精霊師と精霊術師
「あの、よろしいでしょうか」
場の空気が一旦落ち着いたのを見計らってから、手を上げる者がいた。
それは、ミランシェだ。
「うむ、なにかな」
「このパーティーに精霊術師がいるのなら、私はいらないのではないですか?」
玉座に座った国王に向かって、ミランシェは疑問を口にする。それは、ミランシェ本人にとって重要な問題であった。
このパーティーには、『精霊術師』であるシャリーディアがいる。だというのに、『精霊師』である自分が必要なのか、という疑問だ。
「精霊師は、精霊術師に劣る存在です。私の『スキル』もぱっとするものではありませんし、必要は……」
自分を卑下するミランシェ。それは精霊師と精霊術師……似て非なる両者の、明確な違いによるものだ。
精霊師と精霊術師、その違いは、一言で言ってしまえば精霊と契約できるか否か、だ。
そもそもこの世界には、精霊という存在がいるらしい。らしいというのは、精霊と話せる才能を持つ者は多くはないからだ。俺も含めてな。
「……」
精霊術師は、精霊と契約することで力を借りられ、様々な超常的な力を使うことができる。
一方精霊師は、精霊と対話こそできるものの力は借りられない。だが、精霊と対話できること自体が誰にでもできることではなく、精霊の導きによって窮地を脱した、なんて例もある。
確かに比べれば、精霊師よりも精霊術師の方が優れている。だが、問題はどちらが優れているか、ではないのだ。精霊と意思疎通できる時点で、誇れる事なのだから。
「必要ない、か。……そのようなことはない。精霊術師は、貴重な存在だ。それゆえに、精霊の力を借りるということはかなりの精神力を消費する。大神官殿にはメンバーの回復要因としての働きを主にしてもらっている」
「……つまり、貴重な精霊術師よりも、私のような精霊師は彼女の力を温存させるためだけの……」
「いや、違うぞ。精霊師とて貴重な存在じゃ。それに、聞いた話では対話しか出来ない分、精霊との仲をより大切にする……それが精霊師じゃと」
ミランシェは、自分に自信がない方ではない。それでも、自分よりも優れた力を持つ者が現れれば、不安にもなるのだ。
国王は、その不安をゆっくりと、解いていく。
「精霊と対話できる貴重な存在、それに冒険者としての力を備えた存在。この二つを兼ね備えた者はそうはいない。そなたの力は、必ず必要になる。頼りにしておるぞ」
「……そういう、ことでしたら」
国王の言葉に、ミランシェはなにかを考えるようにして、しばらくしてうなずいた。
……わりとちょろいな、ミランシェ。
とはいえ、ミランシェの力が必要だったのも確かだ。ミランシェの主な武器は弓矢だが、それを精霊術により強化することができる。ただの矢が、超常的な力を持った武器に変化するのだ。
それを抜きにしても、【百発百中】の『スキル』により、狙った箇所へと必ず攻撃は当たる。それと、ここにゲルドの【鑑定眼】を合わせれば……
魔族の皮膚は硬い。が、急所を見つけてしまえば、急所に必ず矢がヒットするのだ。皮膚が硬かろうが関係ない。
「ミランシェさん、頑張りましょうね!」
「え、えぇ」
それはつまり、一撃必殺且つ百発百中の、絶対の攻撃となる。弓矢なため遠くの敵も攻撃できるので、こちらから先手を取ることもできる。
それに、ミランシェさんの冒険者としての経験が活きるのも、本当だ。いくつもの死線を潜り抜けてきた彼女の経験は、何度も俺たちの窮地を救ってくれた。
「よ、よろしく、シャリーディアさん」
「シャリーディア、でいいですよ! ミランシェさんの方が年上なんですから!」
基本的に、精霊師は精霊術師を嫌う傾向にある。それはそうだろう、言ってしまえば精霊術師は、精霊師の上位互換なのだから。
だがこの二人は、仲が良かった。やはり同じパーティーにいる以上、仲が良くなくては。いずれいらない亀裂を生んでしまうからな。
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