出発の朝
慌ただしい朝になった。エフィには改めて説明する必要はなく、むしろエフィがみんなに俺がいない理由を伝えておいてくれるらしい。
とはいっても、俺の正体を知ってるのがエフィとヤタラさんだけなので、そこんとこどうごまかすのかはわからないが。
ま、うまく説明しておくと言っていたし、信じるとしよう。
「いやー、まさか私たちよりも先に出ることになるなんて」
「本当にな」
リーズロッテ一行は、出発の準備を進めているところだ。急ぎの旅ではないので、わりとのんびりといった感じだ。
まさか俺たちのが、先に旅立つことになるとは。
軽くであるが、事情は話してある。急いでファルマー王国に戻らなければならなくなったこと、それに俺もついていくこと。
「メラさん、今の状況は?」
「……命に別状は、ありません。王宮在住の精霊術師に治療を頼み、意識は失ったままですが傷跡も残らずにベッドで眠っています」
『スキル』の【分身】で意識を共有できるメラさんには、逐一向こうの状況を報告してもらう。
リリーの命に別状はなく、今は安静にしている。まだ油断はできないが、問題は密室にいたリリーに危害を加える何者かがいたということだ。
「刺されたって話だけど、特徴は?」
「どこにでもある、調理用のナイフです。それが、奥深くまで突き刺さっていました。無事だったのは、不幸中の幸いです」
「でも、リリーちゃんが危ないことに変わりはないわ」
城の中の、どこかの誰かが刺されたんじゃない。リリーを、部屋の中にいるリリーを狙って、誰かが刺したんだ。
今回はたまたま運が良かっただけ。当たりどころが悪ければ、一突きで死んでしまっていたかもしれない……
「とにかく、急ぐか。準備もできた」
「では……皆さん、またどこかでお会いしましょう」
「リーズレッテも。……ガリーちゃんもね」
「うん」
「無事に帰ってきてくださいね、アーロさん」
「あぁ」
別れを済ませ俺たちは、目的地ファルマー王国へと向かう。俺が脇にディアとメラさんを抱え、とにかく突っ走る形だ。
ここからファルマー王国まで、俺だけだと正直道は覚えていないから……二人に、道案内を頼むことになる。
「わっ、は、はやーい!」
「これは……予想以上、ですね」
「舌噛むなよ!」
二人を抱えて走るため、一人で全力で走るよりは当然遅くなる。それでも、モンスターに乗って帰るよりも格段に速い。
さすがに、一日や二日で着く距離ではない。俺も時折休息を挟まないといけないしな。
「今日はここで休みましょう」
暗くなるころには人里で宿を取り、明るくなるころに出発する……それを、繰り返す。
ちなみに、ディアは黒い鎧を着てはいない。あんなもの、着られたらさすがに持ち運べない。
あれは、もういらないということでラーダ村に置いてきたようだ。正直俺もいらないが、まあ村人の中には物珍しく見る人もいるだろう。
「ロア、大丈夫?」
「あぁ、問題ない」
人二人を抱えての全力疾走なんて、旅をしていた頃でもやったことのない経験だ。だからか、ディアは心配そうにしている。
まあ、負担がないと言えばうそになるが……
「あぁ、二人は安心して、身を任せてくれ」
男として、情けない姿は見せられないからな。二人も、この移動方法が速いとわかっているから、素直に甘えている。
最初は、メラさんは自分で走るつもりだったらしいが……俺の方が全然速いらしいので、諦めたようだ。
「……あ、あれ!」
途中モンスターに遭遇したり、柄の悪い輩に絡まれたりしつつ……数日後、もう目視できる位置に、ファルマー王国の大きな城が見えてきた。
メラさんによると、以降事件は起きていない。また、余計な混乱を防ぐために、リリーが危害を加えられたことは国民には伏せられているらしい。
「……懐かしいな」
戻ってきたか……ファルマー王国へ……!
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