やりたいこと
なぜか自信満々にうなずくリーズレッテ。彼女の意志に聞いてみようと思ったのは俺だが、さすがに即答すぎて怖い。
なので、俺はもう一度聞く。
「いや、リーズレッテ……もう一度よく考えてみてくれ」
「はい?」
「ガリーは、魔王の娘だ」
「はい」
「ガリーは、【消滅】の『スキル』を持っている」
「はい」
「なのに、本当に大丈夫か?」
「大丈夫です」
……なにを持って、大丈夫なのだろう。俺には不安しかない。
ディアも同様に、複雑そうな表情を浮かべている。俺としても、ガリーが自らやりたいと言い出したことを、尊重したい気持ちはあるが……
そんな中で、リーズレッテはガリーの目の前に立つ。ガリーに目線を合わせるため、若干屈む。
「ねえガリーちゃん、キミは私の躍りで、感動してくれたの?」
「うん、した!」
「そっか」
一つだけの、問答。その答えを聞き、納得したようにリーズレッテは俺たちに向き直り……
「私の踊りを好きと言ってくれた人に悪い人はいません! だから、大丈夫です!」
仁王立ちで、すごい言い切った。
「それに、ガリーちゃんは過去はどうあれ、この村に来てから悪いことはしていないんでしょう?」
「それは、そうだが……」
ガリーの正体について話した……つまり、ガリーがこれまでやってきたことも、当然話した。
ガリーをこの村に連れてくるまで続いていた、モンスターの活性化。そして、実際に人間をその『スキル』により消したことも。
それを聞いても、リーズレッテは変わらない。
「私はね……旅の途中で、いろんな人に会ってきたんですよ。それこそ、数え切れないくらい……いい人もいれば、悪い人もいて。だから、わかるんです」
「……」
「目を見れば、その人が本当は、どういう人かっていうのは」
俺たちが、魔王を討つために各地を旅していたのと、同じように……いや、魔族と関わってばかりだった俺たちよりも、明らかに人間を多く相手にしてきたリーズレッテ。
俺よりも、人を見る目は確かなのだろう。それに、俺が思う以上に、危険な目にもあってきたのだろう。
いつだって明るい、彼女だが……それは、見ているところだけだ。俺の知らないところで、たくさんの苦労があったはずだ。
「けれど……本当に? 大丈夫?」
「もう、心配性ですねシャリーディア様は!」
心配ないと、リーズレッテは笑う。本人がここまで言うんだ……きっと、大丈夫なのだろう。
なにか、大丈夫だと計算のようなものがあるわけでは、ない。大丈夫だと、気持ちで、そう思っているのだ。
「リーズレッテがいいなら、俺から言うことはなにもないさ。ガリーがやりたいってんなら、俺が止める権利もないしな」
「じゃあ……!」
「リーズレッテ、ガリーをよろしく頼むよ」
「頼まれました!」
こうして、ガリーはリーズレッテの旅に同行することに。旅の中で、ここでは得られなかったものを得られればいいが。
村の中よりも、世界を回っていった方が、得るものは多いはずだもんな。これまでは俺が面倒を見ている形だったが……自発的な心が育つのは、いいもんだ。
「……やっぱりあと一泊していこうかしら」
多分、俺に聞こえないつもりでそう呟いたディア。だがしっかり聞こえている。
もう一泊……あぁ、そういうことか。リーズレッテは明日には村を出る、それにガリーも着いていくということは……明日の夜には、正真正銘俺の家には俺しかいなくなるということだ。
そこに、ディアが泊まれば……二人きりに、なるよなぁ。
「こほん。とりあえず、そうとなればエフィたちに挨拶してこないと」
「わかった」
ディアの言葉はとりあえず聞かなかったことにして、ガリーに告げる。これまでお世話になったのだ、一言言っておかなくてはならないだろう。
いきなりのことではあるが、あの二人なら受け入れてくれる。
駆けていくガリーの背中を、見つめていた。
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