仲間のピンチ
「リリーが……刺された……!?」
思いもしなかった、メラさんからの言葉……その内容に、俺は言葉を失う。
同時に、寝起きでボーッとしていた意識が、一気に覚醒していくのがわかった。
「刺された、って……誰に、なんで!?」
「それは……わかりません。いつものように、リリー様を起こしに……部屋に、入ったら……」
メラさんの『スキル』は【分身】……片方はここに、片方はリリーと共にいる。分身の意識は共有されており、ここで起こったこと、向こうで起こったこと、それらは互いに伝わる。
だから、遠いファルマー王国で起こったことも、メラさんならすぐにわかるというわけだ。
「そんな……あ、ディアは……?」
「すでに、出発の準備を進めています」
俺よりも先に、この事実を知らされ……ディアは、出発の準備を進めているようだ。
本来は、もっとゆったりと出発するつもりだったのだろう。だが、状況が状況だ……そうも、いかないのだ。
「……向こうの、様子は?」
「……ひとまず、国王……リリー様のお父上に、伝えています。発見したのは、私と見張りの者だけだったようなので、慎重に……」
「……そうか」
俺は、王族の部屋がどうなっているとか、詳しいことは知らない。だけど、基本的に王族の部屋には警備とかいるもんじゃないだろうか。
メラさんの話によると、リリーは一人で寝たらしい。それから朝迎えに行くまで、部屋には誰も入っていない……と、見張りの者は言っていたようだ。
つまり、部屋は密室。まあ物理的な密室など『スキル』でどうとでもなるが……手がかりを残すという意味では、『スキル』の線も薄い。
「まさかあの国王が……まさかな」
まず考えたのは、俺をハメたあの国王がリリーに危害を加えたのではないか、というもの。しかし、それは多分ない。
あの男の人柄をよく知っているわけではない。それでも、娘に危害を加えるような男ではない。それは、断言してもいい。
国王ならば、娘の部屋に入ることも見張りを退かせることも用意ではあるだろうが……そんな、わかりやすい犯行をするとも思えないしな。
「メラさん、準備できた!」
そこへ、リリーが飛び出してくる。持ってきた荷物を手に、着替えも済ませて準備万端というわけだ。
ディアは、俺を見る。その顔は、昨日までのデレデレしたものではない……真剣な、以前の旅を思い出す顔だった。
「ロア、メラさんから聞いたと思うけど……」
「あぁ。……リリーが、刺されたって……」
「えぇ。心配だわ……戻らないと」
ディアの表情は、固い。それはそうだ、かつての仲間が……自分を慕ってくれていた妹のような存在が、危険な状況にあるなんて。
密室で刺されたということは、犯人は内部犯の可能性が高い。外部の可能性もなくはないが、わざわざ厳重な警備の中を行く意味はないだろう。
メラさんがリリーを最後に確認したのは、昨夜……それから朝にかけて、誰も部屋には入っていない。唯一の出入り口である扉には見張り……ならば、残る侵入経路は窓?
やっぱり、外部からの犯行? ……くそ、わからん!
「ロア、ごめん。ホントはもっとゆっくり出発したかったんだけど……」
「それどころじゃない、ってわけだな」
事態は一刻を争う。だからこそ……
「……こっから、急いで帰って間に合うのか?」
「……」
なにに間に合うのか、それは自分でもわからない。
だが、急いで帰らなければいけないのなら、ここから急いで引き返したとして……それでも、何日もかかる。
ディアとメラさんは、表情を暗くする。向こうにはメラさんが警戒してついているから、あからさまになにか起こることはないだろうとはいえ……
「……俺も、行く」
「え?」
俺なら、普通に移動するよりも速く、移動することができる。二人が来たままの道を帰るより、俺が二人を抱えて走ったほうが速い。
リリーの危機……それを聞いて、じっとしてなんていられない。
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