陸上自衛隊特殊作戦群〜回想〜
2005年5月12日
千葉県某所
特殊作戦群駐屯地
IDカードを読み込ませ、厳重にロックされた扉を開いた。
軍用ブーツの足音が勇ましく聞こえた。
市街地用射撃訓練場に到着すると、そこには荒山卓弥群長と、見知らぬ男がいた。
荒山群長がいる・・・
それはまったく珍しく、何か重大なことがあると予感した。
「第二中隊揃いました。」
中隊長が言うと、荒山群長が男と話し出した。
「それでは、射撃訓練と近接格闘術、部隊同士での戦闘訓練を始める。」
群長が続けて言う。
「こちらは、昨年に発足した民間軍事企業の職員でイラク派遣部隊の部隊長である、福永薫さんだ。今日の特別訓練の指導を行っていただく。」
群長は、喋り終わると、手を前に差し伸べて福永薫に挨拶をするよう促した。
「どうも。ホワイト・ウォーター社で職員をやってます。福永です。今日の訓練、期待しています。」
戦闘訓練は激しかった。骨折をする者が出るという凄まじさだった。
私は、薬莢が手にあたり、火傷を負った。
私達のチームは、なかなかの好成績で、福永さんにも注目された。
今日の夜は、部隊のみんなに自慢するだろう・・・
そんなことを考えているときに、福永さんが私に喋りかけてきた。
「君は、人を殺せるか?」
あまりの一言に驚いたが、
「有事(日本に危機が迫ったとき)の際なら、敵を無力化せねばなりません。」
と答えた。
「ふむ、有事か・・そんなことがあると思うかね?」
たしかに無いだろう。
正直な話、もし何かあっても米軍や日本PMCが主力となる。
弾薬、人員の輸送や後方支援など、まるで立場が違う。
「興味があるなら、うちに来なさい。君なら高収入で雇うだろう。」