犯人を誘きだす
リリーを狙った人物が、リリーだけを狙ったのではないという可能性も、出てきた。
これは……犯人の絞り込みが、難しくなったな。リリー個人を狙った者なら、リリーに恨みを持つ者とか、探りようはあったが……
「リリーちゃんを狙った人物が、リリーちゃんじゃなくて誰でも良かった愉快犯のパターン……か」
腕を組み、ディアは考え込む。ここに来て、考えることが増えるとはな。
メラさんとしては、相手が何者であろうとリリーに危害を加えた相手であることに、変わりはないだろうが。
「やっぱり、内部にいる人間の仕業なのかしら」
「それは……」
ディアの言葉に、メラさんは否定的な姿勢を見せる……が、すぐに押し黙る。
共に働く仲間を、疑いたくはない。しかし、疑わないだけの材料がないのもまた事実、といったところだろう。
疑いたくはないが、それでは先には進めない。
「二人は、心当たりとかないかな。あ、怪しい人とかじゃなく……こういうことできそうな、『スキル』を持った人、とか」
『スキル』か……それは使い方によっては、人を害する力にもなる。
だが、『スキル』はあまり関係ないんじゃないかと、思い始めている。リリーの話を聞いてな。
リリーを狙ったのならともかく、誰でもよかった場合……ただ、身を隠せる場所を知っておけば、いいだけの話だ。
重要なのは『スキル』ではなく……
「この城のことを把握している人間……」
「え?」
「そっちの方が、怪しいんじゃないかと思ってな」
この城だって、かなり広い。いくら長く働いていても、内部のすべてを把握は出来ないだろう。
ならば……城の隅々までを、把握できる人物。人に見つからないような場所を把握している人物……
となると……
「古参の方が怪しい、というわけですか?」
「あくまで俺の予想だけどな」
ただ、そう考えても他にも、疑問は残るが……
そもそもなぜ、こんな事件を起こしたのか……リリーを狙ったのではないにしても、だ。それに、たいみんぐだって……
……まあ、俺が考えても、仕方のないことか。犯人を捕まえれば、わかることだ。
「で、犯人はどうやって見つける?」
確信を、ディアは突く。そこなんだよな。
こうして考えていても、犯人が見つかるわけではない。かといって、やみくもに動くのも危険だ。
ただでさえ、俺は自由には動けないのだし。
「リリーを刺して……状況は、犯人にとっては良くないもののはずだ」
「よく、ない?」
「そうだね。リリーちゃんを本気で殺すつもりだったのかはともかく、こうしてリリーちゃんは無事なわけだから……」
「……いつ、リリー様の口から自分の犯行がバレるか、怯えているというわけですね」
そう、犯人はおそらく、リリーが犯人の顔を見ていないことを、知らない。
だから、いつリリーの口から自分の名前が出てくるか、気が気でないはずだ。
「となると、一刻も早くリリーの口を塞ぎたいはず」
「でも、リリーちゃんはその後、監視に厳重に守られていたから、手が出せなかった」
王族である、リリーに危害を加えられたのだ……監視が強くなるのは、当然だろう。
その監視の強さが、結果的にリリーを守っていた。
「ははぁ、私を見てくれてる人が多かったから、犯人は手が出せなかったんだ。……あれ? だったらさ、こういうのはどうかな……」
「ダメ」
「ダメよ」
「ダメです」
「まだなにも言ってないのに!?」
リリーは、名案だと言わんばかりの顔をしているが……俺も、ディアも、メラさんも、揃ってリリーの意見を却下した。意見が出る前に。
リリーが考えていることは、わかる。
「リリー、お前自分を餌に、犯人を誘き出そうとしてるだろ」
「…………な、ナンノコトカナー」
わかりやす!
……とまあ、こういうわけだ。リリーは、自分の守りを解き、無防備な姿を晒すことで、犯人を誘き寄せるつもりだ。
そんなことさせられるはずがない。
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