第2話 はじめての魂刈り
死神とは何か。
昨日、俺は死神になった。仕事は夜ということで、昼のバイトを減らし仮眠を取ることに決めた。
自宅は小さいワンルームのアパートだが、風呂とトイレもあるし、これといった不便はない。
普段は10歳の妹『コユキ』と寝ている布団だが、今は学校に行っているのをいいことに、大の字で寝転がる。
しかし、目を瞑ってもローブを着た時の恐怖と寒気を思い出し、満足できる休養とはいかない。
――台所の音で目が覚める。気づくと周りは暗くなっていた。
「あ、お兄ちゃん起きた?ごはん出来てるよ~」
コユキはすでに学校から帰宅し、料理していたみたいだ。コユキ特製もやし炒めと安売りのカップ麺。
小さなテーブルで二人で食べる。
「おいしい?」
「うん、おいしい」
正直、もやし炒めは味がすごく薄いが、カップ麺と一緒に食べると丁度いい。
まぁ、妹が作る料理は俺にとってはどんな高級な料理よりも美味く感じる。高級料理知らないけど…。
――22時を過ぎ、コユキはぐっすり寝ている。すると、マナーモードのスマホに着信が来た。
「こんばんは、調子はどうデスか?」
特徴的な高い声、メフィストだ。
「あぁ、悪くないよ。仕事の依頼が来るのを待ってたんだ」
「では、さっそく今回のターゲットについてお話します」
今回のターゲットは2キロ圏内に住んでいる100歳のお婆さん。どうやら寿命で今夜が精一杯だという。
ターゲットで一番多いのは今回の条件でもある寿命。
死神の上司や管理職が、死ぬべき人間を見定めリスト化している。場所や難易度によって依頼する死神を選んでいるらしい。
「今回の依頼が一番簡単な部類デスから、これができなければ話になりませんのでお願いしますよ」
しくじったら間違いなくクビだろう。まずは支度だ。
部屋の隅でただの短い棒に見える鎌と、白いローブを取り出す。
手が震えたが、何も考えずに一気にローブを羽織り、フードを被った。目を瞑った瞬間、恐怖と寒気に支配されそうになる。
――身体の異変を感じた。昨日と同じ。小さな鏡で恐る恐る確認する。
やはり、そこにいたのは銀髪の幼い女の子。
「やっぱり、夢じゃなかった…。これが俺なのか……?」
その姿は自分で言うのもアレだが、可愛い。でも、どうせならナイスバディに…。
そんな邪念を抱いている暇はない。短い棒状態の鎌とスマホを持って自宅を出る。
まだこの身体に慣れず、何もないところでもコケそうになる。
夜に白いローブ、すごく目立ちそうだ。しかし、何度も通行人とぶつかりそうになってしまう。
背が低いから気づかないのかと思ったが、どうやら死神のローブには通常の人間が視認し辛くなるチカラが込められているらしい。
しばらく歩くと目的地の民家に着いた。慣れない身体のせいで歩いただけで疲労がヤバい。
ここで、スマホを取り出しマニュアルを確認する。分かりやすくイラストが添えてある。
----------------------------------
ターゲットが屋内にいる場合、壁をすり抜けて侵入しましょう。
※ただし、すり抜けている途中でローブを脱がないこと。最悪、身体が分断されます。
----------------------------------
さりげなくヤバいこと書いてないか…。注意事項は絶対に守ろう。
マニュアルのイラストをマネて、玄関の扉に手をかざすと、空間が黒く歪んだ。
そこをくぐると、あっさり民家に侵入することができた。
――ターゲットの寝室に到着。今から魂を回収しなくてはならない。
お婆さんはぐっすりと眠っている。このお婆さんを俺が…。
魂を刈ることと、殺すことは違うと自分に言い聞かせるが、いざ目の前にすると気が引けてしまう。
震える手で、棒状態の鎌を伸ばし、スイッチを入れ青白い刃のようなオーラを具現化させる。
――死神。それは増えすぎた生命から魂を刈り、次の生命に繋げる者。
死神がいなければ、魂の供給が追い付かなくなり、魂がないまま生命が生まれる最悪の状態を招く。
俺は決心した。鎌をお婆さんに向かって縦に振るうと、温かい光が現れた。お婆さんの魂だ。
魂は身体と糸のようなものでつながっている。
「俺は死神『ユミル=ブリザード』。その魂、刈らせていただきます」
鎌を横に振るうとお婆さんの身体から魂が切り離された。鎌を振るうその手にもう迷いはない。
お金のために死神になった主人公の心情の変化がどうなるか。




