健康(しか取り柄のない)令嬢の白豚王子育成記計画【短編版】
前世は病弱で、二十歳そこそこで死んで異世界転生。主人公は健康な十五歳の美少女リイナ=キャンベルに。今度こそ『漫画のような恋がしたい』という夢が叶うと浮かれたリイナだが、肝心の婚約者が豚そっくりの醜いエドワード王子だと発覚する。エドワードことエドも性格は悪くないようなので、リイナは彼を理想の王子にすべく大改造することを決意。『リイナ』を溺愛しているエドも、「リイナが望むなら」とそれに同意する。
しかしリイナに特別な力はなく、貴族が使える魔法も使えない。前世での知識も、雑誌で得た胡散臭い話ばかり。それでも運動、食事制限、発声練習等々エドに懸命に働きかけ、ときに口説かれながらもエドは見る見るイケメンになっていく。
ある日、リイナはエドとダンスパーティに参加することに。リイナはダンスが踊れないが、エドが何度も練習に付き合ってくれる。そして衣装合わせの際、リイナはエドの邪魔な髪を切ることに。初めてエドの目をまともに見たリイナは、彼の甘い言葉と予想以上のイケメンに怖気づき、その場から逃げ出してしまう。
本番当日、見た目言動すべてが完璧の王子になり、会場でちやほやされていたエド。彼はリイナにも王子的な振る舞いをするが、ダンスに失敗するリイナを完全にフォロー。しかし控え室で素を出し「会えなくて寂しかった!」と号泣する。そんなエドを見て、リイナも彼に釣り合うような令嬢になろうと決心。
だけど、それは予想以上に困難だった。元から前世と転生してからの記憶しかないリイナには、この世界の常識がない上、転生前の『リイナ』は聖女と謳われるほどの人格者。『リイナ』に政治的アドバイスをもらいに来た客人にトンチンカンなことしか言えず、途方に暮れる。それでも勉強を続けていると、リイナは風邪を引いてしまった。看病に飛んでくるエドにつきっきりの看病され、今度はエドが風邪を引いてしまう。
「いくら健康でも無理はダメだね」
そしてリイナとエドは「頑張りすぎないこと」と約束の指切りをした。「嘘吐いたら婚約破棄」と、冗談半分の約束をして。
エドの短期留学が決まる。前日に教えられたリイナは怒り、「ラブレターをたくさん送ってください!」とねだる。それにエドは大歓喜。毎日一日三通届くことに。あまりの頻度に、リイナはエドの食事改善に助力もらった新人料理人ショウに相談。しかし、悩んでいる様子のショウから良い答えはもらえない。結局、返事を一通も送れなかったリイナは、帰ってきたエドに責められ、しかもショウとの浮気を疑われた。そして一方的に「しばらく距離をおこう」と言われてしまう。
一月以上家に引きこもっているリイナに、ショウから差し入れのお菓子が届く。そのお菓子を食べようとした時、いつも窓辺で遮っていた小鳥に横取りされる。すると、小鳥は死に絶えた。死に絶えた小鳥からエドの声が聞こえる。「全部教えてあげるから城においで」。ずっとリイナは小鳥を介してエドに監視されていたのだ。
城で待っていたのはエドとショウの二人。しかし、エドは少し太っていた。エドはリイナとショウが転生者であることを知っていた。リイナが『リイナ』でないことを。ショウはリイナに土下座して謝罪する。盗賊からリイナに毒を仕込むように脅されており、そのためリイナに近づいたこと。しかしリイナは許す――初めてできた友達だから、と。そんなリイナに、エドは告げる。
「彼を罰さないなら、それは次期国妃として示しが付かない。その決断ができないなら婚約破棄する。君に国妃は相応しくない」
涙を堪えて立ち去るリイナに、エドは「頑張りすぎないって約束したじゃないか……」とこぼす。
夜。リイナは『リイナ』の父親に自分が『リイナ』ではないことを話しに行く。しかし、父親も娘の魂がすでにないことを知っていた。それでも「娘の身体を持つきみを簡単に切り捨てられるはずがない」と告げた父親は、リイナを「きみも娘だ」と抱きしめる。その時、凶報が届く。エドの呼吸が止まった、と。
慌てて城に向かうリイナ。泣きながら「あなたが好き」と本音を告げると、エドが号泣し始める。呼吸が止まった原因は無呼吸症候群。リバウンドを叱るリイナに、エドは語る。リイナと会えなくなった寂しさで過食してしまったとこと。元から太っていたのは、まったく自分に興味を示してくれなかった『リイナ』に少しでも構ってもらいたかったから。自分に一喜一憂してくれるリイナに本当に惚れていること。それでも婚約破棄を申し出たのは、リイナが自分の婚約者として無理をしていると思ったから。
そして、二人は想いを確かめ合う。
後日、リイナは再び痩せたエドと父親とひっそり『リイナ』の墓を作り、彼女に「リイナとエド二人の育成計画」を相談する。ハッピーエンド。
とびらの様「あらすじだけ企画」参加作品。
企画通り、既存作『白豚王子をプロデュースして勝ち組令嬢めざします!』改稿案のあらすじでした。2000文字余裕で収まる……思っていたわたしが甘かった……。