5.
ならば、さっそくやってみようということになって、三人は石段の前に集まった。
まず、初回のジャンケン。
三人は自分が提案した物を出したので、あいこになる。
2回目。
二人の男の子は考えた。パーとチョキはどちらも6段。ならチョキが強いのでチョキを出せばいいと。チョキが最強だと。
ところが、女の子が「グリコ」と3段上った。二人とも出したチョキが負けたのだ。
3回目。
また女の子が「グリコ」と言いながら笑顔で上った。男の子は、同じ手――チョキ――が通用しなかったことに悔しがる。
4回目。
今度は女の子が「チヨコレイト」と石段を踏みしめて上っていく。負けた二人とも、相手がグーを連続で出してきたから、どうせまたグーだろうと思い、パーを出したら裏をかかれたのだ。
グー2回とチョキ1回で9段と二人を大きく突き放した女の子が、両手を腰に当てて得意がる。
ここで男の子たちは、距離を一気に縮めたいため「チヨコレイト」で勝つべきか「パイナツプル」で勝つべきか、悩み始めた。
どちらも6段で、女の子との差を一気に詰めるためにそれらの勝利が必要なのだが、相手がまたグーを出すのか、連続してチョキを出すのかが読めない。
もしチョキを出すなら、グーのグリコで3段でもいいから差を詰める。ところが、そのグーを出すのを読まれて女の子がパーを出したら、決定的な差が付いてしまう。
さあ、どうする?
笑顔で万歳をする女の子との駆け引きが始まった。
三人は腕の振りに力が入り、声も大きくなる。
「面白くなったみたいじゃ。今日は、ここを上ってベンチへ行くのをやめるとするかのう」
そうつぶやいた老人は何度も頷き、凍てつくような冬の空に響く熱気溢れる子どもたちの声を背に受け、満足そうに立ち去った。