とある夜
ザァザァと雨が降り頻る夜。街灯がチカチカと点滅している濡れた道に、2人の男がいた。
一人はいかにもサラリーマンな見た目の男。もう一人は拳銃を持った黒髪の男。
サラリーマンは、血を流して倒れている。それもそのはず、たった今殺されたのだ。
拳銃を持った男——大和は、ため息をついて自身が持っていた拳銃を投げ捨てた。
「……使いやすかったんだがな。仕方ない」
自分が殺した相手を冷たい目で見つめ、くるりと踵を返しもと来た道を歩く。
『お疲れ様。どうやら任務は成功したようだね』
声のする方を見やると、人当たりのよい笑みを浮かべたスーツ姿の男性が立っていた。
「来ていたんですか。橘さん」
「少し様子を見に来た。君が失敗するとは思えないけれど一応、ね」
「俺だって、失敗するときくらいありますよ」
「今までにそんな事はなかったろう?会社でも、この仕事でも」
「まぁ、はい」
スーツ姿の男性はくすっと笑ったあと、声のトーンを落として話した。
「大和君。わかっているとは思うけど……」
「他言無用、ですね。わかってます」
「うん。さて、飲みにでもいくかな」
「えっ。今からですか」
「大和君も、一緒にどうだい?仕事終わりは格別だ」
「そう、ですね。つきあいます」
そんな話をしながら、2人は夜の暗闇に溶け込むようにさって行った。