2.
一人は、おかっぱ頭の女の子。二人は、坊主頭の男の子。身長から五、六歳といったところだ。
石段の下に集まった三人が、何やら掛け声を上げて、互いに腕をリズミカルに振って突き出している。
「おや、ジャンケンでもしとるようじゃのう」
一人が2段上る。
またジャンケンをする。他の一人が2段上る。
またジャンケンをする。今度は二人が2段上がる。
「はて……」
ルールがわからない老人は、子どもたちを見つめながら近づき、動きをじっくりと観察した。
すると、どうやら、ジャンケンに勝った者が、何を出して勝ったかによって「グー」「チー」「パー」と言いながら2段ずつ石段を上がっていることがわかった。
「なるほど。勝ったものが2段ずつのぼっていく。そんな遊びが流行っておるのか」
謎が解けた老人は、ある疑問が湧いてきた。
「……ん? ということは、何を出しても勝ったら2段進むことになる」
三人のジャンケンの出し方は27通り。
自分がグーを出して勝つ組み合わせは3通り。パーもチョキも同じ3通りだから、勝つ組み合わせは全部で9通り。9/27=1/3。
つまり、何を出しても1/3の確率で勝利するジャンケンなので、何を出しても2段ずつ上るなら均等に上っていく。よっぽど相手が偏った出し方をしない限り、勝負が付く確率は誰もが同じ。
これでは差が付く感じがしないから、駆け引きもなくてあまり面白くない。差を付ける駆け引きがあるから面白いのだ。
しばし考えた老人は、頭の中でアイデアが光るとニコリと笑って、さらに三人へ近づいていき「おーい」と声をかけた。