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速達配達人 ポストアタッカー 2 〜LOVE LOVE ダーリン 策略だらけの一夜〜(表紙絵付き)  作者: LLX


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12/21

11、カジノ騒然

老人らしからぬ、張りのある声が店内に響く。

じろりとサトミと男達、そして台に寝っ転がるレイルを見回し、杖で床をつき、カンと音を立てた。

どうやらこいつがボスらしい。


「バスル、この騒ぎは何だ。

そもそもだ、このガキがここにいるのはどういう事だ。ここはカジノだぞ。」


オールバックのアニキ、バスルが慌ててボスの前に頭を下げる。

チラリと無言のサトミを見て、ニッコリ愛想笑いした。


「ガキは酔っ払いの姉貴を迎えに来た奴でして。すぐ返しますので、お騒がせしました。

おいっ!」


下っ端に目配せすると、若い男達が慌てて倒れた男達を奥に引っ張って片付け、レイルの服を拾ってサトミに突き出す。


「そら、こいつの服持っていけ。女は運ぶから。ほら!」


しかし、サトミはレイルの服をじっと見て、受け取る気配がない。

男は焦って引っ込めると、レイルの腹に乗せ彼女を抱えようとした。


「待て、クソ野郎ども。」


サトミの言葉に、ギョッとバスル達が目を剥く。

ボスは機嫌の悪そうな顔で、背を伸ばし顔を上げてサトミを見下した。


「なんだチビ助、わしが黙っているうちに帰れ。」


「あんたがここのトップか。丁度いい。」


「ガキの話なんぞ聞く気も無い、おい、叩き出せ。」


取り巻きの黒服にアゴで指す。

男が前に出てサトミに触れようとした瞬間、その腕をパンと叩いた。


「……はぅぁ?!」


男が奇妙な声を上げ、もう一度掴もうと腕を上げる。

が、その腕はあり得ない場所で曲がっていた。


「………ギ、ガァ、ア、ギャアアアアア!!」


黒服の男が腕を押さえ、よろよろと下がって尻餅をつく。

しかしサトミは、どう見ても軽く叩いたようにしか見えなかった。

怪訝な表情の男達に、サトミが言葉を放つ。


「俺に触れるな、俺は今、最高に機嫌が悪い。」


「きっさまあああ!!」


ザッと、サトミを知らない男達が周りを囲む。

サトミを知ってる男達は、すごすごとその後に隠れるように続いた。

銃を向けすごむ男達に周りを囲まれ、サトミが楽しそうに笑う。

普通とは違う、その異様な様子に男達がたじろいだ。


「クククク………いい……暇つぶしだ。


良く聞け! クソ野郎ども!!


この女は、酔って軍を首になった女だ。

二度と過ちは犯すまいと心に決めていたハズだ。

だが見ろ、この有様だ。

こいつが郵便局のアタッカーと知って、一杯食わせようとした奴がいる。

こいつは明日、早朝に仕事がある。だが、これじゃ明日は仕事になるかわからねえ。


つまりだ!!こいつの分も俺が働かなきゃならねえって事だ。

え?どういう事だ?! クソ野郎ども、俺の機嫌は最低だ!


貴様らには謝罪を要求する!!」


ぽかんと男達が顔を見合わせる。

首を傾げ、ひょいと肩を上げた。

サトミの頭に指でくるくる回して手を広げる。

やがて、一人が笑うとみんな笑い出した。


「フヒッ!クックック……」


「ヒッヒッヒ……」


「「  ハーッハッハッハ!!  」」


「 バカかこいつ!! 」


男達がゲラゲラ笑い出す。


「誤れって?お姉ちゃん、酔わせてゴメンねって?ヒャーッハッハ!」


笑い転げる男達の真ん中で、サトミが笑う。


そうかよ、それが答えか。


背に右手を回し、雪雷をすらりと抜く。

左手には、腰のサバイバルナイフを抜いた。

ギラギラと輝く刀身を見て、男達がすくんで息をのむ。


「さて、人生最後の大笑いだ、満喫したか。

貴様らは、謝罪の意味を知らないようだ。


その意味を知って、後悔しろ。


そして……    死ね!!  」


「 ふざけるな!ガキがぁ!! 」


一斉に、サトミに向けて男達が撃つ。

サトミはナイフで弾をはじきながら、刀の先でテーブルを跳ね上げて盾に、右端の男に向かって走った。


パンッ!パンパンパンッ!

