーダ村に帰って来た、その日の夜。
「アーロが帰ってきたことを祝して、かんぱーい!」
「乾杯!」
「……やっぱり、こうなったか」
ヤタラさんに促された俺は、村の人たちに帰ってきたことを、伝えた。みんな、俺が思っていた以上に、俺のことを待ち焦がれていたらしい。
俺が回るよりも、人づてに次々と伝わっていき……
あれよあれよと、飲み会が開かれたわけだ。俺が帰ってきたことと……
「村の新しい住人にも、乾杯だ!」
「いやっほーう!」
新しく、ラーダ村に住むことになった、ディアの歓迎会だ。
村の広間で、豪華な食事が並び、飲んだり食べたり騒いだり……
「久しぶりだけど、やっぱすごいな」
なんとか抜け出してきた俺は、遠巻きに騒ぎの中心を見る。
そこには、ディアを囲うようにして、村のじいちゃんたちが騒いでいた。
「この、村にゃ若者が少ないからな。それも、あんな美人が来たとなりゃじじい共に人気にならぁ」
「あ、ヨッちゃん」
「ぶっ飛ばすぞ」
一人で飲んでいた俺に話しかけてきたのは、ヨルガ……エフィと仲のいい、彼の言うところの若者だ。
まさか、ヨルガから話しかけてくるとは。
「お前も、俺が戻ってきて嬉しいのか?」
「別に、そのまま戻ってこなくても良かったのによ」
「ははは、ひで」
なんか、こうして二人だけで話すのも……久しぶりどころか初めてかもしれないな。
だいたい、間にはエフィがいたから。
「……で、あの美人はお前のなんなんだよ。一緒に帰ってきたってことは……」
「あぁ、俺の大事な人だよ」
「……そうか」
そう呟くヨルガは、どこかほっとした様子だ。ホント、わかりやすいな。
そもそもこいつが俺に突っかかってくるのは、俺がエフィと仲良くしているからだ。だから、俺に特定の異性がいると知って、ほっとしているのだ。
「なに笑ってんだ、気色悪い」
「そこまで言うかよ」
「さぁ皆さん、ここらで私たちの踊りを、ご堪能下さい!」
「お、いいぞやれやれ!」
広間の中心部では、華麗な踊りを披露している踊り子リーズレッテ。そして、隣で踊っているガリー。
リーズレッテに比べれば、ガリーのそれは踊りと呼ぶにも拙いものだ。
だけど……
「ずいぶん、良い顔するようになったな」
「あん?」
「いや、こっちの話。それよりも、驚いたよ。戻ってきたら、リーズレッテたちまでいるなんて」
元々、旅の踊り子……各地を、転々としているのがリーズレッテだ。最後に会った時、彼女は魔王の盗目であるガリーを連れ添って、村を出た。
そんな彼女が、帰ってきたらまさかラーダ村に滞在していたなんて。
「各地を旅してるわりに、なんかちょいちょい会ってるんだよな」
ラーダ村で会うのも……これで、三回目じゃないか。勇者時代にも、一度会っているし。
まあ、嬉しいからいいんだけどさ。
「今は、ガリーに外の様子を慣れさせるために、近場を回っているらしいよ」
「あ、チマ兄」
そこに、またも勇者時代からの顔なじみ……チマが、やって来る。
あの時は、驚いた。魔王を討伐にいざ魔王城に突入したら、すでに魔王が死んでいたのだから。そして、それをやったのが、このチマ……あの時はマーチと名乗っていた。
それが、まさかこの村で、エフィやヨルガたちに「チマ兄」と慕われているほどの、人物だったなんてな。
「おかえり、アーロ。はい、これおかわり」
「お、どうも」
空になりかけていたグラスに、飲み物が注がれる。わざわざおかわりを持ってきてくれたんだろうか。
そんな彼の逆の手には、串焼きが何本と握られていた。
「いやぁ、運が良かったよ。キミが帰ってきたタイミングに、俺も居合わせれたから」
魔王を倒した男である彼は、商人だ。ちょいちょい、村の外に出て物品のやり取りをしているらしい。
「ところでさ……彼女って、勇者パーティーの……」
「あー、うん」
「やっぱり……」
