〜the 2nd day〜
今日は学校が早く終わったし、明日の朝までって考えてざっと18時間。飯落ちとか入れても17時間これなら夢魔狩りも捗りそうだ。
それにしても自分が即集合なんて言っておいて遅れるなんて何をしてるんだよフウカのやつは。装備だって昨日整えたしする事ないんだけど……。
「セーナくーん!!遅くなってごめんね!?ちょっと色々あってねー」
「まぁ良いけど、今日は初クエストを受けるんだよ?装備整ってる?」
「うん!昨日のうちに終わってるよ!さぁ早く行こっか!!」
僕達はギルドへと歩を進める。本当に緊張感の無い人だ。学校でのイメージとかけ離れすぎやしないか?
「もっと緊張感持たないと……。夢魔に負けたらそこでもうここには来れなくなる事を忘れたのか?」
「え?そうなの?じゃあcrownも貰えなくなるの?それは困るんだけど」
「じゃあ死なないように気をつけることだね。ほら。受付を済ませてくるよ。」
クエストカードを受け取り指定された場所まで移動する。馬車で。
「馬車なんてあるんだねぇー。相乗りだけど……」
「ほんとだねー(棒)相乗りだけど。」
僕は棒読みで返す。さっきから右から変な視線を感じる。フウカは左側に座っている。じゃあ右の視線は……一体?考察するよりも右にいるそれが喋る方が早かった。
「ねぇねぇ、あなた達も夢魔を倒しに?」
黒髪ロングで黒い装備で真っ白な肌をした綺麗な女の人だった。
「え、えぇそうです。見たところあなたもですか?戦闘力高そうですけど」
「そうね。これが三体目。トーナメント戦に出るにはあと何体狩ればいいのか…」
「ねぇセナ君。この人にも夢魔狩り手伝ってもらわない?」
フウカは突拍子もないことを言うもんだ。でも経験者がいるならかなり心強いんじゃないか?
「そうだね。あの、お手伝いお願いできますか?」
「でも、私手伝うなんて器用なことできないわ。見せることしか……それだってあまり気持ちのいいものじゃないわよ……」
「それってどういう……?」
「良いです!お手本でもそうでなくても!」
「分かったわ。でも覚悟はしておいた方がいいわよ。」
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夢魔狩りの手本を見せてもらうことになったあと僕達は自己紹介をしてあの人の名前を聞いた。
「ここ……ですか?」
僕は思わず尋ねてしまった。ここであることは確かなのに。あまりにも急に予想していないものがあったから。
草原の中の一つの扉。扉は小さい子がクレヨンで描いたようなよく見るとなんだか精神的に不安になるような絵が描かれていた。
「そうよ。怖くなった?中はもっとおぞましい。それでも行く?」
「もちろんです!私は叶えないといけない願いがあるんですから!ねっ!セナ君!」
「そりゃね。」
「じゃあ開けるわよ。もし私がやられたら二人だけでも逃げなさい。まあ、そんなことはないと思うけどね。」
そんな露骨な死亡フラグを立ててジーナさんはドアを開ける。中はとても広かった。広かったというより大きかった。真ん中に5mぐらいの丸い台があってその他には何も無い。サーカスのテントみたいな形で壁や床はさっきの扉のようにクレヨンでぐしゃぐしゃに塗られていて。やっぱりどことなく不安になる。
「よそ見していると終わっちゃうよっ!キャハハッ」
ジーナさんの口調が変わって、戦闘モードに入った?多重人格…みたいな?
空から片翼の天使のような夢魔が降りてきた。でも光の輪は黒く輝いている。
夢魔はニヤリと笑うと空をクルクルと自由に飛び始めた。
ジーナさんと言えば。 壁を走り抜け空を飛ぶと腰にセットしていた短剣を両手で取り出し夢魔の羽を切り落とし、体に一太刀あびさせた。天使はそのまま下へ落ちてゆく
「やった!?」
フウカは声を上げる。
いやまだだ。下に落ちた夢魔は羽を再生させて今度はその場で手を振りあげる。
ジーナさんの足元から無数のロープが出てきて足を拘束する。
「あぁ!?クッソ!!体力の温存はやめだ!!見てろよ!」
ジーナさんは僕達にそう叫んで懐から小瓶を出した。小瓶の中には砂のようなものが入っている。それを投げ短剣を瓶に向けて投げて瓶を空中で割る。当然砂は散らばる。
「セグンナーチェ!!ショットガンに変化っ!!」
空中に散らばった砂は輝きショットガンに変化し夢魔の方へ向き空中でとどまった。その数およそ300以上。それからジーナさんは手を挙げ
「テンッ!!」
300ものショットガンが一斉に放たれた。夢魔は光と炎に包まれていく。やがて炎が消え夢魔がいた場所には一つの石が落ちている。きっとこれが経験値になって、トーナメントへのポイントになるんだろう。
「ジーナさん!!大丈夫ですか?」
フウカが駆け寄る。僕はそれについて行く。
「大丈夫よ。ただちょっと体力が……。」
「回復薬ありますよ!」
フウカがカバンから取り出そうとする。
「ううんごめんなさい。回復薬じゃ回復しないのよ。これは能力の代償みたいなものだから。」
「じゃあ僕達が帰還の巻物で街までを送ります。」
「ごめんね。ありがとう。」
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「それにしても夢魔って怖いんですね。」
「私も天使のタイプの夢魔は初めて見たわ。」
「一度あった夢魔は記録されるみたいです。それで見てみたんですけどあの天使のタイプの夢魔は……元は人間でもう亡くなってるみたいです。」
僕はさっき見てしまった夢魔の図鑑をそれで知ってしまったのだ。
「元々は子供で、空を飛ぶのが夢だったそうです。だけど病気でなくなった。子供の名前はわからないけど夢魔の名前はアルド。空の夢魔だそうです。」
「元は人間!?そんな……なんで?なんで私たちは人間を……そして藤野は夢魔を……」
「夢魔は本気で僕達を殺しに来てた。僕達は死なないけどだからその分余計に夢魔は僕達を殺したがってる。ジーナさんは知ってましたか?」
「あまり気持ちのいいものではないって言ったわよ…。」
やっぱりジーナさんは知ってた。もう死んでる人をもう一度殺すのはそこまで抵抗がある訳じゃない。見た目が人間によってるわけじゃないし。だけどやっぱり怖い気はする。
「ねぇ、セナ君、私たちこんなのじゃ全然戦えないよ。ジーナさん見本ありがとうございました。能力の生かし方とか本当に色々。」
「どういたしまして。あなた達もいい能力を持ってるわ。どうかそれを生かして。またどこかで会いましょう。」
「ジーナさんありがとうございました。」
僕達はジーナさんと別れた。
ステータスを見直すいくら見たって0は0。
「僕装備買ってくる。能力を生かすなら金がなくなるまで剣を買わないと。」
僕達は学んだ。知識を。戦い方を。絶対に負けない。妹を、夏鈴を生き返らせるために。
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「結局クエストをクリア出来て無いわけだし。そろそろクリアしに行かないと何だけど行けるか?」
「うん。いいよ。行こう。夢魔狩り。」
決意新たにもう一度出発した僕達。馬車での移動は先程よりも空気が重かった。