第1話 亜人だけど魔王就任
拙い文章ですが最後までお読みいただけると嬉しいです、よろしくお願いします。
1話はシリアス?かな、次回からフランク?な感じです!
俺、エティエンヌが魔王就任したのはつい先週のことである、魔王は魔族の中から最も強い者が選ばれることになっていた。
そう、魔族の中で最も強い存在、それが魔王なのだが……どうして亜人である俺が魔族の王『魔王』になっているのだろうか…。
その事は時を2週間前まで遡る。
★☆★☆★
『魔王国グルート』では先代魔王が亡くなってから魔王がなかなか決まらず、12年という年月がたっていた、12年という月日で何度も魔王選定戦が行われ、ついに新たな魔王が決まったらしい。
外の情報を中々知らない俺だったが、新魔王就任のニュースはさすがに耳に届いていた。
魔族と人間のハーフである亜人の俺はグルートの王都に住みながら、滅多に外に出ることはしなかった、その理由は……。
本来亜人である俺はグルートで暮らすことは出来ないからだ、魔族は純血意識が高く他の種族が交わることを許さないからだ、そんな俺がどうして『魔王国グルート』の王都で暮らしているのか。
それは俺が先代魔王サターンの息子だからである。
サターンはとある国の人族の姫に俺を生ませたらしい、俺が3歳の時にサターンは亡くなったので全く覚えていないのだが…。
純血意識が強い魔族にとって亜人である俺の事は口にしてはいけない暗黙の了解、よって俺は見た目はほぼ完全な人間であるというのに対外的には『魔族』ということになっていた。
俺はそんな中、自由に出歩けずまわりから嫌悪感を抱かれるという生活に嫌気がさしグルートから人族の国へ逃亡する計画を立てていた、のだが……。
バァン!
唐突に俺の家の扉が蹴破られる。
「うおっ!?何だ!?」
蹴破られた扉が俺めがけてとんでくる、木製の扉とはいえ、かなりの勢いで飛んできている当たれば怪我を負うだろう。
俺はとっさに左手で扉を殴りつけて粉砕した。
「何だ、なぁ……?俺はゲビール、次期魔王だ。」
ゲビールと名乗った男は頭に一本の角が生え黒い眼球の中に青い眼を持つおそらくは【鬼人】と呼ばれる魔族だった、傍には数人の取り巻きがおり、チンピラ感が醸し出されている。
「お噂は耳に挟んでおります、それで……次期魔王様がどういったご用件で我が家を訪れているのでしょうか?」
俺は流家の扉が破壊されるなど様々なこともあり頭にきていたのだが、流石に次期魔王の手前なので丁寧な言葉遣い、なおかつ努めて笑顔で尋ねる。
「いや、なに魔族の国に…俺の国には不純物であるお前のような不純物はいらんと思ってな、始末しに来た。」
ゲビールはその言葉を言い終わる前に攻撃を仕掛けてきた、次期魔王というだけあってかなりの速度で繰り出された蹴りは防ぐのでやっとだった。
「ほぉ?今のを受け止めるとはな…。」
少し面白そうに呟くゲビールとは反対に俺は内心焦っていた。
今の威力は明らかに本気で殺そうとしたものだった、骨にヒビいったような痛みが走る、俺はずっと引きこもっていたこともあり、これが初戦闘なのだ。
それに比べて相手は魔王に選定されるだけの戦闘経験をつんだいわば戦闘のプロだ、経験に差がありすぎる。
俺に戦闘経験は無いが庭で戦闘訓練をしたり、父の傍仕えたった執事のセルディに稽古をつけてもらい戦闘力を褒められるなどかなりの力の持ち主のはず……だ。
「今のに免じて見逃すという選択肢は…?」
俺は苦笑いでゲビールに尋ねる。
「ない。」
そういって攻撃を再開するゲビール。
ゲビールと俺の戦いはハイレベルであるためか、ゲビールの取り巻きたちは呆然としながら見学にまわっている。
くっ、ハイスピードで繰り出される攻撃を捌いてばかりで反撃に移ることが出来ない!!
