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フリーター、魂を刈る。  作者: なつかし
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第27話 決着 アダム

 俺たちは、カルディナの造り出した異空間に引きずり込まれた。


「……なんだ、ここは?」

 研究者の男は、不思議そうに辺りを見渡す。合わせるように、アダムも周りの状況を検知しているようだ。

「フン、被害が出ないように配慮しているなら感謝する。だが、後悔しないことだ」

「鎌を持たない死神と侮っていたけど、全力でいくわよ」

 カルディナは鎌を構える。


「やれ、アダム!」

 研究者の男の命令と共に、アダムは物凄いスピードで突っ込んでくる。

 

 ガキィン!

 カルディナの鎌の刃とアダムの腕がぶつかり合う。火花が散り、お互いが引く様子がない。

 何度も何度もぶつけ合うが、アダムの腕は非常に硬く、刃を弾いて何ともないようだ。

 そもそも、死神の鎌の刃は肉体を傷つけることはできない。

 それを弾いているということは、特殊な素材を用いて、あのボディは構成されているということになるのか。

 今まで機械相手に、鎌を振るったことはないが……。


「くっ、効いてないの⁉」

「……」

「ハハハハハ! アダムのボディは、死神の鎌に対抗する特殊な素材で作ってあるのさ。その程度、造作もない!」

 アダムは、顔色一つ変えずに無表情のまま、カルディナの鎌を弾き返す。

 また、カルディナもアダムの拳を鎌でいなす。

 ほんの一瞬の隙に、カルディナは手のひらに小さな火球を作り出し、アダムの顔面に目掛け投げつける。

 アダムは少し怯んだが、カルディナの腹部にえぐる様に拳を打ち込んだ。そして、そのまま上空へ打ち上げる。

「カハァッ」

 カルディナは、空中高く舞った後、地面に打ち付けられる。


「カルディナ! くそっ、俺が相手だ、アダム!」

 俺は、アダムに向けて鎌を回転させ、吹雪を起こす。

 強烈な風と氷が、アダムに襲い掛かる。


「アダム! 怯むな!」

「……」

 アダムの動きが鈍くなり始める。ヤツも機械、急激に冷やされたことによって内部に影響を及ぼしたのだろうか。


「チッ、やむを得ん。アダム、出力を上げろ! 寒さぐらいで、止まるお前ではないはずだ」

「……」

 すると、アダムから湯気のようなものが出始める。氷が徐々に溶けていく。

 冷却し、凍らせるだけでは意味が無いということなのか。やはり、あのボディを破壊しない限り止められないのか。


 すると、カルディナが俺にサインを送る。一か八か、やってみるしかない。

 カルディナは小さな火球をいくつも作り出し、アダム目掛けて投げつける。

 アダムは右腕で、その火球を受け続ける。反撃の隙を与えないように、カルディナは鎌を振るうと炎の波がアダムの右腕に襲い掛かる。


「後はお願い! ユミル!」

「あぁ! 任せろ!」


 俺は、アダムの右腕に目掛け、猛吹雪を襲い掛からせる。

「フン、アダムにその程度の攻撃通用しないと……何っ⁉」

 研究者の男は余裕の表情から一変、目を疑った。


 バギィッ!

