第4話
家に入るとアタシは直ぐ様自分の部屋に行き、鍵も閉めた。
そして、勢いよくベッドに倒れこんだ。
『今日はえらく大変だったな』
「まさか昨日のを見られてるとは思わなかった」
『そうだな。やっぱり、外では話さない方がいいんだろうな』
「そうね……」
なんとなく寂しさを感じてしまう。それに気付いたように向こうが声を掛けてくる。
『寂しがんなよ。別に二度と話せなくなるわけじゃないんだし』
「ん、そうだね」
ほんの少し笑みを浮かべると、何となく安心した所為か、瞼がゆっくりと下りてきた。
『お休み』
「うん、お休み」
そう言うと完全に意識は沈んでいった。そして、いつもの光景が広がる。
『よう、ちゃんと眠れたみたいだな』
アタシがその言葉に頷くと、声をかけた本人が目の前に立っていた。
その人はもう一人のアタシ。でも、見た目は全く違う。
その人物はアタシと同い年くらいの男の子で、顔は何処にでも居そうな平凡なものだ。
この人はアタシと同じように成長している。アタシが幼い頃はもちろん幼かった。
いつの間にか側に居てそれが当たり前だった。だから、今更離れるなんて考えられなかった。
だから、これを変だと言われるのは本当は苦痛でしかない。
だって、アタシにはこれが当たり前なんだもん。
そう思って俯いていると、ポンポンという感じにアタシの頭を撫でてきた。
「何?」
『落ち込んでるような、辛そうな感じだったから』
「アタシの事は何でも分かるって感じがする」
『それは無理だな』
知ってる。だって、アタシたちはそれぞれ独立した存在のようなもので、意思も別々に持っているから、言わないとお互いの事は分からない。
でも、長い間側に居るから他人よりはお互いの事をよく分かっている。
そして、感性も近い所がある。だからこそ、余計にお互いの事が分かる。
「ねえ、君は周良君の事どう思った?」
『俺は嫌いなタイプだな。人の事を考えずに強引に物事を考えるとかマジで無理』
「そっか~。まあ、アタシも苦手だなぁ」
だよなという声を聞いて、アタシはクスクスと笑った。
アタシたちはやっぱり似てると思いながら側に居た。
『なあ、やっぱり俺が居ないほうがいい?』
「何で?」
『昔みたいな目に遭いたくないだろ? 俺が居なかったらあんな目には遭わなかったはずだし』
「でも、側に居てくれるからこうして話す事だってできるし、アタシはこうしていてくれるのが嬉しいんだよ?」
アタシがそう言うと、柔らかく微笑んで頭をワシワシと撫でなれた。
少し力は強かったけど、それでも気持ちよかった。
兄が居たらこんな感じだろうかと思う。実際、アタシは本当は双子だったらしい。
でも、片割れは生まれてはこなかった。だから、君はその片割れじゃないかと思う。
『もし、辛かったら言えよ? 流石に全部は分からないし』
うんと言って微笑むと、今度は優しく撫でてくれた。
『もうそろそろ戻った方がいいな』
「うん、そうだね。じゃあ、またね」
アタシが手を振ると振り返してくれた。それを見ながらアタシは眠りから覚めた。
目を覚ますと何となく気怠さが残る。多分、普通の人より眠り浅いんだろう。
それでも、気持ちは満たされるから眠っていたいのが本音。でも、それが許されないから仕方なく目を覚ます。
それにしても、昔の事と言われた瞬間にまた思い出すとは思わなかった 。
いまだに忘れていない。忘れてしまいたいけど、引きずっている事を思い知らされる




