帰ろう
王城での騒動が一段落して、数日……俺は、ディアと共に荷物を抱えていた。今日が、出発の時だからだ。
本当ならば、事件が解決したその日にでも出発したかったのだが……俺が無実だと知った人たちへの対応、なによりディアも一緒に来るためその準備期間で日を置くことになった。
魔王を倒しに冒険の旅へ、というわけではない。この国を出て、別の場所で暮らす……移住するのだ。
なので、荷物をまとめる以外にも、仲のいい友達とのお別れとか、いろいろあったみたいだ。
「……行っちゃうん、ですね」
「あぁ」
まだ、日も登ったばかりの時間……俺たちは、そこにいた。
国の入り口にまで見送りに来てくれたのは、リリーとメラさん。それに、ゲルド、ドーマスさん、ミランシェもいる。
寂しげな、それでも必死に表情を固めているリリーの頭に、そっと手を置く。
「今回は、ちゃんとお別れが言えた。こうして見送ってもらえるなんて、思ってなかったよ」
「……私本当は、今日が来ないといいな、って思ってたの。だって……」
「リリー……」
この日までに、俺たちを送り出すと決めてくれたリリーだが……やはり、いざ見送るとなれば気持ちの整理はつかないのだろう。
今にも泣きそうなリリーの肩を、メラさんが優しく叩く。
「お二人共、この度は本当にお世話になりました」
「いや、礼を言うのはこっちだよ。メラさんが危険を知らせてくれなかったら、そもそも俺はここに戻ってきてないんだから」
元々ここに戻ってきたのは、メラさんの『スキル』である分身から、リリーが何者かに刺されたと連絡を受けたからだ。
たまたまラーダ村に来ていた彼女たち。その経由で、リリーの危険を知って……戻ることを、決めたのだから。
だからこうして、みんなに会えたのだ。
「ロアも、シャリーディアも、元気でやれよ。また来たときには、顔出してくれ」
「ドーマスさんこそ、お元気で。今度は、定期的に帰ってきますね」
「……ま、この国から出ても元気そうだったから、心配はしていないけど」
「はは、なんかミランシェらしい言い方だな。そっちこそ心配いらなそうだ」
以前は、逃げるようにこの国を出てきたから……なんだか、こうして見送られるのは、照れくさいな。
ドーマスさんやミランシェとそれぞれ別れを済ませ、ふとゲルドと目があった。
「……まさか、ゲルドまで見送りに来てくれるなんてな」
「ま、気まぐれってやつだよ。てめえのその面も、拝むのは最後かもしれねえからな」
「最後って……言ったろ、ちょくちょく戻ってくるって……」
「どうだかなぁ、シャリーディアとしっぽりよろしくやって、俺たちのことなんざ忘れてるんじゃねえのか?」
「ね、ねえよ!」
なんてことを言い出すんだ、この男は。相変わらず時と場所を選ばないやつだ。
隣でディアが、顔を真っ赤にしているではないか。見ていてかわいいけれども。
「こほん。ったく……じゃあ、そろそろ行くとするか」
「そうだね」
あまり長く居ても、別れがつらくなるだけだ。
荷物を抱え直して、俺たちはみんなに背を向けて……
「二人とも……また、ね」
「……あぁ、また」
「うん、またね」
リリーの言葉を受け、軽く手を上げて、答えた。
振り返って見た彼女の顔は、寂しそうながらも笑顔を浮かべていた。
見送りを受けて、今度こそ俺たちは、歩き出す。
「ここからラーダ村まで、どれくらいかかるの?」
「俺がディアをおぶっていけば、そんなにかからないと思うぞ?」
「……それは、恥ずかしいから別の方法はない?」
恥ずかしいときたか……誰も見ていないし、いいと思うんだけどな。
とはいえ、ここから歩くとなると、さていつになることやら。俺だって全速力で走って移動してきたわけで……さすがに、のんびりと時間はかけられない。
なので、途中モンスターを捕まえて、乗せてもらうことにするか。
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