向けられる殺気
俺とリリーは、王の間へと足を踏み入れる。
そこに、広がっていた光景は……
「お、お父様……?」
「んん? おぉ、リリーか」
王の間にある、豪華な玉座。そこに座る人物が、一人。
そこに座っている者……その正体は当然とも言える。玉座に座る、当然の人物。
このファルマー王国の国王にして、リリーの父親。ザーラ・マ・ファルマー……彼が、堂々と座っていた。
「お父様、どうして……」
「どうして……はて、質問の意図が理解できんな。この場所に、国王である私がいるのが不思議かい?」
「い、いえ……」
……なんだろうか、この違和感は。
城の中には、誰もいない。ディアもメラさんも兵士たちも……だから、最後の望みをかけて、この王の間へと足を踏み入れた。
結果として、探していた人はいた。だが、いるのは国王のみ……それに、他には誰もいない。
ポツンと、国王だけが、そこにいた。
「おや、そこにいるのは……勇者ロアではないか」
「っ……」
それに……違和感は部屋の中ではない。国王自身にも感じる。
俺をこの国にいられなくしたのは、他ならぬ国王だ。だから、俺を前にしたらなにか、動揺したり大きな反応があると思っていたのだが……
……この、妙に落ち着いた雰囲気は、なんだ?
「お前は、国では指名手配のはずではなかったか。それを、こんなところまで……リリー、お前の手引きか? 悪い子だ」
「そ、れは……」
「国王、リリーはなにも悪いことはしていない。俺が勝手に頼っただけだ」
俺の記憶だと、国王は娘リリーをかわいがっていたはずだ。
だが、この状況。リリーに、俺を招き入れた責任を追求しないとも限らない。それだけは、避けなければ。
「ほぅ。優しいリリーのことだ、頼られたら断りきれない、と? ふふ、そうまでしてなぜここにいる。私に恨み言でも言いに来たか?」
「今更あんたが、俺をこの国にいられなくしたことをとやかく言うつもりはない。今の暮らしは、気に入ってるからな」
もちろん、すべてを許したわけではない。思うことはあるし、俺を逃がすためにディアがどれだけ苦労したかを思えば、腹だって立つ。
だが、この国を出て、得たものだって多いのだ。今更、あのときのことを蒸し返すつもりはない。
……もっとも。
「あんたがまだ、俺を殺そうとしているなら、話は別だけどな」
「え?」
「……」
俺の言葉に、リリーは戸惑っている。その意思があるのかないのか、国王は黙ったまま。
以前、ラーダ村にゲルドが訪れたときのこと。ゲルドの任務は、近くで起きていたモンスターの活性化の原因を探ること、だったが……
隣町のセント町から、ラーダ村にやって来たゲルドと俺は、対面し……殺し合いにまで発展した。
結局、村長のヤタラさんの『スキル』のおかげで、ゲルドは俺と会ったことを忘れたが。あのとき、ゲルドが襲ってきたのは、国王に俺を見つけたら殺せと言われていたから……
……いや、ゲルドの場合、単純に俺を殺したかったから、って言ってたような気もするな。
「ともかく、どうなんだ。あんたは俺を殺すつもりが……」
「あぁ、あぁ……今までどこにいたのかと思っていたが。まさか、自分から私の前に姿を現してくれるとは」
「お、お父様……?」
座っていた国王は、ゆらりと立ち上がる。
なんだ、この異様な雰囲気……ゲルドを前にしたときとも違う、別の意味で背筋が凍るような。
それに、あの目……リリーのことを、見ているようでどこか遠い目をしているような。
「! リリー下がれ!」
「え……きゃっ」
俺はとっさに、リリーの肩を掴み後ろに下がらせる。
この感覚は、覚えがある……殺気だ。
それも、リリーに対しての凄まじい殺気。
「どういうことだ」
少なくとも、あの国王はリリーのことを愛していたはず。だが、今あいつが、リリーに向けている目は……!
完全に、リリーを殺そうと……?
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