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フリーター、魂を刈る。  作者: なつかし
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記録 死神アイドル モネ

 アタシは萌音(モネ)。イマドキのピチピチJC! 妹がいるから『アネモネ』ってあだ名をつけられてるわ。花の名前なんだって。

 アタシの中学校では、というより世界中でアイドルが流行ってる。フリフリのスカートを揺らせて歌って踊る……なんて最高なの! 休み時間や放課後は友達とアイドルの真似をしたり、アイドル特集の雑誌を読んだりするのが至高の一時。


 将来はきっと、アイドルになってるんだろうなぁ~……と妄想していたら、いつのまにか大人になってしまっていた。せめて普通のOLに……とはかけ離れ、ハデス社で死神をしているのです……。

 黒いローブを着て、魂を刈るだけの簡単なお仕事? いや、結構地味で大変なんですよ。子供の頃に描いていた将来の夢とは大きく違っている。でも、給料も良いし、化粧もしなくていいから楽なのよね。やりがいがあって高給って言うと、みんなやりたがるのかな。


 確かに給料は良い、でも地味ってことが一番嫌なの! 何よ、この真っ黒なローブ! センス皆無でアイドルどころか、御洒落ポイント何一つ無くない⁉

 ……ちょっと待って、自分でチョーオシャレなローブ作っちゃえばいいんじゃない? 私って天才かも。

 独学で、必死に死神のローブについて勉強した。これがただの布切れじゃないってことぐらいは最初から分かっていた。着れば身体の見た目は変えられるからバレないし、暗闇では他の人間から視認され辛くなる効果もある。

 こんなローブどうやって作ってるんだと、好奇心が、ワクワクが止まらなかった。闇の糸、タルタロスの霧……? これをこうしてこうやって……っと。


 ――意外と作れてしまった。やっぱり私は天才だったか。問題は鎌なんだが、マイナーな企業で、かなりの安値でオーダーメイドしてくれる所があったので、不安は多少あるがそこに頼んだ。

 届いたのは、マイク型の鎌……もはや鎌言っていいのか分からない。これで殴れば普通に魂は刈れると言う。そして、歌えば広範囲の魂を一気に……って危険物過ぎやしないかな。こんな見た目も性能も凝っているのに安値って大丈夫か? 不安にもなるが、それ以上のワクワクを抑えきれない。


 オレンジカラーをベースに可愛らしい大きなリボンの装飾、フリフリで短めの裾。あの頃憧れていたアイドルを彷彿とさせる至高の一品。しかし、問題はこれを着れるかということ。そのローブに適正が無ければ最悪、死に至る。もはや、そんなことはどうでもいい。折角作ったローブを着れなければ生きる意味なんて無いようなものだ。

 私は、布の感触を確かめるように慎重にローブを羽織る。この時を待っていた、焦る気持ちをどうにか抑える。あのJC時代をイメージして……。


 鏡を確認すると、そこには中学時代に思い描いたアイドル……と見間違えるほどの自分がいた。ってこれじゃ本当に中学生じゃん……。死神になるために最初に着たローブは恐怖感に襲われ吐き気も凄かったけど、今回はすでに死神だからか、難無く着れてしまった。流石に自分で作ったローブに拒絶されたら嫌だけどね。


 仕事をする時は、会社には秘密でね。ダメって言われているわけじゃないけど、なんだか面倒そうだし。規定の制服じゃなくて着崩してるヤツに憧れてたアレに近いかも。なんだか、すごい優越感。

 ――通りすがりの人にもめっちゃ見られている気がする。これ着ていると、夜だけど視認性むしろ上がってない? 作り方どこか間違えたのかなぁ……。


 そして、気づいたら地下アイドルデビュー。無名でも、不思議と人は集まった。順調に人気アイドル『モネ』として名前が広まり、大型デパートなどでライブをさせてもらえる機会が増えた。

 ――しかし、幸せは長く続かなかった。テレビや新聞で、私の活動している地域付近で不審死が相次いでいるとのニュースが報道されるようになった。それは、私がアイドルとして活動し始めた時期と重なる。不審死を遂げた人たちは、アイドルのライブに頻繁に足を運んでいるとの情報もある。これは偶然ではないと、すぐに悟った。マイクの魂刈り機能はOFFにしているはずなのに。欠陥品? それともチカラが強すぎるのか、考えていても答えは出ない。


 今日もこれからライブがある。行かなきゃ……でも、もしこれが本当に……。


 ――私はいつものように大型デパートにあるステージでライブをした。変わらず歌って踊って、笑顔を見せた。


 その場で、何人も倒れた。熱中症や酸欠、貧血を疑う人もいたが、間もなく息絶えたらしい。


 ――私は、アイドルを辞めた。

 会社に酷く怒られた。でも、死神としての活動を禁止されただけで済んだ。

 後から分かったことだが、ライブ会場のボルテージが上がると、魂刈りの機能が勝手にONになってしまっていたらしい。つまり、チカラを制御できていなかった、と。不覚にも回収してしまった魂はキチンとハデス社に納品した。魂を刈られる予定の無かった不特定多数の人々の魂を奪ってしまったことは許されることではない。

 私にできること、それは……ローブを作ること。死神のための最高のローブを……。

 ハデス社の地下深くにある階層を借り、黙々とローブを作る。量産型の黒いローブなんかより、ずっとすごいやつを。

 でも、私が着ていたこのローブは封印……かな。これも思い出、そして戒め、大事にしまっておこう。


 ヒョウゴクの溶けない氷、地獄の氷霧を使って白いローブを、エンゴクの尽きない炎、地獄の業火の灰を使って紅いローブを……。

 気づけば私は肉体を失っていた。無理やり魂をオレンジ色のローブに結び付けて、現世に留まるのだった。ローブを作るのにはそれ相応の労力が必要……。


 ――それでもローブを作り続ける。死神にも笑顔は必要だから。

アネモネ……今回は花言葉の『無邪気』や『可能性』といった要素をいれました。アネモネの話はまだ続くのでまだある花言葉の意味も入れていきます

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