何でも屋
このところずっと晴れてるな、なんて思いながら歩く昼下がり。
橘一雅は1人、当てもなく散歩していた。
「オレ的には曇りの方がいいんだけどな」
着信音が聞こえ、スマートフォンを見るなり一雅は舌打ちをした。
画面に、一雅が一番会いたくない人の名前が表示されていたからだ。
渋々電話に出ると、やはり依頼の話だった。
『よう。元気か?まぁ、この電話に出るってことは元気ってことなんだろうが』
こいつの声を聞きたくない。
出来る事ならば、もう二度と聞きたくない。
「無駄なおしゃべりはいい。さっさと用件を言って消えろ」
『酷い言われようだなぁ。俺がわざわざお前の為に依頼を探してやってるってのに』
「こっちは依頼を探せ、なんて一言も頼んでない。お前が勝手に……」
自分は、弟と幸せに暮らせればよかったのだ。
なのに、あいつがその日常を奪った。許せない。
『……それ以上失礼な口を聞いてみろ。お前の弟がこの世から消えるぜ。出来るだけ苦しんで死ぬようにしてやるよ。どっちがいい?俺の命令に従うか、弟が消えるか』
こんな汚い手を使う奴の元で働いているのだと思うと、吐き気がする。
しかし、弟がいなくなるのは、一雅にとって、辛い事だった。
「……わかった、オレが悪かった。で、依頼はなんだ」
本当は謝りたくなんてないが、仕方ない。弟の為だ。
『そうこなくっちゃな。依頼内容は、人探しだ』
「人探し?探偵にでも頼めばいいだろう。どうしてそんな依頼を受けたんだ」
『なんでも、そいつが大金持ちらしい。見つかれば大金がもらえる』
「金のためか。くだらん」
『はっ、言ってろ。後で詳細送るから、よろしくな。探偵サン』
性根の腐った男だ。そう毒づいて、電話を切った。
あいつさえいなくなれば、全てが解決するのだ。
いっそのこと、自分であいつを始末してしまおうか。
でも、自分にあいつを殺せるほどの力があるだろうか。
そう何度も自問しているが、結局のところ、まだ結論を出せていない。
「どうしてこうなってしまったんだろうな」
大きなため息を吐き、送られてきた依頼メールを確認する。
『山岡達也という男を探してくれ。頼んだぜ。』
画面には、達也のプロフィールと写真が添付されていた。
「27歳で社長か。随分と若いんだな」
社長と聞くと、どうしても弟の姿が浮かんでくる。
弟は元気にしているだろうか。
ちゃんと体調管理をしているだろうか。
蓮に、よろしく頼むと言ったが、それでも心配だ。
——悩んでいても、始まらないか。
一雅は聞き込み調査を開始した。




