表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
速達配達人 ポストアタッカー 2 〜LOVE LOVE ダーリン 策略だらけの一夜〜(表紙絵付き)  作者: LLX


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/21

13、大刀演舞の戦い

シャーンッ!


シェンの両手にある二振りの大刀が音を立て、弧を描いて空を切る。

サトミは彼の一連の演舞のようなルーティンめいた仕草を、刀で肩を叩きながら眺めていた。


「めんどくせえ奴だなー、まだかよ〜」


そうしている間に、どんどん周囲にはヤジ馬が増えていく。

一時のそうしたルーティンにヤレヤレと待ちくたびれたように、サトミが大きくあくびした。


「ふぁ〜〜、ココア飲みてえなー。」


シャッ!


舐めた様子に隙を逃さず、上段からシェンの右手の大刀が迫る。

それをひょいと身体を引いて避け、サトミが目を見開きニッと笑った。


「よし! 待った分、楽しませろよ!」


間髪入れず、左の大刀がサトミの腰に入る。

サトミは風のように早いその刃をポンと飛んでかわし、刀の峰で叩いて後押しする。


カーン!


「うぉっ!」


叩かれてビュンと加速した剣に振り回され、シェンがよろめき立て直した。


「  な!  に!  」


「遅い、遅い、まだ準備運動かよ、やる気でねえ!」


「この!」


ピュン!


横から胸を狙う。

サトミは身体を反らして難なく避け、また峰で大刀の面を叩く。


カーン!


「くっ!!」


叩かれるたび刀に振り回され、シェンの顔から余裕が消えた。


ビュンビュンッ!

シャッ!


振っても振っても紙一重で避ける。

異様に身体が素早く柔らかい。


「もっとさー、銃弾くらい早く出来ねえかなー。俺には止まって見えるぜ。」


「くっ!!」


ピュンッ!

横から来る大刀に、バンッと下から刀身を蹴り上げる。


「ひゃはは!」


続けてくるもう一閃を、今度は上から蹴り降ろした。


「うぉっ!こ、この!」


シェンがよろめく身体を横に流し、よどみなく態勢を戻して再度振るう。

息を整え集中し、気をこめ、全身の筋肉を使って全身全霊で下から刃を向ける。


この一閃を!


サトミが迫る大刀を拳で叩き落とし、クルリと舞ってシェンの後頭部に蹴りを入れた。


「ぐっ!」


蹴られた拍子に彼の背後から大刀を振る。

サトミが大きく身を伏せ、男の膝を後ろから蹴った。


「おおっ!」


シェンの膝ががくりと折れ、勢い余ってドスンと膝を付く。

ドッとギャラリーが笑い、シェンは今まで感じたことのない屈辱に震えた。


何という……!これは……感じたことの無い……!!


「貴様、何故その刀を使わんのだ!」


言われてきょとんとサトミが笑う。


「だって、俺が刀振ったら1秒で終わっちまうじゃん?

最近、こう言う状況滅多に無いからなー、一瞬じゃもったいねえよ。」


思わぬサトミの本心に、シェンがギリッと歯を噛みしめる。


これは、神童か。ならば!!


立ち上がり、目鞍滅法太刀を振り回す。

大刀の風切る音ばかりが辺りに響き、ギャラリーがその鬼気迫る様子に息をのみ下がって行く。

しかし、相変わらずサトミの刀は肩に乗せたままで、シェンに向ける気配がない。

刃を右に、左に、上から下に。振り回しても、サトミは避けるばかりだ。

シェンは次第に頭に血が上る。


「貴様!その刀は飾りか!」


シェンの怒りに呼応して、ヤジ馬からも声が上がる。


「兄ちゃんやれよ!」   「真面目にやれー!」


サトミはやれやれと、ヤジ馬に目をやりながら、大刀を紙一重でよけてゆく。

ようやくシェンを向くと、とうとう刀を背に直してしまった。


「まぁ、そろそろ帰って寝るかな。」


「なにいっ!!!」


「準備運動にはウンザリだ、刀を汚す価値もない。貴様にはこれで十分だ。」


そう言って、ナイフベルトの小さなスローイングナイフと腰のサバイバルナイフを両手に逆手に持った。


「俺はお前より強い、これが答えだ。」


サトミが歩いてシェンに迫る。

シェンが焦り、右から渾身の力をこめて一刀を振る。


ギィンッ!!


初めて、サトミが刀を受けた。

逆手に持った小さな投げナイフ用のスローイングナイフで。


サトミの手はびくとも揺るがず、ただシェンの手に反動でビリビリとしびれが走る。


ギイイイイイイィィィィ……


合わせた刃を滑らせ、火花を上げながらそのまま迫る。


「うおおぉぉぉ!!!!」


左手の大刀を、サトミの胸に突く。


ガキッ!  シャーッ!!


サトミはそれをサバイバルナイフで受け、左に流して下へ一気に押さえつけ、刀身を倒してそれに向けて膝で蹴った。


 バキンッ!


シェンが大刀を折られて反動で後ろによろめく。

苦々しく唇を噛み、それを放って右の大刀一本で襲いかかる。


「くそっ!クソ、クソおっ!」


ビュン!ビュ、ビュンッ!


鬼気迫る顔で右に左にと振り回す男に、ギャラリーから恐怖の声が上がる。


「ははっ!切れたら負けだぜ、おっさん!」


サトミが面白そうにそれを避け、横から来る刃に真上からナイフを打ち下ろす。


バギンッ!


大刀の刃にスローイングナイフを打ち込まれ、そこから折れて刃先が飛んだ。

くるくる回りながら自分に向かってくる刃先を、ギャラリーのおっさんが呆然と見つめる。


死ぬ!


おっさんが一瞬、恐怖で白目になった。


カーンッ!


後ろから突然セシリーがおっさんを引き倒し、自分の銃でそれを叩き落とす。

それはまるで天から現れた、ちょっと太ったエンジェルガールだった。

普通、人にはルーティンがあります。

何かを心して始める時、例えばこの場合、一瞬で刃物で切られるわけですから、シェンの心構えみたいなものです。

ところが相手はサトミです。

彼の場合、ルーティンってなに?って感じw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?リッターは?妹に徒競走で敗けた? [一言] サトミそれ準備運動じゃなくて本気だ。 …失礼、突っ込まないといけないと思ったので。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