そいつの目的
ディアたちを気絶させ、部屋を血に染めた【幻影】を見せ、俺をからかったと言った仮面の人物。
そもそもリリーを刺し、怪我を負わせた人物……
この二人は、果たして同一人物なのかどうか。
「……ロアお兄ちゃんは、私を心配して、戻ってきてくれたんだよね」
「え? あぁ、そうだな」
「じゃあ……私を指した、犯人が捕まったら……また、出ていっちゃうの?」
「……」
リリーの言葉に、俺は、ちゃんと言葉を返すべきだろう。
たとえリリーを、悲しませることになったとしても。
「あぁ。ここを離れた先で、俺には大事な人たちが、居場所ができた。もちろん、リリーたちも大事だ。だけど……」
「……うん、わかってる」
俺が、最後まで言うよりも先に……リリーは、小さく、力強くうなずいた。
その先は、言わずともわかっている。そう、言っているかのように。
「初めは、帰ってきてくれたんじゃないって、がっかりもしちゃったけど……こうして、また会えただけでも、私は嬉しい」
「リリー……」
「だから、大丈夫」
大丈夫だと、そう言って笑みを浮かべるリリー……そこには、もう俺の知っている、昔のリリーはいなかった。
旅の最中、強くあろうとして、でもどこかほっとけなくて……そんな、か弱い少女はもう、いなかった。
「でも、犯人を捕まえたら帰っちゃうってことは……逆に言えば、犯人が捕まるまでは、ここにいるってことだよね?」
「り、リリー?」
おや……なんだかリリーが、怪しげなことを考えているような。
あ、あれはよからぬことを考えている顔だ。あの頃と変わっていない。懐かしいけれども。
「リリー様、あまり変なことを考えては……」
「あはは、わかってるってー」
さすがはメラさん、リリーと付き合いが長いだけあって、リリーがなにを考えているかは、わかっているらしい。
わかってると答えるリリーだが、ホントにわかっているのだろうか。
「そ、そんな疑ったような目をしないでよ。わかってるよ、私だって、自分を刺した人間を野放しにしたくないもん」
「……だよな」
あの仮面の人物についての、手掛かりはない……ならば、まずは手掛かりを得られそうな、別の角度から探っていこう。
リリーを刺した、人物についてだ。
「リリーは、刺された時どんなだったんだ? 怪しい人物を見たとか……」
リリーが刺されたその時、メラさんは側にはいなかったらしい。
だから、リリーになにがあったのかは、本人に聞かなければ、わからない。一応、リリーから話を聞いた後、メラさんが【分身】を通じて教えてはくれたが……
「うん……あれは、朝、早く目が覚めて。ちょっと散歩しようかなって庭に出たの」
「庭で、散歩……」
「そうしたら、誰かに呼ばれたような気がして……振り返ったけど、誰もいなくて。それから、前を向いたら……いきなり、胸に、痛みが走って……」
「……」
リリーは朝早く、庭を散歩していた。何者かは、そこを狙った。
リリーの意識をそらして、その隙を突く……慣れた者の犯行のように、思えた。
「その、リリーちゃんを刺したやつの顔は……」
「……ごめんなさい、覚えてない」
「ううん、リリーちゃんが謝ることじゃないのよ」
本人から聞いたが、メラさんから聞いた話と、たいして違いはない……か。正面から自分を刺した人物のことを覚えてないのも、顔を確認する時間がないほどの衝撃だったのだろう。
……ただ、この話を聞いた時から、気になっていたことがある。
「リリーは、毎朝散歩するのは日課、だったりするのか?」
「ううん。その日はたまたま早く起きたから……気分、かな」
リリーに朝の日課の習慣はない……ならば、だ。
リリーが庭を散歩していたのは、まったくの偶然。しかし、リリーを刺した人物は、すでに庭にいた。
……その人物は、リリーを狙ったわけじゃなくて……たまたま、そこにいたリリーを狙った可能性も、あるのか?
「そいつの目的は、なんだ……?」
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