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2話 お出かけ準備

主人公とゲビールのノリがかなり軽くなってます。1話の事が嘘の様に……。

俺は執務室の窓から空を眺めながら呟いた。

 

「暇だなぁ……。」


魔王になりもうすぐ2カ月だ、魔王という役職にも慣れてしまいのんびりと過ごす毎日を送っている。


★☆2カ月前☆★


魔王城へと初めて足を踏み入れる。


正確には父が生きていた頃魔王城で過ごしていたのだがそんな小さい頃の記憶などない。


「坊ちゃま、もう少し進むと医務室がありますのでそちらで回復魔法をかけて貰ってください…その後ゆっくりとお話ししましょう。」



「―――それはつまり、俺が魔王でゲビールは副官になるって事ですか?」


「理解がはやいですな、坊ちゃま。」


俺は混乱していた、俺がゲビールに勝ったことで魔王の王位継承権的なものが俺へと移ったのだ、しかし俺は半魔半人いわゆる『亜人』である。


「しかし、俺は……純血ではありませんよ?

 そんな俺の魔王就任を貴族達は許さないでしょう?」

俺は苦笑いで尋ねた。


「それは一部の貴族だけですな…実際坊ちゃまが屋敷に籠もっている間も何度か国民で坊ちゃまの待遇改善のデモがおきておりましたし…」


それは初耳である、俺はまわりの全員に嫌われているものとばかり思っていた。


「今回のゲビールを倒したこともあり、坊ちゃまに表立って逆らう者もいなくなるでしょうな。」


「そうですか……魔王の仕事がどんなのかも気になりますね……。」

仕事……これが大変だったら魔王なんて知らん!俺はこの国から逃亡するぞ?


そして…今…。


「あー、暇。」

まるで息をするかのように暇という言葉が口から漏れる。


「なら手伝ってくれてもいいんだぜ?だいたいな、これはお前の仕事なんだぞ、本来はな!ほんとうちの国の制度を見直すべきだぜ、全く。」

そう愚痴を漏らすのはもちろんゲビールである。

 見た目はチンピラ感漂うゲビールなのだが実は頭もキレるという中々の男だ。


そんなゲビールが愚痴を漏らす理由、それはこの国の制度が原因である。

 魔王国グルートでは強さが最も重要である、様々なことが腕っぷしの強さで決まるのだ、そんな国の最高戦力である『魔王』だ、仕事なんてするはずないじゃないだろ?

 最高戦力である魔王様に、疲労や苦痛を感じさせないようにと仕事は殆ど回ってこないのだ、その結果魔王の補佐である副官へと仕事は全て流れる。


というのは建前で先代魔王が仕事をしたくないばかりに作った制度らしい。


「いや、すまんねゲビール君…手伝ってやりたいのは山々だが国の制度だからね!いやぁ、実に残念だよ!まぁ、僕の分まで頑張ってくれたまえ!ハッハッハッハッハッ(棒)」

もちろん大嘘だ、仕事なんてしたくないし残念どころか『ゲビールざまぁ』という嫌味で心がいっぱいである。


「お前がもしも俺の上司じゃなかったら確実にぶち殺していた自信があるよ…ホントに。」


「うん、ごめん……することないし部屋に戻るわ、すまんが後の仕事は頼むな。」

暇潰しにからかっただけなので素直に謝り、執務室を後にする。


魔王になって2カ月、ゲビールがずっとそばにいることもあってか、かなり仲良くなった気と思う。


俺の私室、城の最上階にあり景色はいいのだが階段を上るのが面倒くさい、俺は長い階段を上りやっと私室へたどり着く……つかれた。


私室にはたくさんの本を置揃えており、その本を読みながらベッドでゴロゴロするのが俺の日課だ。

 今日もお気に入りの本を手に取る。

『三大英雄の解説書』

 この本は人族の国が発行したもので、先代魔王を葬った3人の英雄の解説が長々とかいているだけの本である。


少し前まで、人族の国に逃亡するつもりだったので三大英雄には憧れがあり3人の基本的なことは頭に入っている。


父である先代魔王サターンを殺した張本人達らしいが、3歳までしか一緒に過ごしていないし、聞いた話によるとサターンは人族の姫である母に俺を無理矢理産ませたクズらしいので全く気にしていない。


結局、『三大英雄』俺は彼らに憧れている。

 彼らは全員異世界からやってきたという

・勇者コウキ

伝説の聖剣:エクセレートを扱い圧倒的な剣さばきとスピードで敵を翻弄するアタッカー。

・賢者サトル

無詠唱&発動体なしで5属性の攻撃魔法を自在に操る天才、三大英雄の頭脳。

・聖女アンナ

無詠唱&発動体なしで回復魔法と強化魔法(バフ)弱体化魔法(デバフ)を操る聖女、三大英雄を支える回復師(ヒーラー)


