ガリーの夢
リーズレッテの踊り……それは、数々の人たちを笑顔にして、幕を閉じた。
彼女は今夜は宿を借りて、明日には村を出るらしい。忙しないことだ。
「……ガリー、どうかしたか?」
踊りの時間が終わり、それぞれ片付けなんかをやっている最中で……ふと、その場に突っ立っているガリーの姿が、目に入った。
リーズレッテにキラキラした視線を送っていたガリーであるが、どうやらその余韻が残っているかのように、その場でボーッとしているのだ。
「……すごかった、あの人の踊り」
「ん? あぁ、そうだな」
やはり、興奮冷めやらぬといった感じか……しかし、それだけではないような、気もする。
そんな俺の気持ちを、知って知らずか……ガリーは、俺へと視線を向ける。体ごと、俺と向き合って。
「私、あの人みたいな、誰かを感動させられる踊りをしてみたい」
……こう、言った。
「……なんだって?」
それを俺は、最初聞き違いかとも思った。だって、リーズレッテの踊りに幸福を感じる人はいても、こうしてリーズレッテのように踊りをしたい、なんて言う人はいなかった。
それも、あのガリーがだ。これまで、ほとんど何事にも無表情無感情を貫いてきた、ガリーがだ。
「す、すごいことを言い出したわね」
俺の隣にいたディアも、驚いた様子だ。まさか、魔王の子供が、人の踊りに感銘を受け、それを真似したいと言うなどと、誰が予想した。
それだけガリーの心に爪痕を残したリーズレッテの踊りは、やはりすごいという話になるだけなら、微笑ましいいのだが……
「私、あの人と一緒に、旅をしてみたい」
「……なんだと……!?」
続けて、驚きの言葉を口にした。踊りに感銘を受けた、踊りで誰かを感動させたい……そのために、リーズレッテと一緒に、旅をしたいだって?
それを聞いて、愕然とした。いや、だって……まさか、とつひもなく、そんなことを言われるとは。
「……どうするのよ、ロア」
「どうしようか」
俺は別に、ガリーの保護者ではない。ガリーがそうしたいと決めたことであれば、やってみればいいと思う。
……だが、こう楽観的に考えられない理由がある。それが、ガリーの持つ『スキル』、それが【消滅】だということだ。
手のひらから発する光に触れたものを、文字通り【消滅】させる……そんな危険な『スキル』を持った奴を、リーズレッテの旅に加えるだって?
『スキル』の問題に比べれば、ガリーが魔王の子供だって事実のほうがまだかわいく思えてくる。
「ねえ……だめ、か?」
「うっ……」
そんな目で見ないでくれ、ガリー……ガリーはこれまで、頼み事とかしてこなかった。そんなガリーが今、お願いをしているのだ。
しかし、しかし、なぁ……
「ぅんん……!」
「娘の教育方針に悩む父親じゃないんだから」
結局、俺たちだけでは判断できないので……リーズレッテ本人に直接、聞いてみることとした。
もちろん、すべてを包み隠さずに話す。ガリーの正体も、『スキル』の詳細も……その上で、リーズレッテはどう思うか。
「……なるほど、そうですか」
ガリーがリーズレッテの踊りに感銘を受けたことを含めて、リーズレッテに話す。
黙って話を聞いていたリーズレッテは、話を聞き終わると何度かうなずいて……
「まさか、私の踊りでそんな気持ちになってくれるとは! 嬉しいです!」
ひどく感激した様子で、ガリーの手を取っていた。なんか涙が見える。
リーズレッテ的にも、その発言は嬉しかったらしいな。
「で、だ。リーズレッテ。ガリーはリーズレッテと旅がしたい、って言っているんだけど……」
「えぇ、私は構いませんよ」
「……」
即答だった……考える間もないくらいに、即答だった。いや、リーズレッテの気持ちが固まっているのはいいことなんだけどね。
とはいえ、やっぱり危険なわけで……なんの対策もなしに同行させるのは、いかがなものかと思っている。
が、リーズレッテは……やけに自信満々な笑顔で、大丈夫だとうなずいてみせた。
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