『スキル』を授かる日
ついに、俺が『スキル』を授かる時が来た。
『スキル』を授かるのは、十五歳になった時だが、正確には十五歳になった七時間後……つまり、当日の朝七時だ。
なので、この村では朝から、村人全員で新たな成人の誕生を見守るのが、風習となっている。
「…………」
本当なら、この瞬間にディアもいて、ディアが『スキル』を授かる瞬間にも俺がいたかった。だが、それはこの時間軸でも叶わなかった、当然だが。
『スキル』を初めて授かるときは、なにをどうすればいいかわからなかったが……
なにをする必要もない。ただ、待てばいいのだ。なにをしなくても、その時は来る……!
「!」
瞬間、予感があった。その直後……
『十五歳の誕生日、おめでとうございます。『スキル』を獲得しました』
「あ……」
声が、聞こえた。頭の中に、まるでそれが当然であるかのように。
それは男のものとも、女のものともわからない声色だった。ノイズがかかっているような、それともクリーンなような、そんな変な感覚。
「お、おい、来たかロア?」
「しっ」
俺の反応を見て、湧き立つ父親を母親が小突いている。
そう、『スキル』を授ける声はこれで終わりではない。その『スキル』名を、告げるのだ。
『あなたの『スキル』名は、【勇者】です。詳細は後々、確認をお願いします。改めて、おめでとうございます』
「……【勇者】」
やはり、俺が得る『スキル』は【勇者】だったか。ここまで前世の展開をなぞっているから、十中八九そうだとは思ったが。
というか、ここまできて【勇者】じゃなかったら、俺の今後の計画が全部崩れる。
「ふぅ……終わったみたいだ」
「おぉ、おめでとうロア! で、『スキル』はなんだ? 父さんのような【火炎】か? 母さんのような【飛行】か?」
「あなた、落ち着きなさい」
「あはは」
そういや、前世でも父さんは、今みたいに喜んでくれたな。
俺以外の人間の行動も、なにもしなければやっぱり変わらないってわけだ。
「俺の『スキル』は、【勇者】だってさ」
「ゆ、ゆう……? なんだ、そりゃ。聞いたことないなぁ」
「そうねぇ」
「わしもじゃ」
「俺も知らねえな」
「でも、なんかすごそうよ?」
両親含め、村の人たちは口々に知らないを繰り返す。ま、知らないのも当然だろう。
【勇者】とは、一般的には存在すら知られていない『スキル』らしい。それほどまでに、珍しいのだ。
「それで、なにができるんだ?」
「ええと……身体能力の強化、とかみたいだね」
「【怪力】とかとは違うのか?」
「他にもいろいろできるみたい」
『スキル』の能力詳細は、その『スキル』について知りたいと念じれば、できることが頭の中に浮かんでくる。便利なものだ。
中には似たようなものもある。たとえば【飛行】と【念動力】……これは要は、浮かせるだけか、飛べるのか、との違いだ。似ているが、その詳細までも同じなのは……やはり同じ『スキル』だけだ。
「ま、こまけえことは後回しだ!」
「そうだな、これでまた一人、成人の仲間入りだ!」
「おうよ! 俺の息子のめでたい日だ! 飲むぞー!」
「はぁ、飲みたいだけでしょう。朝からやめときなさいよ」
大人たちは、盛り上がっている。子供が大人になるその瞬間を祝いたいのは本音だが、それにかこつけて飲みたいというのも、また本音だ。
……まだ、朝なんだけどな。
「ほら、ロアも来い! この村一番の酒飲ませてやる!」
「あなた、そんないきなり! ロアにはこの軽いお酒からの方がいいに決まってます!」
いつの間にか、止める側だった母さんも酒盛りに参加している。仕方ない、行くか。
前世では、俺は飲まされ過ぎてダウンしてしまった。だが、今回はそうはいくまい。
うまくかわして、この場を乗り切ってみせるとも。
「……あと、数日か」
大人たちのところへ向かう最中、俺は呟く。あと数日もすれば、王都から俺を迎えに、リデューダさんを筆頭に王国の兵士がやって来る。
この村で過ごすのも、あと少しか。そんな気持ちが、湧いてきた。今度こそは、絶対に、この村に帰ってこよう。
……ちなみに飲みつぶれはしなかったが、翌日二日酔いになった。
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