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死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~  作者: 白い彗星
死に戻り勇者、因縁の地へと戻る

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やっぱり許せない



「リリー?」



 先ほどまで、いたはずの場所に……リリーの姿は、忽然となくなっていた。


 どうして……そんな疑問も、目の前で"それ"をやらかしたであろう人物への警戒心に、塗りつぶされる。



「……」



 このファルマー国王、ザーラ・マ・ファルマー……信じられないが、あいつがおそらくは、リリーを消した。


 いや、リリーだけではない。朝とはいえ恐ろしいほどに静かな城内、実際に人っ子一人いない異常事態……


 関連性がないと思うほうが、無理だ。



「あんた、正気か? 娘を……」


「次はお前だ!」



 俺がなにを言うよりも、国王の手が動く方が早い。先ほどリリーにやったように、右手を俺に向けようとしている。


 とっさに俺は、その場から動く。まず右方向へと飛び、走る。


 なにがなんだかわからない……リリーが消えたからくりも、その方法も。



「落ち着け俺……」



 考えろ、でも足は止めるな。リリーが消えたのは、十中八九先ほどの国王の……



『消えよ、リリー』


『ぇ……』



 あれが、原因だろう。直後にリリーが消えたことを思えば、その方法は国王の『声』にあるのか『手』にあるのか、また別にあるのか。


 生きている、大丈夫だ生きている。根拠はないが……あんな簡単に、人を殺せる手段があってたまるか。


 たとえあれが、なんらかの『スキル』だとしても。



「『スキル』……あれは、『スキル』なのか?」



 足を止めないことで、国王に狙いをつけさせない。今もなお手を向けようとしてくるから、やはりトリガーは手か……それとも、ブラフか。


 『スキル』は、使いようによっていくらでも人を傷つけられる。ゲルドの持つ【鑑定眼】は対象の弱所を見抜き、そこを突けば一撃で殺せるが……それも、やはり使いようで、直接人を害すものではない。


 だが……国王のあれが、『スキル』だとして……」いやそうでなくてもだ。あんな簡単に、人を……



「まったく、動き回って鬱陶しいなぁ」



 国王は、なにがおかしいのかケラケラと笑っていて。俺にはそれが、どうしようもなく不快なものに見えて。


 リリーを消したのもあいつ。城の人間を消したのもおそらくあいつ。メラさんを、ディアを消したのも……



「……っ」



 走り回り、狙いをつけさせないよう撹乱しながら、俺は国王へと接近する。


 大丈夫だ、この足なら狙いはつけられないし……手の動きに注意すれば、予想外のことにも対応できる。



「っ、この、この……!」



 だんだんと、国王の表情が焦ったものに変わる。


 国王という立場上、自分に歯向かってくる者はいなかったのだろう。だから、簡単に相手を消すことが出来た。リリーの時は、不意打ちだ。


 さっきの不意打ち、俺を狙わなかったことを後悔するんだな!



「お、らぁ!」


「へぶら!」



 目前にまで迫り、そこにある国王の頬を、渾身の右ストレートでぶん殴る。それをもろに受けた国王は、情けない声を上げながら転がっていく。


 よほど力がこもっていたからか、ただ転がるだけに飽き足らず、国王の体は壁にぶつかることでようやく止まった。



「ぐへぁ!」



 もちろん受け身など取っておらず、背中から打ち付ける。痛そうだが……同情の余地はない。


 そのまま俺は歩みを進め……国王の前に立ち、襟元を引っ張り上げる。



「ぐぇ!」


「言え、リリーたちをどうした! さっさと元に戻せ!」


「ぐ、ぅ……!」



 苦しそうにもがく国王……俺は手を離して、話しやすいように解放してやる。



「ぅ、げほ! げほ!」


「やりすぎたなあんた」



 見下ろすその男は、偉そうに威厳のある国王のものではない。ただ、小さく映るおっさんだ。


 俺の眼光に、「ひっ」と声を漏らす。



「こんな奴に、俺は殺されたのか……いや、正確には違うけど……」


「な、なにを……」



 直接俺を殺したのはゲルドだ。だが、その命令を出したのはこの男……ディアがいなければ、俺は今ここにはいない。


 そのディアも、この男の手により消されたのだとしたら……



「俺だけならまだしも、大切な人たちにまで手を出されたら、我慢ならない」


「っ……」


「とにかく、リリーたちを元に戻せ。戻せるんだよな? でなければお前を……」


「い、いいのか!? 私をこ、殺せば、リリーたちは永久に閉じ込められたままだぞ!」


「……」



 いつもの堂々とした態度とも、先ほどまでの不気味な態度とも違う……弱々しい姿。まるで、一人の中にいくつもの人格があるようだ。


 まるで三下のような命乞い……だが、確信できたこともある。自分を殺せば閉じ込められたまま、ということは、やはりまだ死んではいないということ。


 そして、おそらくは本人の意思でしか、解放もできない。



「そうか、それは困ったな」


「は、はは、そうだろう。わかったらおとなしく、私の言うことでも聞いて……」


「殺すのがダメなら……腕や足を千切るくらいなら、いいんだろう?」


「……っ!?」



 その瞬間、自分の中にどす黒い、なにかが生まれてきたのを感じた。


 あぁ、そうか。仲間たちをこんな目に遭わされたことだけに怒ってるのかと思ってた。自分のことはもういいと思っていたけど……



「やっぱり、あんたのこと許せてないみたいだわ、俺」


「ひっ……!」



 無論、許したことは一度もないが……仕返しでなにかしようとは、思っていなかった。


 けど、目の前で無様に震えるこの男を見ていると、どうしても……



「わ、わかった! 言う通りに、する! だから、物騒なことは、や、やめてくれ!」



 俺の目に本気を見たのか、またも命乞い……物騒なこととは、どの口が言うのか。


 まあ、いい。落ち着け、俺……こいつには、まだ聞かなければいけないことが、あるのだから。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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