5、サトミと腐れ縁
そうしてようやくロンドの局に着いた。
ちっこいのはとっくに着いてて荷物降ろしてる。
文句言ったけど、完全無視継続。
荷物降ろしたら、着替えに家に帰るらしい。
やっぱりアレは、自分でも浴びた血で気持ち悪いから機嫌が悪かったんだろう。
そういうことにしよう。
デリーじゃ、あんな失礼な奴はいないわ。
ポリスには一応連絡したけど、簡単な事情聴取で終わる。
ちっこいのがアジトまで追っていったけど、そこはまた明日聞きに来るらしい。
ロンドの人たちは、ちっこいの以外はとても優しくて、もう日も落ちてるので明日の早朝デリー行きのロンドの人と一緒に帰ることになった。
「よくポストアタッカーになったわよねえ。」
エクスプレスの事務してるキャミーがコーヒー出してくれる。
持ってきた荷物は、結局半日遅れで明日の処理になった。
いくつか手紙が血で汚れたらしいので、お詫び状を付けるらしい。
あのちっこいののせい……というか、きっと私が元凶。
くっ、落ち込む。今度来る時は無事に済みますように。
「まあ、この腕章に憧れるって感じ? セシリーちゃんにも勧められたし。
あたしセシリーちゃんとは前から友達なの。
でも〜、一人で荒野渡るの思った以上に大変よねえ。」
フフフ……と、なんか慈愛の微笑みが帰ってくる。
「他の奴ら強いからさ、きっと………標的になるよね………」
「え………」
そ、そっか………確かに………
しばらく、時間がそこで止まった。
「今夜うちに泊まりなよ。セシリーのとこに行く?明日のデリー当番誰だっけ?」
「んー、でも朝早いんでしょ?だったら、明日デリー行きの人んとこにお世話になったがいいかな。」
「それもそうね、一緒に出ればいいし。」
バタンと、ドアが開いてあのちっこいのが着替えて帰ってきた。
「なんだ、まだいたのか、クソ女。
キャミー、あの服捨てた!服代でる?なあ、出る?」
「サトミ〜、失礼でしょ?出すわよ。気持ち、古着代ぐらいね。
だから防弾スーツ着なさいって言ったでしょう?
あれなら局で洗濯出すのに。なんで意地でも着ないのかなあ。
明日朝は誰?デリー行き。」
「俺。」
おれ?ってことは、明日もこいつと……?
「げえええええええええええ!!!」
あたしは絶望した。
とは言っても、今夜寝るとこ確保せねば。
就業時間も終わりに近づいて、アタッカー達も帰ってきてみんなそろうと、だんだん言い出しにくくなってきた。
よりによって、なんで明日がちっこいのなのよう〜
でもさ、こいつだからイヤとは言い出すのも女がすたる。
こっちも軍上がり、銃抱いて山の中で一晩寝たことだってあるのよ。
フフフ……さあ、どう出るちっこいの!
みんなとソファーに座って超激甘コーヒー飲んでる、ちっこいのに後ろから声かけた。
「ねえ、ちっこいの、頼みがあるんだけど〜」
「お前が俺をそう呼ぶ限り、俺はお前の声、一切耳が拒否する。」
「え〜、だって、みんなちっこいのって呼ぶんだもん、なんであたしだけダメなのよお。」
それって、差別じゃん?
「レイルちゃん、レイルちゃん、ちょ、こいつ激怒する前にちゃんとサトミ様って呼んであげてよ。
俺、怖すぎるから。」
ムウッとむくれるあたしに、向かいのダンクちゃんが声を潜めて手招きする。
「え〜、そんな敗北宣言みたいでやーだー。」
いやんいやんとクネクネするあたしに、後ろからセシリーがでっかいお尻でドンと押した。
「レイル、あんた相変わらず脳みそ空っぽねえ。
あんたのその鈍感さは、まあこの仕事に向いてるのかもしれないわ。
いいから頭潰される前にサトミって呼ぶのね。
ほんとあんたって怖い物知らず。
え〜? あたしは王子でいいのよ、あたしが王子って決めたんだから。」
セシリーが、コーヒー入れて冷蔵庫に行くと、バターをひとさじコーヒーに入れた。
バターがじわっと溶けて、コーヒーの表面に浮く。
それをズズーッと吸って、なんだか幸せそうにあたしに親指立てた。
ちぇっ
「なー、ガイド、なんでアタッカーって普通の女がいないんだろうな〜。」
サトミがため息交じりに真っ白なコーヒーに、また砂糖を入れた。
ガイドがサッと砂糖の容器を取り上げる。
砂糖めっちゃ入れてるけど、あれ、溶けるのかしら。
「お前も普通じゃ無いし、とんとんじゃネエの? まったく、砂糖入れすぎって何度言わせるんだ?」
「は? 俺普通だし……うーん、いや、普通と思ってたんだがなあ。」
「普通の奴は、銃向ける奴を友達と呼ばねえだろ。」
「仕方ねえ、あいつには俺の他に友達のなり手がねえもん。」
「なんだよそれ、ほんとお前って変な奴。」
お仲間で会話が弾んでる。
えーと、………
そうっと、あらためて声かける。
「あのー、サトミちゃん?」
「ちゃん?」
「ねえ、今夜家に泊めてくんない?」
「「 はあああ???? マジーー??? 」」
「マジーー」
みんなの視線が、あたしのプリティな顔に集中した。
レイルの中で、サトミをどう呼ぶかの葛藤がw
彼女はサトミの戦闘シーンを見たこと無いので、ただただ舐めてます。
ちっこくて可愛いくらいしか思ってません。