この3人組が三大英雄である。

 コウキにしか扱う事のできない聖剣エクセレートもとてつもなく憧れるが、サトルとアンナの無詠唱&発動体なしで放つ魔法には興味津々だ。


本来、魔法には詠唱と発動体が必要となる。

 詠唱とは魔法を発動させるために唱える呪文のことで使う魔法の威力が上がるほど長い時間が必要になる。

 発動体とは杖などの魔法発動体と呼ばれる魔法を発動させるための媒体が必要なのだ、魔族の場合は短杖というペンサイズの杖を使うのが一般的だ。


それを無詠唱かつ発動体なしでおこなうというのは凄まじいものだと思う、戦闘の時などは武器も持たずに魔法が何の予徴も無くとんでくるのだから。


……三大英雄、彼らにあう事はできないだろうか、是非教えを請いたいものだ。

 たしか彼らは今30歳あたりのはずだ、全員エクステリア王国という場所で身を固めていたはず。



……待てよ?どうせ魔王なんてお飾りの職業で、戦争以外はグルートにいる必要ないんじゃないか?


実際、戦争や反乱でも無い限り魔王はすることが無いのだ、自分で言うのもなんだが俺が魔王になった当初は亜人(デミヒューマン)の魔王は認めないなどの文句がでていたが、俺が新たに制作・提案した様々な制度の評判はかなりよく現在はそんな声もかなり減った。


ここから大きな問題でも無い限り俺の評判は落ちることもなく、特にしなければいけない仕事も回ってこないだろう。

 

「よし…。」

人族の国へ行こう。

 そうと決まればとりあえずゲビールに相談だよなぁ…絶対反対するよ、あいつ(確信)。


★☆★☆★


「別にいいぞ?」


「だよなぁ……えっ?いいの!?」

俺は思っていた反応と違ったために驚いた。


「お前は知らないんだっけ?先代も出かけたりしてたんだよ、ほらあの人悪魔族(デーモン)だったからさ、翼で飛んで出かけてたらしいぞ?」


マジかよ!初耳だ!?


「うん、なんならデーモンだったのも初めて知ったし翼生えてるのも初耳だわ!え、というか、ホントにいいの?人族の国だぜ?」


「こっちはいつお前が出かけたがるかと六魔将なんかの国の偉いさんの間で賭がはじまってたくらいだ……色々条件はあるが人族の国でもどこへでも行っていいぞ。」


賭まで始まっていたとは、上司である魔王様の行動で賭するとか…俺の国大丈夫だろうか。

 まぁ出かけても良いって言うなら出かけよう!


「それで?条件って言うのは?」

俺がそう尋ねるとゲビールは何やら執務室にあるゲビールの机をゴソゴソとあさり始めた。


するとすぐに何やら袋を見つけてこちらにほうり投げる、俺はそれをキャッチし袋の中に手を突っ込む。


出てきたのは、

〈凄くダサいイヤリング〉〈めっちゃ格好いい指輪〉〈中二病感満載のネックレス〉〈白い石〉の4つだった。


「それを全部持って行くこと!もちろん袋もな!石以外は全部装備していくこと、これが条件だな。」


ぜ、全部だと!?


「このイヤリングもつけなきゃいけないのか…?」


「もちろん。」

ゲビールは力強く頷く。


「どうしても?」


「どうしてもだ。」


俺は渋々イヤリングを含めた装飾品をつける。


「それらについて、説明しよう。」


…ゲビールの説明はやたら長かった。

 纏めるとこういうことになる。

〈通信イヤリング〉

やたらダサいイヤリング、魔力をこめると対となるイヤリングを装備しているものと通信することができる、対のイヤリングはゲビールが装備。※対のイヤリングもとてもダサかった。

〈魔力虚偽の指輪〉

ブラックオパールという黒い宝石のついた格好いい指輪、体に宿す魔力量を偽ることができる。

〈身代わりの首飾り〉

黒い十字架に銀の蛇が巻き付いた首飾り、受けた致命傷を無かったことにしてくれる、クールタイムは48時間。

〈転移結晶〉

魔力をこめるとあらかじめ指定しておいた場所へ一瞬で戻ってくることができる石、設定場所は魔王城の執務室。

〈魔法の袋〉

見た目は小さい袋だが無限に物が入る、袋の中の時間は停止しており中身の劣化を防ぐ。


「何気に全部凄いものだよなぁ。」

俺は感嘆の声をもらす。


「何気というか、全部魔道具だしな……合計金額はだいたい光金貨16枚くらいだぞ?光金貨16枚あれば30年は働かなくてもいいんだから。」


めちゃくちゃ高額の装備じゃねぇか。


…大事に使おう。

 俺は心からそう思った。

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