 何と、アダムの右腕が弾け飛ぶように砕けた。まさかと思ったが、熱した後に急激に冷やされたボディは、耐えられずに破壊された。

 アダムの右腕は使い物にならなくなった。これで大分俺たちに有利になったはずだ。


 ナイス! と、俺とカルディナは直に喜ぶ。しかし、まだ油断はできない。

「チィッ、小賢しい手を……」

「そろそろ諦めたらどうなんだ?」

「お前ら、アダムに鎌が無いと思っているな?」

「あぁ、だって見るからに持っていないだろ」


 すると、研究者の男の口角が上がる。

「ククク……ハハハハハ! 実に愉快だ!」

「何が面白い?」

「残念だが、アダムにも鎌はある。その左腕になぁ!」

 なんとアダムの左腕に鎌の機能が内蔵されているという。だから右腕で防御していたのか。


「もうコイツらに構うな、遊びは終わりなんだよ! アダム、お前のやるべきことを最優先にするんだ!」

 研究者の男は苛立つ。俺たちが、眼中に無くなったようだ。

 そして、頭上を見上げ、何か思いついたという表情を見せる。

「アダム、上だ。あのシャンデリアを破壊しろ!」

「……」

「なっ⁉」

 研究者の男は滅茶苦茶なことを言い始めた。だが、アダムは指示に従う。

 アダムの足元から火と煙が噴き出す。


 ゴゴゴゴゴ……。


「と、飛んだー⁉」

 アダムは上空に飛び上がり、左腕でシャンデリアを殴りつける。

「う、嘘でしょ⁉ 冗談じゃない、私の……」

 カルディナは呆気に取られる。


 そして、シャンデリアが落下すると同時に、この空間が崩れる。


「うあああああ!」


 ――カルディナの造り出した空間は消え去り、元々居た研究室に放り出される。

「くっ……、あれ、アダムは……?」

 俺は周りを確認するが、アダムの姿はない。


「上だよ」

 研究者の男は不敵な笑みを浮かべ、上空を指さす。

 天井には穴、カルディナが開けた穴とは別に、さらに上、屋根も突き抜け夜空が見えている。


「愚かな死神に良いことを教えてやる。アダムは、死神のチカラを持つアンドロイドにして、対・死神兵器。そして、先ほど町中の魂を奪うプログラムを始動させた」

「なんだと! そんな事をしたらどうなるか分かっているのか? おい、今すぐ止めろ!」

「アダムのリミットを開放すれば、すぐに町中の人間は抜け殻になる。全部、終わりだ」

 俺は、研究者の男の胸ぐらに掴みかかる。それに対して男は動じない。

 アダムを追いかけるにしても、上空に行かれたら追いつけるわけもない。


 ――ドゴォ!


 慌てながらも、何か方法はないかと考えていると、近くに何かが落下した音がした。

 かなり大きい音だ。まさかと思い、俺とカルディナは大急ぎで外へ出る。

 そこには、横たわりボロボロになったアダムの姿があった。

 もう、動く気配はない。


 研究者の男も遅れて外へやってくる。

「エネルギー切れ……か。先程の戦闘で出力を上げすぎたな。……ここまで、か」

 俺には一つ気になることがあった。

「なぁ、最後に教えてくれ。もう一つのカプセルには何が入っていた、そして何処にやった?」

「……分かった、話そう。最初に造り始めた死神のアンドロイドだ」

 やっぱり、あそこにいたのはアダムだけじゃなかったんだ。


「アダムは、十二人の死神のデータ、魂を糧に造られた。そして、新たな人格が生まれた。それは人工知能、AIと言っていいものではなかった」

「そんな……」

「しかし、制御しなければ私に不都合だった。だから、封じ込めた。都合の良い道具にするためにな」

「じゃあ、最初に作ったやつはどうなった?」

「とある悪魔に依頼されてね。見たこともない素材を提供してくれたり、死神の魂も受け取ったよ。そして、最高の死神のチカラを持つアンドロイドを造れと」

「まさか……メフィストか」

「…………。つい最近、そいつに渡したよ。私の最初で最後の最高傑作『イヴ』を」


 もし、これが本当ならメフィストが新たな戦力を手に入れたことになる。アダムよりも強いアンドロイドを相手にするとは、できれば考えたくもないことだ。

 こんな凄い技術を持っている人間を味方にできれば、どんなに心強いか。


 カルディナも、この話を聞いていたが、その前に少し席を外していた。

「さっき、ハデス社から連絡があったんだけどね」

 そう言うと、カルディナは研究者の男に近づき、鎌で切りつけた。


「……これで、弟のもとへ行けるなら……本望だ」

 男は倒れ、カルディナは魂を回収する。

「お、おい。そんな……、悪いことしてたけど、更生するチャンスぐらい……」

「フブキ、悪いけど。このヒトは罪とかそう言うことじゃなかったの。ずっと前に死ぬ運命にあった、それだけよ」


 ――これで、死神失踪事件は幕を閉じることになった。

次回から、最終回に向けて進展します

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