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殺し屋兎と灰色の鷹  作者: 如月雪人
切り裂きジャック
33/36

友達

 水樹から送られてきた写真や資料などを眺めていた橘。

「これは……全部大和君の写真と資料か」

写真にはボロボロな幼い姿の大和が写っており、資料には大和くんを水に沈めた、暴力を振るった、などと書かれている。

 橘と初めて出会った時の大和は、ボロボロな姿で倒れていた。

自分に会う前は実験施設で酷い仕打ちを受けていた、と言う事なんだろうか。

「許せない……大和君をこんな酷い目に合わせるなんて」

本当なら今すぐにでも施設に殴り込みに行きたいが、ローグは強敵だ。もっと作戦を練らなくてはいけない。

「クソッ!もっと俺にも格闘術とかが使えれば……」

自分は大和みたいに接近戦等が得意ではない。

自身の頭脳を活かして隙をついたりしながら素早く倒すのが橘の戦闘スタイルだ。

「誰かに教えてもらうか……?」

そう考えていた時、ふと1人の男の姿が思い浮かぶ。

「……椿」

 しかし、彼には自分が殺し屋をしている、とは言っていない。

一般人から格闘術を教えてほしい、と言われても相手にはしてもらえないだろう。

「う〜ん、難しいなぁ。でも他に頼める人はいないしな」

とりあえず電話してみるか。そう思い、椿に電話をかける。

 数コールなった後、もしもし、と不機嫌そうな声が聞こえた。

「あ、椿かい?ちょっと頼みたい事があって」

『何だ。面倒事ならごめんだぞ』

「私に、格闘術を教えてほしいんだ」

『……は?格闘術だぁ?どうしてそんなモン。一般人には必要ないだろ。それとも、何か理由があるのか」

「まぁ……うん」

『……ハッ。分かった。いいぜ。いつがいい』

「なるべく早く教えてほしいんだ」

『1番早いと明後日か?準備できたら連絡くれ。迎えに行く』

「ありがとう、椿」

『手加減はしねぇからな。覚悟してこいよ』

「ふふっ。うん!」

通話を終了し、ほっとする。

椿に何かお礼をしなくては。

「甘いものでも買いに行くかな」


 行きつけのデパートに来た橘。

迷わずチョコレートが売っているコーナーへと向かう。

週末はよくここで自分へのご褒美としてチョコレートを買っているのだ。

「私のおすすめでいいかなあ、椿の口に合うといいんだけど」

 ふと、ポケットからスマホを取り出して電源をつける。

学生時代、椿と一緒に撮った写真がロック画面に表示されていた。

何をやらせても優秀な成績を残し、優秀が故に周りから距離を置かれていた椿。

そんな彼の、1番の友達は自分だった。


「……ねぇ、椿。また昔みたいに戻れたらなって、ずっと思ってるんだ。ワガママ、かなぁ……」

返答の無いスマホの画面に語りかける。

本当は、ずっと友達でいたかった。

でも、椿を裏社会に巻き込みたく無かったのだ。

だから、友達をやめよう、と椿に言った。

『椿?』

「……ん?」

椿、と名前が聞こえ、振り返る。

すると、黒髪長髪の男性が立っていた。

「あ、すいません……知っている名前が聞こえたので、つい」

「椿を知ってるのかい?人違いじゃないのかな」

「俺の知っている椿は警察官でヘビースモーカーな奴です」

「一緒だね。となると……椿の知り合いか」

「仕事で一緒なんです。ただ、彼とはよく喧嘩するんですよ」

「仕事、って事は、君も警察?」

「はい。刑事をやらせてもらってます」

そう言うと男性は名刺を差し出してきた。

名刺入れから名刺を出し、自分も相手に渡す。

五十嵐千隼いがらしちはや……ふふ、かっこいい名前だね」

「ありがとうございます。……あの、昂鷹さん。失礼を承知の上で聞きたいのですが、椿とはどう言う関係で?」

「椿とは幼馴染でね。小さい頃からずっと一緒だった」

「幼馴染、ですか」

「うん。一緒に遊んだり勉強したり、楽しかったなぁ」

悲しげに目を細める橘に、じっ、と橘の顔を見つめる千隼。

「ねぇ、五十嵐君。椿の事は、嫌い?」

急にそう言われ、千隼は返す言葉に困る。

ここで嘘をついてもしょうがないな、と思い、本当の事を言うことにした。

「……嫌い、です。喧嘩しかしてない」

「そっか。でもね、五十嵐君。椿は、きっと君の事を大切に思っているはずだよ。どうして君が椿の事を嫌っているのかは私には分からないけれど、椿はすごく優しい人だ。それを知っていて欲しいな」

椿は橘の事をとても気遣ってくれていた。

無理をするな、少しは休め、といつも言われていた事を思い出す。

みんなから無理するなと言われているな、と橘は少し苦笑する。

その言葉を聞いた千隼は、納得してないような顔をしつつ「……わかり、ました」と頷いた。

「ありがとうね、五十嵐君」

「こちらこそ、ありがとうございました。椿について、少しでも知れてよかったです」

一礼すると、彼は歩いて去って行った。

「さて、チョコレート買って帰ろう」

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