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3.
石段の真ん中辺りでジャンケンをしていた三人が、老人の呼びかけに振り向いて駆け足で降りてきた。そして、歩道に降りると優しい笑顔の老人の方へパタパタと駆け寄って、顔を見上げた。
「おじいさん、何?」
快活そうな男の子が問いかけた。
「そのジャンケン、勝ったら2段ずつじゃ面白くなかろう。もっと数を増やせば、早く上に行けるぞ。例えば――」
老人は顎を上げて灰色の空を斜め上に見て、子どもたちが好きそうな物を思い浮かべる。
「グーで勝てば、グローブならどうじゃ」
すると、女の子が間髪入れず「グリコがいい」と提案する。
「なるほど。じゃあ――」
老人がまた斜め上を見上げてチョキとパーの言葉を考え始めた途端、
「チーズ」「パイン」
男の子が次々と笑顔で提案してきた。
「おいおい。それでは、差が付かぬ」
「「「さ、って?」」」
三人が一斉に首を傾げる。
「勝った者と負けた者との間のことじゃ。おんなじ数では、その差が大きく付かなくて、面白くなかろう」
「「「なんで?」」」