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フリーター、魂を刈る。  作者: なつかし
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第11話 コユキの魂

 次の依頼のターゲット、それは俺の妹『コユキ』。

 目を疑って何度もスマホの画面を確認した。

 そこには間違いなく『鎌倉 小雪』の文字。

 今回の件に関しては、「はい、分かりました」と二つ返事をするわけにはいかない。

 そもそも、なぜコユキがターゲットになってしまったのか。それが分からない。

 何かの間違いの可能性もある。同姓同名の別人かもしれない、そう思った俺は日が暮れないうちにメフィストの元へ向かった。


「メフィスト、メールの件で聞きたいことがある」

 俺は感情が昂りそうになるのを抑えながら尋ねる。

「ああ、次のターゲット『鎌倉 小雪』さんの件デスか? どうかされたんデスか」

 メフィストは俺がここに来た理由にピンときていないような反応を見せる。


「ターゲットが『鎌倉 小雪』で間違い無いのか? ほかの誰かと間違っているんじゃないのか」

「……いえ、確認しましたが『鎌倉 小雪』さんで間違いないデスね」

「俺の妹も同じ名前なんだが、同姓同名の人か?」

「ご住所もフブキさんと同じデスので、妹さんで間違いないデス」


 ――どうやらターゲットの『鎌倉 小雪』とは俺の妹のことで間違いないようだ。


「……俺の妹だと分かって俺に依頼したのか?」

「断るのというのであれば他の方に依頼するだけデスが……」


 他の死神に頼む……? それは絶対にダメだ。かと言って俺がその依頼を受けるわけにはいかない。


 ――じゃあ、どうする?

 俺は無意識に、鎌の青白い刃をメフィストの首元に突き付けていた。


「何のマネデスか……?」

 メフィストは両手を上げ、苦笑いをしながら固まる。


 ――もう後には引けない。

「……この依頼を取り消せ」

「できない、と言ったら……?」

「お前の魂を刈る。それだけだ」


 メフィストは少し黙り込んだ後、口を開く。

「分かりました、少し冷静になりましょう」

 その言葉を聞いた俺は、突き付けていた鎌を下した。


「今朝届いたばかりの美味しい紅茶があります。特別にお淹れしましょう」

 メフィストは嬉しそうに紅茶を淹れ始める。その間、俺は黒い大きなソファーに座って待つ。

 依頼の件で頭がいっぱいだったので、どれだけ時間が経ったかは分からないが、紅茶の香りが漂ってきた。

 どうぞ召し上がれ、と熱い紅茶が入ったティーカップを差し出される。

 強い香り。普段紅茶を飲まない俺にとっては良い香りとは言えず、むしろ苦手だ。

 メフィストは、俺の反応が気になるのか向かい側のソファーに座り、ずっとこちらを見ている。

 せっかく出されたので、とりあえず一口。思わず眉間にしわが寄る。


「おや、お口に合いませんでしたか」

「いや、普段紅茶は飲まないから……。好きな人にはたまらないんだろうな」

「あまり無理なさらず」

「せっかく淹れてくれたんだから、全部頂くよ」


「それは助かります」

 ……助かる? 残したものを処理しなくていいってことなのだろうか。その言葉に少し引っかかったが、紅茶をグイっと飲み干した。

 紅茶の香りが口の中いっぱい、そして鼻に抜ける。……正直、吐きかけた。


「では、話を戻しましょうか。今回の依頼、受けてくれるんデスよね」

「は? 俺は取り消すように言ったはずだぞ」

 紅茶一杯で気が変わると思うな、むしろ嫌いだと言いかけたがガマンした。

「散々他の方の魂を刈って来たのに、妹の魂は刈れないと? それは都合がよすぎるのではないデスか」


 俺はその言葉にガマンならず、ソファーから立ち上がり再び鎌を取り出し、メフィストの首元に刃を突き付ける。

 しかし、なぜかメフィストは余裕の表情を見せる。


「アナタにワタシは殺せない」


「――は? どういうことだ」

 「時期に分かりますよ。まぁ、分かる頃にはアナタには分からなくなっているはずデスが。今回の件も、本日中に任務が遂行されなければ無かったことにしますので、ご安心を」


 メフィストの言うことの意味は分からなかったが、考える余裕がない。さっきから立ち眩み、目まいがする。

「どうかされたんデスか? 顔色が良くないようデスが」

「少し気分が悪い……今日はもう帰らせてもらう」


 頭に血が上ったせいだろうか、冷静になるためにも一旦家に帰ることにした。

 何事もなければ今回の件は無くなる。俺がコユキに手を出さなければいい、簡単なことだ。


 コユキと一緒の夕飯。普通に振る舞っているつもりだったが、様子がおかしいことを悟られてしまった。

 そして、なぜかコユキの行動一つ一つが煩わしく感じてしまった。こんなこと今までなかったのに……。


 ――夜も更け、いつものようにコユキと一緒に布団に入る。俺は眠るつもりはないが、目を閉じ寝たふりをする。30分ほど経った頃、コユキに眠ったことを確認するために小さく声を掛ける。


「……コユキちゃん? 起きてる?」

「……」


 ……返事がない。どうやら眠ったようだ。

 俺はバレないようにゆっくりと布団から出る。しまっていた白いローブを羽織り、棒状態の鎌を手に取る。


 布団で寝ているコユキの側に立ち、俺は愛鎌スノードロップにスイッチを入れると、青白い刃が姿を現す。


「ごめん、コユキ」

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