突然の別れ
前世でも、リデューダさん始めとする国の兵士隊の皆さんのおかげで、村の被害は最小限に抑えられた。もしも来てくなかったら、村がめちゃくちゃになるどころかみんな死んでいただろう。
リデューダ・カイマン……彼女は俺が『スキル』を得た数日後、王国の命令で俺を迎えに来るうちの、一人だ。
『スキル』というものについては、俺はもう少し大きくなってから村の大人たちにいろいろ教えてもらう。『スキル』を授かったら成人だよとか、成人したら村で働くか村から出るか道を選ぶことになる、とか。
しかし、それは『スキル』及び成人することに対しての扱いだ。俺が得た『スキル』、【勇者】について教えてくれるのは、彼女だ。
「では、私はこれで。何人か兵士を残していくので、困ったことがあったら彼らに」
「はい、ありがとうございます!」
そう考え事をしているうちに、リデューダさんと大人たちとの会話は終わり、リデューダさんは馬に跨がり、村を出る。
……本人に聞くことじゃなかったけど、あの人何歳なんだろう。前世じゃ約七年経っても、ほとんど見た目が変わっていなかったが。
「さ、みんな。動けるものは、村を元に戻すぞ!」
「おぉ!」
モンスターの脅威が去っても、それで全てが終わったわけではない。むしろ、村を元に戻すという、大変な作業も残っている。
大人たちは、動ける人は村の再興に取り掛かる。ここで、『スキル』が役に立つ。例えば物を浮かせることのできる【念動力】、例えば壊れた壁を直せる【復元】。
動けない者もまだいる。それに、力仕事が得意でない者。そうした人たちは、兵士の付き添いで周辺をパトロールすることに。もう大丈夫だとはいえ、念の為にだ。あれだけのことがあったのだから。
結局、周辺にモンスターはいなかった。そこで、一つ疑問が生まれる……一年前のコアウルフの件から、大人たちは以前よりパトロールを強化した。しかし、異変はなかったのだ。
あれだけのモンスターの群れが襲ってくるなら、ここ数日でなんらかの前触れがあってもいい。だが、異変はなかった……まさか、いきなりモンスターが湧いてきたわけでもあるまいし。
「モンスターが襲ってきた理由……ちゃんと、今回こそは調べたいな」
前世では、調べたいと決意はしても実行はできなかった。その前に命を落としたからだ。
今回は、もう失敗しない。必ず生き残り、真相を暴いてやる!
「さて、俺も手伝うとするか!」
「ぼくもー!」
大人たちには、子供は休んでいろと言われたが……そういうわけにも、いかない。少しは、手伝えることだってあるはずだ。
後ろを着いてくるディアと共に、村の再興を手伝った。
――――――
そして、時は流れて……二年後。俺は、十歳になっていた。村は以前のように元通り……とまではいかないが、だいぶ元の姿に戻っていった。
いくら『スキル』があっても完璧には元には戻せないし、壊された部分が思いの外傷が深かったところもある。
育てていた野菜や植物は踏み荒らされ、そういったものは元に戻すのになかなか苦労した。たった数時間の暴動が、二年もの間傷を残している。これが、戦いだ。
それでも、人間というのはたくましい。あんな目にあっても、こうして一生懸命生きているのだから。
「……もう、こんな時期か」
さて、俺は十歳になった。そして、この時期こそ、俺にとっての転機の一つとなる。
その日は、突然訪れた。ディアが初めてこの村に来てから五年、毎日ではなくとも頻繁にこの村に訪れていた。
だが、ある日……唐突に、ディアは来なくなったのだ。
『またね、ロア!』
そう言って、最後に見たディアは笑っていた。その言葉を聞くに、ディア自身、それが最後の訪問になるとは思っていなかったのだろう。
ディアと同じ村の大人に聞いたら、どうやら家族ごと国……王都へと引っ越したらしい。理由はよくわからないという。それ以上の真相を知ることもできず、俺は悶々とした日々を過ごすことになる。
結局ディアとはそれ以降、会うことはなかった。ディアから会いに来ることも。そして、この経験が俺を、王都へ行きたいと思わせる要因の一つとなったのだ。
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