第7話
周りから言われている事を聞かされてから一週間が経ったが、アタシは今までと同じように周良君と接していた。
アタシの中の存在もそれからは何も言ってこなかったから、さして気にする事も無く過ごしていた。
でも、それがずっと続くわけがなかった。
いつも放課後は教室に残っているのも周良君は知っていて、ずっとアタシの暇潰しに付き合うように話しかけてくれた。
今日もそうなると思って教室で待っていた。
そして、いつものように周良君来て、話しかけようとした時に声が響いた。
『悪いな』
その言葉が聞こえたと思った瞬間にアタシたちは入れ替わっていた。
戻ろうとしても強制的に入れ替わられた所為で戻れなかった。
アタシがどれだけ叫んでも、まるで聞こえないように無視された。
「緑、待った?」
周良君は気付かずにいつもみたいに話しかけてくる。
「別に待ってた覚えもないけど」
もう一人のアタシがアタシの口調をまねて淡々と話す。
「緑、機嫌悪い?」
「別にそういう訳じゃないわ。それより言っておきたい事があるの」
「言っておきたい事?」
周良君は分からないといった感じだったけど、アタシはピンと来てから必死で言わないでと叫んだ。
だけど、それは叶わなかった。
「アタシにもう付き纏わないで」
「……何で?」
周良君は言われた瞬間は凄く驚いた顔をしたけど、直ぐに真剣で冷静な顔をして聞いてきた。
「分からない? アタシは今まで受験の為に頑張ってきたけど、武井君と一緒に居たら評価が下がるのよ。それって凄く迷惑なの。だから、付き纏わないで」
きっと言われた周良君より、今こうして内で聞いてるアタシの方が呆然としていながらも凄くショックだと思う。
「そうか。そう、だよな。今まで悪かったな」
周良君はそう言うと教室を出ていった。そしてアタシは元に戻っていた。
アタシはその場に崩れ、床に手を着いた。
「何で、なんであんな事言ったの?」
アタシはもう一人のアタシに聞いた。
『何でて、お前だってこれで成績とかに影響したら嫌だろ?
で、なかなかお前が言わないから俺が代わりに言ってやったんだ』
「アタシはそんな風に言う事も言われる事も望んでなかった!」
叫ぶように言うと、もう一人のアタシはごめんとだけ言って黙っていた。
放たれた言葉は言う前には決して戻らない。
だからこそ、こんな事を勝手に言ってほしくなかった。
「謝るくらいならこんな事勝手に言わないでよ」
アタシはそう言いながら頬に生温い液体が伝うのを感じた。
そんな中、もう一人のアタシが心の中で傷付く音を立てているのが聞こえた。