かなりの速度で繰り出されるゲビールの攻撃を捌くことしかできず受け止めるたびに小さなダメージが通っていく。
このまま受けに回ってはダメージを負うばかりで不利……それならっ!
俺は相打ち覚悟で全パワーを右手に込めてゲビールを殴りつける、同時にゲビールの蹴りが俺の腹へと入る。
「「グハァッ!」」
真横へ吹っ飛ぶ俺、ゲビールの顔を下に向けて殴りつけたため、ゲビールは地面にめり込む。
吹き飛ばされた方向は特に障害物もなく少し先に家の壁があるのみだ、俺は体勢を整え威力を殺しながら壁に衝突した。
俺もゲビールもかなりのダメージを受けたはずだ、俺はゲビールが起き上がってまた戦闘になる可能性を考えて、立ち上がる。
しかし、ゲビールは立ち上がってくる様子がない。
不安定な足取りで俺は地面にめり込んだゲビールへと近づいた……そこには俺の全力を受けて大きく凹んだ床と、気絶し白目を剥いたゲビールの姿があった。
「勝った…のか。」
ほぼ相打ちと言ってもいいレベルだろう俺は立つことがやっとだ、もし今ゲビールが負けたことであたふたしている取り巻き達が襲ってきたら勝てる気がしない。
「なるほど……ゲビールが負けましたか。」
ゲビールの取り巻き達の後ろから、コツコツと足音をたてながら初老の男性が現れる。
その男性は白い頭と髭に似合わず背筋は伸びており、左足は偽足だった。
俺はこの男を知っている…父の、先代魔王の副官であるバルセンルック、先代魔王であるサターンが死んでからは彼が魔王国グルートの政治をなんとか動かしていた。
「バルセンルックさん…でしたよね?たしか先代魔王の…父の副官であられた。」
「おやおや、エティエンヌ坊ちゃまに覚えていただいているとは…嬉しい限りですな!それで坊ちゃま、魔王就任式は7日後ですのでついてきていただけますかな?」
……ん?
何故俺がついていくんだ?えっ?あ、あぁ、倒れたゲビールを運んでくれってことか!気絶してるもんな!
「あ、ゲビールですか?彼を運ぶんですね?
彼は次期魔王ですからね…はやく治療しなくては。」
自分でやっておいて言えたことか……?と内心ツッコミながら言う。
正直な話、今の状態で遠くまでゲビールを運んでいく自身はないのだが……できるだけ近くでありますように!
「何を言っておられるのですか?ゲビールも連れて行くつもりですが……魔王になるのはエティエンヌ坊ちゃま、あなたですよ?」
「ふぇっ?ぇえええええええええええ!?」
「当然でしょう、魔王はこの国最強の魔族がなるものなのですからね!さぁ、行きますよ坊ちゃま!あ、そこのチンピラ!ゲビールを運びながらついてきなさい。」
俺はバルセンルックに襟元を引っ張られ、ゲビールはチンピラ…仲間?達に抱えられて魔王城へとひきずりこまれるのだった。
★☆★☆★
そこからはあれよあれよという間に魔王就任式や魔王城への引っ越し、それから魔王の部下となる六魔将、魔王国貴族達への挨拶などを済ませた…と。
「なんか魔王になるまでの展開が急過ぎて…うん、実感が全くわかないんだよな!どうしよう!?」
俺は自分の悩み?とも言えない悩みを副官へと叫ぶ。
「…知らねぇよ、俺だってまさか副官になるとは思ってなかったんだからよ…。
というか元々そこは俺が座る予定だったんだ!」
副官ゲビールと魔王エティエンヌ、2人は魔王の私室でそんな話をしてケンカとも呼べぬレベルの小競り合いをしているのだった。
※本作の主人公、エティエンヌは15歳です。
容姿は完全に人間、強いて特徴をあげるならば黄緑と薄紫のオッドあいで白髪というところです、が、この世界で白髪は結構いますしオッドアイもそこまで珍しくありません。
ついでに…ゲビールは18、バルセンルックは63歳です。
ここまでお読みいただきありがとうございます、誤字脱字、不適切な単語の使用などありましたら報告いただけると幸いです。
ブックマーク、ポイント評価していただけますと励みになります、是非よろしくお願いします。