チマは、魔王を倒した現場に俺たちと居合わせた。なので、勇者パーティーメンバーと会うのは気まずいのだ。
俺も、実際再会してからかなり困惑したもんな……その逆もそうだが。
「よし、じゃあ彼女がこっちに来る前に、私はこの辺で……」
「まーまー、もう少しゆっくりしていきなよ」
「はーなーせー」
まあ、ディアならチマに会っても、少し問い詰めるだけで許してくれるだろう。せっかくの同じ村に住む者同士、仲良くしなくてはいけない。
決して、面白そうだから捕まえているわけではない。
「……なあ、チマ兄すげー逃げたがってないか?」
「気のせいだろ」
歓迎会……というか、宴も時間が経過するごとに賑やかになっていく。
村の人たちも、踊り子も、ワモニグラも……みんな、楽しそうだ。
「ふぁー、ちょっと休憩です」
「さすがに疲れたわ」
「エフィ、ディア」
こっちはこっちで静かに飲んでいると、ようやく村人から解放されたディアとエフィがやってくる。
もう、宴の主賓がいなくても関係ないばかりに、盛り上がってるなぁ。
「賑やかな村ね、ここは」
「でしょう? まあでも、今日は特別ですよ」
「あんたの歓迎と……ま、そいつが帰ってきたからな」
「ふぅん……ここじゃ、人気者なんだねぇ、ロ、ア♪」
「な、なんだよ」
「いやぁ、こんないい人たちがいるなら……じゃあ離れられないなって思ってさ」
「……だな」
初めは、ただ逃げて……一度味わった死から逃れるために、ひたすら逃げた。逃げられるなら、どこでも良かった。
それが、たまたまこの村にたどり着いた。ラーダ村に住むようになったのは、いうなれば偶然だ。
けど……今はその偶然に、感謝してる。
「全部、無駄じゃなかったのかもな」
「なぁに?」
「なんでもない」
「ふぅん。……って、んん? そこにいるのって、魔王のとこにいた……」
「ギクッ……いやぁ、なんのことやら」
一度殺されてよかった、なんて絶対に思わないけれど。その経験があったからこそ、今こうして、ここにいる。
何事も、前向きに考えないとな。
二度目の命を与えてくれたディア。一度俺が殺されて、その世界線はなかったことになった……これがやり直した世界だなんて、俺たち以外知らないけれど。
二度目の人生で、これまで知らなかった安らぎを教えてくれたエフィたち。あんな怪しかった俺を受け入れてくれて、感謝しかない。
本当だったら死んでいた命、あのときはどうなるかと思ったけど……今、俺は生きている。そして、これからも……この村で、ディアと、エフィたちと一緒に。
ま、今後もこれまでみたいに、ハプニングに見舞われたりするかもしれないが……
「二度目の、これからの穏やかな人生に乾杯」
「んー? ふふ、乾杯」
そっと、ディアとだけグラスをぶつける。これは、俺たちにしかわからないことだから。
延々と続く宴を見届けながら、俺はグラスの中の飲み物を、一気に飲み干した。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
もし面白いと感じてもらえたなら、下の評価やブックマークを貰えるとテンション上がります!
死に戻り勇者完結となりました!
皆様、最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
始めは思いつきで書き始めましたが、あれよあれよとアイデアが出てきたりして、皆さんにも読んでいただけてここまで続けられました!
殺されたロアの、というかロアをハメた国王のその結末にはいろいろ意見があると思いますが、彼はひっそりと、娘であり王女でもあるリリーに法のもと裁かれたらいいかなと思ってます。
本当に、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