パンパンッ!


キンキンカンキンッ!


キッキンッ!


「ちょっ!こっち来る……ぐぁっ!」


サトミが男を峰打ちして男の背後に身を落とし、自分の盾にする。


「あっ!ち、この野郎!」


「おらよっ!」


男がポンと死体を放られて、それを慌てて横にどける。


「うわぁっ!」バキッ!ゴキッ!


隙を突かれて脇腹を峰打ちされ、肋骨がイヤな音を立てて男が泡を吹いて白目になった。


「こいつ、撃て!撃て!」


「うるせえ、端から順だ!待ってろクソ野郎!」


パンパンパンパンッ!


倒れる男を掴んで盾にして、ソファーを飛び越え残る男に一気に向かう。


「ひ!ひいぃ!!」


サトミは飛び上がった瞬間、盾にした男をポンと放り、足で蹴って男たちにぶち当てた。


「わああっ!!」


二人の男が下敷きなり、その上に着地して壁際に並ぶ男達に向かう。


パンパンッ!パンパンパンッ!


「ひいい!」


ドカッ!ゴキッ!ビシッ!

「ギャッ!」  「ぐあっ!」


パンッ!キンッ


次々と峰打ちで撃ち倒し、銃弾を紙一重で避ける。

サトミは楽しむように次々と刀を向け、やがて立っている男が二人になった時、軽やかに舞ってルーレットに飛び乗り楽しそうに笑った。


「キシシシシ!!なんだもう終わりかよ、つまんねえ。」


パンパンパン!


キキンッキンッ!


「何で当たらねえんだよ!クソガキが!」


見回しても、あとはボスだけでとうとう、自分たち二人だけになってしまった。


二人の男が小さくなって、イヤな汗を流し苦々しい顔で銃を向ける。

撃っても当たらず、薄ら寒くて気味が悪い。


ただただ怖い。

いつの間にか、銃がガタガタ震えている。


「ぬるい弾が当たるかよ!ヒヒッ!」


笑うガキの不敵さに、ぜんぜん殺せる気がしない。2人の男がすくみ上がった。


「ボ、ボスーッ!!駄目です、逃げ…逃げて下さい!!」


老齢のボスが息をのみ、口から葉巻がポロリと落ちる。

一体どういう事か、何があったのか頭で整理が付かない。

どうして、一人のナイフ持ったガキが10人の銃で殺せないのか、理解に苦しむ。


「貴様……ナニモンだぁ!」


問われてサトミが刀を肩におき、サバイバルナイフを手の中でクルリと回してボスに向ける。

そして、すました顔でニッコリ笑った。


「速達のご用命でしたら、ロンド郵便局のエクスプレスにお任せ下さい。

俺たちポストアタッカーが、迅速にお運びします。


ま、てめえらクソ野郎からは、お茶代足して料金1000倍もらおうかな。」


「 ふ……ふざけやがって!! 」


ボスの顔が真っ赤にゆであがる。

額に青筋立てて、今にも倒れんばかりだ。


「ボス、お任せを。」


低い、野太い声が、ボスの背後のドアを開き、奥から聞こえた。


「シェンか、すまんな。刻んでやってくれ。」


「はい」


ぬっと、奥から両手に大刀を持ったチャイナ服のアジア系の大男が現れた。

サトミが嬉々として、べろりと唇を舐める。


「ははっ!面白えな。でっかい刀だ、雪よ刀だぜ?こいつは面白え!!」


サトミの目が、イキイキと輝いた。

死ね!

と言った後で、あ、殺したら駄目だった・・・

と言うわけで、すべて峰打ちするという優しさ。


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