4.
「勝ってあの石段をズンズン上に行く。負けても、次に勝てば近づける。追い越せるかも知れない。どうじゃ。差が付いたり近づいたりの競争があった方が面白いじゃろう?」
老人の言葉に、三人はわかったようなわからないような顔をする。言葉だけでは実感がわかないらしい。
「チーズは……そう、チョコレートでどうじゃ? チヨコレイトにして6段進む。グリコよりも倍進む」
反対側に首を傾げた女の子が「グリコやめようかな」とつぶやいたが、老人は聞こえない振りをする。
元々、老人のアイデアは、グーチョキパーの一つを他と大きな差を付けて弱く見せて、その実弱くはないという形にしたかったため、「グリコ」を残したかったのだ。
一人の男の子が「なら、パインはパイナップル」と提案する。
「それじゃ5段じゃ。パイナップルはパイナツプルで6段進めばいい」
「なぜパイナップルじゃダメなの?」
「チョキを出したら6段、パーを出したら5段、グーを出したら3段なら、一番進むのはチョキになる。それじゃと、みんながチョキしか出さなくなるじゃろう?」
子供たちは顔を見合わせた。
「6段進むのが2つ、3段進むのが1つで、どれで勝つかの競争になるから面白いのじゃ」
その時、女の子が「えー!? それじゃ、グリコが3段だから負けちゃう!」と不満げな顔をして体をひねる。
「大丈夫、グリコでも勝てるのじゃ」
「ホント?」
「やってみればわかる。信じなさい」
老人は、目を糸のように細めて笑った。