第6話
数日が経ち、その間もずっと周良君はアタシに付き纏っていた。
なんとなくそれが慣れてしまい、周良君とも普通に話すようになった。
流石に授業をサボるような事はしないけど、時々、周良君に連れられて屋上に行ったりしている。
その所為で噂が立ってるなんてその時は気付かなかった。
『なあ、最近あいつと仲良いせいで教師からはかなり悪印象もたれるらしいぞ。
それに他の生徒たちの間でも、あいつと一緒に居る事が多いからって裏では何か悪い事してんじゃないかって言われてるんだぞ』
そう言われて初めてそう言われてる事を知った。
『あんまりあいつの近くに居てたら今まで積み上げてきた評価が全部なくなっちまうぞ』
それは困る。今まで校則違反も殆どせず、成績も上位で保ってきた。とは言っても、運動神経はそんなによくないから体育の成績は真ん中くらいだけど。
「どうしたんだ、緑?」
中の声に耳を傾けていると、周良君が心配そうな顔をしながらアタシの顔を覗いてきた。
「な、何でもないよ」
慌ててそう答えると、周良君は納得していない顔をしていたがそれ以上は聞いてこなかった。
周良君は最初はアタシが聞かれたくない事も平気で聞いてきたけど、今では聞かれたくない事は聞かないようにしてくれている。
だからこそ居心地がよくなっていったような気がする。
『おい、さっき俺が言ったこと忘れてないだろうな』
アタシは心の中で頷いた。でも、居心地がよくなった場所は手放したくない。
だって、アタシの居心地のいい場所は少ないから。なのに、手放してしまったらアタシはより居心地の悪い所で生き続けなければいけなくなる。
それは辛すぎるから、手放したくない。
そんな事を思っていたら、アタシの中から舌打ちが聞こえた。
でも、その理由も分からず、その時は放っておいた。
それが間違いだったとその時は気付かなかった。




