ファルマー王国王女
未来で、俺に殺される……その光景を、国王は見た。
だから、自分が死ぬ要因となる俺を、排除しようとした……いや、実際には一度排除はしている。
一度目の人生で、俺は国王の命令を受けたゲルドに殺された。あの時からすでに、俺に殺される未来を見た国王が、俺を殺そうと計画していたとしたら……
「そういうこと、なのか?」
だとしたら、これまでのことには一応、筋が通る。なんで、国王に狙われるのかと、思っていたが……
自分が殺されることがわかっているなら、その障害を取り除くのは難しくはない。
「けど、未来でなにをするからって理由だけで殺される、こっちの身にもなってほしい」
理解できるのと、納得できるのはまた違う。
というか、未来で俺が国王を殺す、というのが見えたのなら……それを俺に話してくれれば、いいのだ。
少なくとも、国王から手を出さなければ、俺から国王をどうこうするつもりはないのだから。
「ん……」
「リリー?」
国王を押さえ込み、このまま解放するのも危ない気がして……どうするべきか悩んでいたところへ、聞き慣れた声が聞こえた。
気絶したままだったリリーが、目覚めたのだ。
「ん……ロアお兄、ちゃん……? ……え、これ……え?」
俺の姿を確認して……それから、周囲を見回す。その光景に驚くのは、当然だろう。
倒れている、人、人、人……先ほどリリーと同じように、異空間に閉じ込められていた人たちが解放され、気を失っているのだ。
さらに……
「お、お父様……」
「俺も居んぜぇ?」
「げ、ゲルド……さん」
俺に押さえ込まれている国王の姿、なぜかこの場にいるゲルドの姿……
正直俺だって、寝起きにこの光景を見たら混乱するだろう。
「リリー、落ち着いて聞いてくれ」
「え……」
俺は、リリーにこれまで起こったことを説明する。
リリーや城の兵士たち、それにディアやメラさんも消したのは国王の仕業であること。国王はどうやら【未来視】の『スキル』持ちで、自分を殺そうとした俺を逆に殺そうとしたこと。俺にそのつもりはないが、どう行動するのかわからないので押さえ込んでいること……
その間、押さえつけられている国王は、ぶつぶつ言うのみで激しく抵抗すらも、しなかった。
「これが、多分真実だ」
「そ、んな……」
「ひははは、てめえの命惜しさに世界を救った勇者様を殺そうとするたぁなぁ、ひでぇおっさんだよホントに!」
「……ホント、お前がどの口で言うんだよ」
ゲルドらしいと言えば、らしい性格なのだが……やっぱり、一度殺された身としては、釈然としない。
そもそもゲルドは国王の命令で俺の命を狙った……とはいえ、そこに個人的な感情が含まれていないと、言い切ることはできない。
実際、ゲルドは【記憶操作】されて忘れているが、ラーダ村で再会したときは国王関係なしに、俺を殺しに来たしなぁ。命令を忠実に実行する、ってタイプでもないし。
まあ、今のところ俺に危害を加えるつもりはないようだし、放っといても問題ないか……
「……そう、だったんですか」
説明を受けたリリーは、衝撃で固まっていたが、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
ふらふらと揺れながらも、一歩一歩を前に、踏みしめて……
「お父様……」
「り、リリー……」
俺に床に押し付けられている国王を……自らの父親を、見下ろす。その瞳にどんな感情を抱えているのかは、わからない。
しかし、なにかを決意したような、瞳だった。
「勇者ロア暗殺の件……本当なら、もっとちゃんと、証拠を集めて突きつけるつもりでした。でも、ロアお兄ちゃんはそれを望んでいなかった」
「……」
「だけど、今回の件は見過ごせません。城内の者たちや、大神官シャリーディア、それに王女である私を、その手にかけようとした」
「俺もいるんだけどー?」
「……勇者パーティーのゲルドさんも」
コホン、とリリーは咳払いをして……しっかりと、国王を、父親を見据える。
「ファルマー王国現国王、ザーラ・マ・ファルマー。あなたを、ファルマー王国現王女、リリー・マ・ファルマーの名のもとに、拘束します」
その姿は、まさしく王女……いや、一国を背負う王女の気品すら見せていた。
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