お出迎えのワモニグラ
ファルマー王国を出た俺とディアは、ラーダ村向けて進んでいた。
ディアをおぶって全力で走ったとしても、数日……それ以前に、ディアはそれは恥ずかしいと拒否。
なので、道中モンスターを見つけて、それに乗せてもらうことにした。
「はぁー、風が気持ちいい」
現在、途中で見つけた四足歩行のモンスター二体の上に、俺とディアはそれぞれ乗っている。駆け走る際、頬を撫でる風が気持ちいい。
特に、ディアはモンスターに乗るなんて経験初めてらしく、うきうきと目を輝かせていた。
「それにしても、運よくモンスターを見つけられて、よかった」
国より外へ出れば、わりとモンスターはいる。
とはいえ、ちょうど二体……それも、人一人を乗せて走れるモンスターを早速見つけられたのは、運が良かったと言わざるを得ない。
見つけてから、ちゃんと"お願い"したら乗せてくれたし、な。物分かりのいい子たちだ。
「ただ、一日やそこらじゃ着けないから、そこは覚悟しとかないといけないけど」
「それって、野宿とか?」
「……まあ、最悪な」
野宿……俺一人なら、なんともないが……さすがに、ディアを野宿させるのはな。
これまで教会で暮らしてきたんだ、そんな真似はさせられないだろう。
というか、そんなことになったら俺の理性的に危ない。
「……私は別に、それでも……」
「ん、なんか言ったか?」
「い、いえ、なんでも!?」
モンスターの背中への座り心地に関しては、我慢してもらうしかないが。
その後、ディアと軽い雑談をかわしたり、モンスターを休憩させたり……時間は、あっという間に過ぎていった。
その日は、運よく人里を見つけられたので、そこにある宿に泊まることに。
「すいません、部屋を二人分」
「あ、別に一人部屋でも……」
「ふ、二人分で!」
こうして、旅をする中で誰かと一夜を明かす……懐かしいな。魔王討伐の頃は、終わりの見えない生活の中で、こんな生活を繰り返していたっけ。
それを、数日の間とはいえディアと、経験することになるとはな。
「少しでも節約した方がいいのに」
「それはそれ、これはこれ」
幼い頃は、男と間違えていたディアだが……今や、そんな間違いなど起きようはずもない成長を遂げている。
そんな彼女と同室とか、別の意味で間違いが起きてしまう。
「真面目だねぇ。まあ、そういうところが好きなんだけど」
「……!」
と、なぜだか俺はちょくちょくディアにからかわれつつ……先に進んでは、見つけた宿に泊まるという行動を繰り返していた。
幸いと言うべきか、移動している間は野宿をするような展開には、ならなかった。
ディアは、なぜだか少し残念そうだったが。
そして……
「お、見えたぞ」
「はー、やっと着いたのね」
もう、ファルマー王国を出てからどれほどの時間が経っただろうか。視線の先には、もはや懐かしいとさえ思える景色……
ラーダ村が、あった。
「よーし、あともう少しだ。がんばっ……」
モンスターの背中を撫で、もう少し頑張ってくれと、声をかけようとしたところ……突如として、地響きが起こる。
なんの前触れもなしに、地面が揺れ……足を、止める。
「きゃっ! な、なに!? 地震!?」
「け、結構でかいぞ……!」
あと目的地までもう少しなのに……嘆く暇もなく、地響きはどんどん大きくなっていき……
目の前の地面が、盛り上がっていく。
「ななな、なになに!?」
突然の異常事態に、ディアはモンスターに抱き着き、体をこわばらせている。
いや、待てよ……これって、地震じゃなくて……
「プゥアー!」
「きゃー!」
盛り上がった地面は割れ、その中……正確には地中から、なにかが飛び出してくる。
黒く、巨大な影、そして愛くるしい声……それは……
「わ、ワモニグラー!?」
「プゥア!」
もし立っていたら腰を抜かしていたんじゃないかというほど、ディアは驚いている。
単なるモンスターならともかく、ワモニグラというモンスターには以前、痛い目に遭わされたからな……まあ、あれはゲルドが悪ふざけで絡んだのが、悪いんだけど。
「ろ、ろ、ロア! はは、早く逃げないと!」
「いや、問題ないよ」
「え……?」
そう、こいつが野生のワモニグラなら、逃げた方がいいが……こいつは、違う。
「あー、こいつはなんていうか……ラーダ村で世話してるんだ」
「ワモニグラを!? いや、それも驚きだけど、それと同じかわからないじゃん!」
「んー、なんていうか、わかるんだよ」
以前、ラーダ村を襲ってきて、その後おとなしくなったワモニグラを村に住まわせることにした。暴れさせればこそ凶悪なモンスターだが、普段は温厚だ。
それに、ラーダ村に住み始めてから、一度も暴れていない。
「畑仕事とか、すげー重宝してるよ。な」
「プゥー」
「そ、そうなんだ……」
まさか、一番のお出迎えがこいつとは。あまり考えたことはなかったが、もしかしてにおいとかでわかったりするのだろうか。
俺が帰ってきたことを知り、迎えてくれるとは可愛い奴じゃないか。
まあ、なんにせよ……
「帰ってきたな……」
リリーの危機を聞きつけ、村を出て……一カ月は、経っただろうか。
ようやく、帰ってこれたんだな。
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